表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウォーヘッド  作者: グレゴリー
5/114

思い出2

代官は村人たちによって束縛され、村の外れの

牢屋に入れられた。

この村に現れた選ばれし者は

いかにロックフォール公の代官とは言え、

その権力を理不尽にふるうことのできる

存在ではなかった


マックスとセリスは、村長の家で、立派な

衣装に着替えさせられた。



「あはは、おらたち、衣装負けしてるだよ 

 ちょっと恥ずかしいだね!

 あんちゃん、何その格好、若武者みたいだ」



セリスは年相応にはしゃいでいた。

長い黒髪は綺麗に梳かされていて

白と青を基調にした清楚な装いだった。

大きな目の中の緑色の瞳はキラキラと輝いている



「ま、さっきまで村人だったおらたちが

 いかに立派な衣装を着ても

 馬子にも衣装とはならねえだよ」



まさしく若武者風の装いにされたマックスは

セリスにやれやれと同意してみせた


そんな二人を真剣な面持ちで見つめながら

村長が言った



「よいか、二人とも、これからお前さんたちは

 王都にあるウォーヘッド養成所に行くのじゃ

 そこで数年間訓練を積んで、その後、

 魔王軍との戦いの最前線に立つことになろう

 この村へ帰ってくることは

 しばらく無いかもしれぬ。じゃが、

 お前さんたちの家族のことは心配するな

 ウォーヘッドの家族は、いや、この村ですら

 これからは優遇されるじゃろう

 ウォーヘッドの故郷ホームは王国によって

 手厚く保護されるのじゃからな」



それは本当だった。

ウォーヘッドの戦意へのモチベーションとして、

彼らのホームは非常に重要な存在となる。

これからは、ちんけな悪代官に

好き勝手にされることはなくなるだろう


そして、マックスとセリスは、

王都の訓練所に入った。


ウォーヘッドとしての能力を

発現させる者は様々だ

すでに高名で経験豊かな騎士や戦士、

魔法使いもいれば

彼らのように、つい前まで、

ただの村人だった若者もいる


こうした未熟な若者たちのために、

王国はウォーヘッド訓練所を作ったのだ。


チームアルファの魔法使いマリアンヌと、

チームブラボーの竜騎士ストゥーカ、

弓騎士カールソンは彼らの同級生だった。



(当時は、マリアンヌは長髪で鼻持ちならない

 嫌味なお嬢様だった、ストゥーカは

 なぜか王都の上流階級の娘たちに

 ファンクラブを作られてたし、

 カールソンは女ったらしのキザ男だったな、

 なつかしい)



彼ら上流階級出身の生徒たちとの間での

諍いはあったものの

訓練所ではウォーヘッドたちは恐るべき勢いで

教えを吸収していった。

これも、恩恵を発現させた者の能力なのだ


そして、王都を急襲したレッドドラゴンとの

死闘を思い出す。


ドラゴン、それは神話の時代、

暗黒神と神龍との戦いにおいて

暗黒神の右腕によって抉られた

神龍の鱗や肉や骨の欠片が大地にこぼれ落ち、

そこから生じたと言われている。

絶対的な破壊者である神龍の

力を宿す恐るべき存在

 


将軍ジェネラルは皆に言った



「グレイトドラゴンや、アースドラゴンでなくて

 幸運だったな、レッドドラゴンの若い個体なら

 訓練生の君たちで対処できるであろう、

 それでは諸君、健闘を祈る」



訓練生たちは王都の城壁の上に立っていた。

彼らの背後では、台座の上に備え付けられた

巨大な弩を、兵士たちがセットしている。

だが、これらはあくまでも最終防衛ラインだ

自分たちは、さらに前に進み出てドラゴンを

迎え撃たなければならない。


長い栗色の髪を風になびかせながら、

マリアンヌが言った



「前に行った、ゴブリン退治とは

 訳が違いますわね

 実質的にはこれが私たちの初めての

 実戦ということになるのかしら?

 そちらのお上りさんたち、

 私たちの足を引っ張らないでちょうだいね」



マックスの横で、セリスがキッと

マリアンヌを睨んだ

すっかり垢抜けて都会人のようになった

彼女にとって、

田舎者扱いされるのは我慢ならない。

マックスにとってはどうでもいいことであるが


ふと、城壁近くの建物を見ると、

屋上でお嬢様たちが集まっていた

ストゥーカのファンクラブの会員たちのようだ


何かのメッセージを描いた

大きな旗のようなものを全員で広げていた


赤毛で長身のストゥーカが慌てて叫んだ



「君たち、何をやっている!危ないから

 はやく逃げるんだ、まったく..」



マックスは肩をすくめて言った



「相変わらずモテモテだなストゥーカは

 まあ、俺たちから見てもカッコイイ女だけどさ」



ふと、脇腹をつつかれ、

隣を見ると、カールソンだった。

面白くなさそうな顔で、そっちを見てみろと

ジェスチャーしてくる。


別の建物の屋上に、町娘たちが集まって同じく

メッセージが描いた旗を掲げていた

描かれていたのは自分の名前だった。



「...ああ、君らと違って俺みたいな元村人には

 町の人たちは同情的で優しくしてくれるんだ、

 自分たちと近しい存在だと

 思ってくれているんだろう

 この前も、八百屋のオバサンが

 野菜を分けてくれたりとかな...」



カールソンは舌打ちした。


さらに別の建物の屋上では、少年たちが集まって

セリスを見つめていたのだが、

当人は気づいていなかった



「皆、ドラゴンは全長10mそこそこの

 まだ若い個体だわ

 レッサードラゴンね、私たちの前方8マイルを

 まっすぐにこちらに向かってきている

 付随してくる敵はいない、湧き上がる攻撃性の

 赴くままに単身突撃してくるつもりね

 今の飛行速度だと、後5分で城壁を超えるわよ」



聖眼の力を使ってセリスが全員に告げた


長い黒髪を風に美しく羽ばたかせ、透き通った

緑色の瞳は輝いていた。


すっかり聖女らしく変わり果てたセリスを

マックスは頼もしそうに見つめたのだった

 



 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ