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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
62/114

エリーの拷問2 (挿絵付き)

ヌルーン王国の王都のど真ん中の

切り立った崖の上に王城があった


夜中にも関わらず、新しいプラウダール体制の

秩序を構築せんと、官僚たちは遅くまで

働いていた


グランヘルム王の執務室に、

大勢の官僚たちが入ってきた


白銀色の甲冑に身を包んだ使徒ダニエルも続く。

金属の重々しい足音が執務室内に響いていた


メシア教の最高司祭が言った



「王よ、遅くに失礼いたします、

 勇者マックスですが

 使徒サリカが異変を感知しました。

 とりあえず映像をご覧下さい」



使徒ダニエルが投影魔法を発動させる



「現在、ダルクエン近郊の地と王都とでは

 一時間ちょっとの時差がございますが

 まあ、今、現在のリアルタイム映像です

 

 念の為に、使徒ゴトウと使徒ヴィンセントを

 使徒サリカの元に招集しております」



映像に映る勇者マックスは、洞窟の入口近くの

平たい石に座り、小さな麻袋を手に取って

中から何かをついばんで食べていた


グランヘルム3世は困惑して言った



「ふむ、夜飯を食っているようにしか見えんが」



しかし、最高司祭が言った



「いえ、ご覧になってください」



僧侶エリーがつかつかとマックスの元に

歩み寄ってきた


平たい石に座って黙々と麻袋から

何かを取って食べ続けるマックス


僧侶エリーのダークブラウンのロングヘアの

後ろ姿が見える


メシア教のシンボルである

星のマークをつけた金属製の杖を

頭上に高々と掲げて、

何やら祈りをつぶやいているみたいだ


マックスはエリーのことなぞ

気にする様子もなく、

ひたすら口をもごもごとさせている


伸び放題の金色の髪と髭が顔を覆い尽くし、

灰色の粗末なローブを纏ったマックスは

まさに隠者そのものだった



エリーは、マックスに向かって一礼した



次の瞬間、王と官僚たちは信じられない

光景を目にした



エリーが持っていた金属の杖で、マックスを

ぶったたいたのだ


石に座ったままの姿勢で、

後ろ向きに倒れるマックス


両手で顔を覆って防御姿勢を取るマックスを

容赦のない杖の打撃が襲う



「なんということを!

 あの僧侶は何をしておるのだ?

 なぜ、かつての仲間である勇者に対して

 このような無慈悲な暴力を振るうのだ」



グランヘルム3世は狼狽していた

メシア教の最高司祭がおずおずと答える



「さきほども、僧侶エリーは、

 勇者マックスの世話をしようとした

 善良な村人に対して、理不尽に暴力を

 振るっておりました。


 それに、昼に彼女がマックスの元を

 訪れたとき、聖騎士リックと

 ハイエルフのディックソンが

 共におりましたが今は一人のようです

  

 あの、謎のハイエルフのディックソンが

 使徒サリカに気がついたので、今のこの

 状況も監視されているとわかっているはず」



使徒ダニエルが投影する映像を、

皆が息を飲んで見つめていた



//////////////////////////////////////////////



赤茶けた砂の上にマックスは転がって

両手で顔を覆っていた


地面に落ちた麻袋から、小さな黒い

甘草飴が転がり落ちる


その飴をエリーのブーツが踏み潰した


倒れたマックスの上に馬乗りのような格好に

なって、エリーは杖を投げ捨て、

難なく、マックスの両手を顔から引き剥がした


そして、髭で覆われた頬を強烈なビンタが

直撃する


まるで霧雨のように、血と唾液が混じった

液体が空中に飛ぶ


マックスはすすり泣いていた



エリーは無慈悲に言った



「マックス、これはあなたの為なのです。

 あなたが感じている以上の痛みを

 私は心の中に感じています。

 あの時、世界樹の森でやったときの

 ように、私はあなたのためになら

 その命を捨てても構わないのです」



しかし、マックスは、馬乗りになった

エリーの下でくるりと体を回転させると、

するりと抜け出し、四つん這いの

格好になって逃げ出そうとした



小さな尻餅をついたものの、

エリーは野獣のように、

マックスの後ろに襲いかかった


四つん這いのマックスのすぐ背後に、

両膝をついたエリーがくっつく


エリーは両腕をブンブンと振り回し

加速によって勢いをつけ、

マックスの尻を両手でビターンと叩いた


エリーの普段は毅然とした顔は、

今や力んで口元をきつく結び、

唇の両端を下げ、

眉間に皺を寄せた渋い表情となっていた



両尻を叩かれ、マックスは腰の力を失い、

まるでカエルのような情けない格好で

地面にひれ伏してしまった



夜の寒々とした重い空気に、

マックスのすすり泣きが響いていた


グランヘルム3世が言った



「見てはおれん、かつての勇者マックスの

 威容を諸君らは覚えておろう!

 確かに今の余にとっては

 ウォーヘッドという存在は

 脅威となっておるかもしれぬ、

 しかし、彼らは我々を含めた、

 全人類のためにその命を捧げ、

 勇敢に戦ってきたのだ

 

 そんなウォーヘッドたちの筆頭であった

 勇者マックスがこのような目に合うとは

 余は甚だ遺憾であるぞ」



メシア教の最高司祭が言った



「私も、私の門下である僧侶エリーが一体、

 何のつもりでこのような

 暴力行為を行っているのか

 まったくわかりません、

 いかがいたしましょう?

 王の御意志では、ウォーヘッドたちに

 表立って干渉することは避けるべきだと

 いうことですが

 使徒の力を用いて、エリーを

 排除いたしますか?」



しかし、グランヘルム王は、決断しかねていた


その内に、エリーは荷物の中から

ゴソゴソと拷問道具を出し始めたのだった


 

 

挿絵(By みてみん)








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