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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
51/114

マークミサイル

ケーブマンティスに乗った勇者マックスは

飛んでくる矢をかわしながら飛び回っていた


ファイアフライを次々と召喚するキオミと、

飛び回るマックスに、ギガントピープの大群は

注意を引き付けられていた。


しかし、巨大トンボの飛行能力は極めて高かった

一瞬で上下左右に移動する


これでは、こちらの攻撃が当たらない


ケーブマンティスにはそのような

高度な飛行能力はなかった


ふいに、マックスの上空に一匹の巨大トンボが

出現した

先ほど、爆弾を落とした個体だ。

6本のギザギザの足が、

マックスをすくい取ろうとする


昆虫を急降下させて、マックスはなんとか

逃れた



「ダメだ、空中戦ではこちらはだいぶ分が悪い

 奴らの抱えている爆弾を誘爆させたいが

 こうも、機動力が違いすぎるとな

 もうあきらめて撤退するしかないのか」



キオミが答えた



「ええ、さすがに私たち二人では、あっちの世界の

 昆虫たちを食い止めることはできないわ、

 気球の町の住民たちの避難も出来たらしいし

 私たちも撤退すべきね」



しかし、ふいにマックスはウォーヘッドの念話を

キャッチした


見苦しく泣き喚きながら、こちらに向かってくる。



聞き覚えのある声にマックスは驚愕した



「マーク、あんた、マークなのか!

 俺だ、マックスだ!

 ウォーヘッドとして覚醒し、偽勇者として

 予備軍に配属されていたあんたが

 最前線に来たのか?」



マークは絶叫していた



「うぎゃあああ、マックスかぁぁあ?

 おじさんだよ、久しぶりいいいいい

 君は行方不明になったと聞いていたが

 戻ってきたんだねえええええ

 皆、喜ぶよおおおおお」



マックスは叫んだ



「キオミ、やったぞ!!

 ウォーヘッドたちの援軍が来たぞ、

 俺の知り合いの一人が、真っ先にこちらに

 向かってきてくれている」



そして、魔力によって超加速したマークが

こちらに向かってぶっ飛んできたのだった。

鞍に腰掛けたままの姿勢で

突っ込んでくる偽勇者マーク


呆気にとられたマックスとキオミの横を

一瞬で通り過ぎていく


そして、マークは、一匹のギガントピープの

抱えている爆弾に

吸い込まれるように直撃したのだった


 

巨大な炎が空中に花開いた。そして、次から次へと

爆弾が誘爆を起こした



気球の町のヘリントンから興奮気味に通話が入る



「マックス、無事か?ここからでも派手な花火が

 見えるぜ!

 やったな、ギガントピープを数匹、撃沈したぜ」



ケーブマンティスに乗ったマックスは、

その手に焼け焦げたマークを抱えていた


マックスの声は感動に打ち震えていた



「なんて勇敢なんだ!キオミ、彼は俺が

 村人だったときに、村の代官だった男だ!


 俺は彼の元に下男として奉公に出されていて

 その時に、彼は過ちを犯すところ

 だったのだが、見ただろう?

 ウォーヘッドとして覚醒し、すっかり

 その精神も高潔になったんだ!


 この自己犠牲精神に満ちた攻撃は

 さすがの俺でも躊躇するだろう

 

 彼は偽勇者だって?いや、マークは勇者だ!

 俺はこれから彼を偽勇者と呼ぶことを

 許さないだろう」



キオミも感動していた



「なんてすばらしい人なのかしら、

 見たわよ、何の迷いもなく、トンボの

 爆弾に向かって突っ込んでいった...

 さあ、マックス、この高潔なもう一人の

 勇者をこちらへ」



キオミはマックスからマークを受け取った



キオミは昆虫を戦線から離脱させながら、

マークを優しく抱きかかえ、治癒魔法を唱えた


彼女の顔を見上げたマークの目には、

頭に美しい布を巻いた

切れ長の目で空色の瞳の、

柔らかに輝く金髪の美女が映っていた



マークは弱々しく言った



「君は、女神か?おじさんは死んだのか?

 でも、死後の世界でこんな美しい女神に

 会えるなんて、死も悪くないよね。

 死んだら救世主メシアの元に召される

 って聞いてたけど、おじさんは

 君のような女神の元に召されてうれしいよ

 おじさんは最高に幸せだよ

 おじさんは幸せだよ

 おじさんは...」



満足げな笑みを浮かべたマークは目を瞑り、

その頭は力なくキオミの腕の中に沈んでいった


マックスは悲鳴をあげた



「そんな、せっかく再会できたというのに!


 くく..俺は自分が許せない!


 マークはたった一人であのトンボの大群に

 立ち向かったというのに、

 俺は背を向けて逃げようとしている...


 くっ..ぐぐ...許さん、許さ、る許さん.....」



熱くなったマックスの手には勇者の剣が握られている

そして、その剣は光り輝いたのだった


ケーブマンティスの踵を返して、まっすぐに

ジャイアントビープの大群のほうへ戻っていく



そして、背後から迫っていたフーセンドラゴンが

ついにマックスのケーブマンティスと並んだ



懐かしい声が次々と聞こえてくる


セリスの声が言った



「おかえりなさい、マックス、

 また会えたわね、そしてやっぱり

 人々を守るために戦っているのね。

 いつまでも私たちの勇者でいてくれて

 本当にありがとう」



マリアンヌの声が言った



「もう二度と会えないつもりだったから

 気恥ずかしいけど、

 私たちは全員、無事ですわ

 そして、皆、見違えるほどレベルアップしたわ

 あなたもそうみたいね、

 .....おかえりなさい」



ティルクの声が言った



「新しい剣を手に入れたみたいだな、

 勇者の剣なんだろ?

 お前さんがその剣を手に入れることが

 出来たってだけでも、遠くイーストエアまで

 飛ばしたかいがあったな!

 ウチの偽勇者も役に立ったみたいでなによりだ」



マックスは横を振り向いて、フーセンドラゴンの

背中を見つめた

そしてニヤリと笑った



「ああ、ただいま!!

 それと、マークは偽勇者じゃないぜ!

 ティルク、もう二度と

 彼を偽勇者と呼ばないでくれよ」



 

 

 


 

 









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