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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
59/114

マッドマックス

ディックソンは肩をすくめてエリーに答えた

ルーンの共通語で言う



「ホント、メシア教の厳罰主義は恐ろしいっすね、

 俺の心の支えであるリックがいなければ

 もう、とっくに折れてたぜ!

 別に内密の会話なんてしてないっすよ

 ただ、久しぶりにエルフ語が使いたくなった

 だけですって」



エリーは相変わらず厳しい顔でディックソンを

睨みつけている。

リックは少し俯いていた。



と、唐突に、ここに来て、

初めてマックスが口を開いた



「...メシアはお許しになーる、

 むしろ、裁くことなぞないのであーる、

 皆が恐るるべきは

 メシアの怒りではなーい...」



エリーとリックとディックソンは、

まるで恐れおののくかのごとく、

少し後ずさった


3人はまるで畏怖に縮こまっているかのごとく

遠慮がちにマックスを見つめた


伸び放題の金色の髭と髪が顔を覆っていて

その表情はまったく読めない...

ボロボロの灰色のローブの下は、かつて

ウォーヘッドの勇者だった頃の青と白の

服装だ



3人が見つめる前で、マックスは膝をついて

崩れ落ちた。

肩を震わせ、消え入るような声でつぶやく



「あのお方が....かつての 

 神々をも超越される存在に

 なられるまでの間に、

 この世界でお受けになるであろう受難....

 その想像を絶する苦しみを....我々は、

 今の俺のように恐れるべきなのだ」



会話の糸口が見え、3人は次々とマックスに

語りかけた


やがて、膝を少し屈めてエリーが優しく

マックスに語りかける



「メシアは最初から万能で

 完璧なお方なのです

 人々の祝福を一身にお受けになり、

 さらに長じてかつての神々を超えた

 唯一神となられるのです。

 受難なぞあるはずもありません

 苦しまれることなどあるはずもないのです」



慈愛に満ちた笑顔で語りかけるエリー


しかし、マックスはふいにバネのように

立ち上がった


目を大きく見開き、その青い瞳を不気味に

輝かせ言った



「それはなーい、それはなーいのだ

 あのお方は自ら望まれるのだ

 受難の道を望まれるのだ

 

 人々の過ちや憎しみすら

 受け入れーる

 苦しみを受け入れーる

 俺にはその苦しみが理解できーる

 理解できーるから苦しいのだ

 だからこそ恐れーるのだ」



もはや、3人はマックスからジリジリと

遠のいていた


リックが言った



「エリー、もうそっとしておいてやろう...

 多分、マックスには時間が必要なんだ

 彼がメシアにお会いしたのならば

 動揺も大きかっただろう、だから

 こうして混乱しているのだ

 時間が彼を落ち着かせてくれるんだ

 だから、エリー、頼む」



エリーはリックも睨みつけて言った



「リック、あなたはメシアを誤解している

 ままのマックスを放っておけと

 言うのですか?

 メシアへの信仰心が足りないようですね。


 あなたも、ディックソンのように

 その肉体に責め苦を刻んで

 反省する必要がありますよ」



リックの顔は、どことなく

期待に満ちているように見える



...すっかりエリーから受ける拷問に

ハマっているリックだった。



結局、エリーも折れた



「いいでしょう、私たちはダルクエンの 

 大聖堂に向かいます。

 帰りに寄るので、また会いましょうね

 マックス」



流れるようなロングヘアを翻して

エリーはマックスの元から立ち去ろうとした



しかし、ディックソンがその手に魔力を込める



驚いて振り向くエリーとリック



ディックソンは、攻撃魔法を

虚空に向かって放っていた



雷撃が上空で霧散していく....


何もない虚空に、ふいに甲冑に包まれた

使徒が出現した



ディックソンが苦々しげにつぶやいた



「神の戦士の劣化コピーめ、この地上界で

 無双できてさぞ得意げだろうな。

 マックスをずっと見張っているのか?

 そして、会いにくるウォーヘッドの

 仲間たちも監視しているのだろうな」



それは、使徒サリカだった。

薄いピンク色のどちらかというと

丸みを帯びた甲冑だ。


重くのしかかるような強い太陽の日差しを

背後に浴び、大きな影がウォーヘッドたちに

かかる


マックスはぼうっと突っ立ったまま、

気にもしていないようだ。


構えるエリーとリックとディックソン


しかし、使徒サリカは甲冑の至るところに

取り付けてあるノズルから

エネルギーを噴出すると、そのまま

上空へと飛び立っていった。



リックが言った



「あの使徒どもが存在する限り、この世界は

 強制的にも平和が保たれる...

俺たちにはあの使徒どもと敵対する理由は

 どこにもないのさ。

 ああ...敵対してどうなる?

 また戦乱が起きて人々は再び苦しむことに

 なるだけだろう」



ディックソンも同意する



「リックの言うとおりさ、俺たちの役目は

 もう終わったんだ。

 平和を満喫している人々を乱す権利は

 俺たちにはない

 人間も魔族もこれで満足している。

 俺たちは自分たちの旅を続けようではないか!

 あ、そういえばマックス、お土産を

 渡すのを忘れていたぜ」



3人は、思い出したように荷物から

食料や物資などを取り出して

マックスの前に置いた


最後に、ディックソンは小さな麻袋を

取り出した

そして言った



「キオミが作ったオリジナルの甘草飴だ

 懐かしいだろう?」




 

 



 

 


 


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