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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
53/114

フーセンボム

気球の町の外れの岩場の影に

人々が避難していた


町は、大渓谷を挟んで、イーストエア側と

ルーン側に分かれている。


昆虫に乗ったヘリントンがルーン側の町から

こちらに戻ってきた

ヘリントンの後ろには、発着場の兵士が一人

乗っている



ヘリントンが言った



「あっち側の町も避難は終えたぜ、後は

 ウォーヘッドたちが奴らを

 食い止めてくれるのを待つだけだ、

 彼らの勝利を祈ろう」



キャサリンの隣には魔王軍の捕虜である

ギニエルがいた


今、魔王軍がこの町を攻撃しようとしている

真っ最中ながら、人々はギニエルに対して

深く感謝の念を持っていた


ギニエルは、魔法で推進力を持たせた気球で、

他の気球を救った上に、

病院から、動けない者たちを運んだのだ


昆虫から降りた発着場の兵士が、ギニエルに

対して、何やらねぎらいの言葉をかけている



キャサリンが言った



「おそらく、敵のすべての航空隊を

 食い止めるのは無理よ、

 この町も被害を受けるでしょうね。

 さっき、ウォーヘッドたちの援軍が

 上空を通り過ぎて行ったけど、

 数が少なすぎるわ

 魔王軍だけがあっちの世界からの

 バックアップを得られている以上、

 人間側の苦戦は必然なのよ」



しかし、ヘリントンはサブカメラの音声を

切ってから静かに言った



「そうかな?なぜ、魔王軍だけが

 あっちの世界からの干渉を受けていると

 思うんだい?

 この事件の黒幕は、魔族だけとは

 限らないんだぜ、もしかしたら人間側だって

 あっちの世界から接触を

 受けているのかもしれないぜ」



キャサリンが言った



「そうね、そうかもね、だとしたら

 その内に何か大きな動きがあるかも

 しれないわ。

 でも、ウォーヘッドたちは知らないと思う、

 マックスは確実に知らないでしょう。

 彼は本心から、自分たちこそが

 人類を守護する

 最後の砦だと信じているわ」



ヘリントンが言った



「人間側の権力者たちにとって、

 ウォーヘッドたちは強力で自分たちの

 制御も効かない相手だろう、

 もしも、権力者たちがあっちの世界から

 接触を受けていたとしたら、

 ウォーヘッドたちには

 秘密にするんじゃないかな?

 むしろ、最前線でウォーヘッドたちを

 消耗させきった後で、

 密かに準備していたカードを

 ようやく出すんじゃないかな」



キャサリンは黙って、

北のほうの空を見つめていた



/////////////////////////////////////////



航空チームBは、フーセンドラゴンを真ん中に、

左右に飛行竜を従えて飛んでいた。


気球の町と大渓谷を越え、ついに巨大トンボの

大群と対峙したのだった。


地上には、砂地に着地しているもう一匹の

フーセンドラゴンが見える。

上空では、航空チームAが

トンボたちと戦っていた



フーセンドラゴンの背中には、

フーセンライダーと

チームチャーリーのメンバーたちが乗っている



フーセンドラゴンが言った



「よし、我も覚悟を決めたぞ!

 君たち、我の背中から降りるがよい、

 これは捨て身の攻撃だ、

 もう二度と会えないかもしれないが

 我の勇姿をその目に焼き付けるがよいぞ」



フーセンライダーは悲痛な悲鳴をあげた。


しかし、フーセンドラゴンの覚悟が本気だと

感じたチームチャーリーのメンバーたちが、

フーセンライダーを抱えて飛び立った


地上のチームアルファとハイエルフ、そして、

トンボの周囲からチマチマと攻撃を加えていた

航空チームAの目に壮絶な光景が映った



フーセンドラゴンは真っ直ぐに

トンボの大群に突っ込んでいった。

そして、体内から一気に

フーセンガスを放出した。



次の瞬間、フーセンドラゴンを中心に

大爆発が起きた


四方八方に吹き荒れるその火炎の暴風は

トンボの抱えている爆弾を次々と誘爆させ

あまりにも巨大な大爆発となった


周囲の大気を揺るがし、

轟音が気球の町にまで届いた


避難した人々は、あまりにも巨大な

花火のような大爆発を目撃したのだった


.....こうして、ギガントピープの大群は

羽を焼かれ、次々と地上に

落ちていったのだった。



壮絶な光景に固まりながら、

勇者マックスが言った



「マークといい、フーセンドラゴンといい、

 なぜ、こうも自己犠牲精神に

 満ち溢れているのだ?

 一体、君たちのその決意はなんなんだ?」



黒焦げに焼け焦げて、ゆっくりと

地上に墜落していくフーセンドラゴン


その姿を見つめるマックスの頬に

一筋の涙がこぼれ落ちた



上空の航空チームAは、もはや

数少なくなった巨大トンボの掃討に移った



レッドドラゴンのボケコラは、

一匹のトンボに向かって炎を吐き出しながら、

その目に涙を湛えていた



「その決意、その炎の峻烈さ、

 今の我にはおおよそ到達できぬ境地よ」



ボケコラの背中のストゥーカも涙に

声を詰まらせていた



「ええ、誰にだってできることではないわ、

 なぜ、フーセンドラゴンが私たち人間の

 為にこうして我が身を犠牲にしてくれたのか

 なぜ、こうも私たちを愛してくれたのか...

 その理由を聞くことはもうできないのね」



弱々しい念話が彼らの中に届いた



「我は黒焦げになったが生きておるぞ、

 このような攻撃をした理由は単なる

 ノリと勢いだ、深く考えるな...」



こうして、ついにギガントピープの大群は

駆逐されたのだった。





 

 

 


 

 

 






 

 

 

 





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