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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
42/114

新たなる能力

市場からしばらく歩くと、サルマティクスを

突っ切って流れる川に行き着いた


川原にテント布と板切れで作った

大きなあばら家があって、

そこは人で混み合っていた


茶色と緑色のマントを羽織り、フードを

被ったキオミが言った



「ここが定食屋だよ、世界樹の森から逃げてきた

 ハイエルフたち数名が、この店を営業して

 なんとか日銭を稼いでいるってわけ

 宿屋のネーヤが調理しているだけあって

 大人気だね、そんで、あっちの二階建ての 

 家が、私があなたから貰った金貨で

 借りた私たちの家ね」



マックスは、両手に、折りたたんだ出店の荷物を

持ちながら、マリアンヌの話を思い出していた



「そういえば、世界樹の森の宿屋の料理は

 王都の最上級のレストランを上回るらしいな

 ま、大人気なのも頷ける

 それと、あの時の金貨を持っててくれたのか

 役に立って嬉しいよ」



キオミが言った



「ええ、ディックソンとアンソニーは金貨を

 受け取らずに全部私にくれたね

 偶然、マントの内ポケットに入れたままに

 しててね、飴屋を逃げ出すときに

 玄関に掛けていたそのマントを羽織って

 急いで店を出て、宿屋に向かって

 泊まっていた人間たちを守っていたね」



二人の側を、市場から来たっぽい

行商人たちが通り過ぎていった

彼らの会話が聞こえてくる



「あの定食屋、マジでうめえんだぜ!

 客で込み合ってるけど、手際よく

 料理が出てくるし、

 ウェイトレスのねーちゃんが

 超美人なんだ!

 ここの言葉が喋れないっぽいから

 戦争を避けて、北のほうから

 やって来た難民だと思う。

 夜もバーをやってるらしいから

 今夜も行こうぜ」



髭面で、円柱状の帽子を被った

その行商人たちをマックスは横目で見送る


やがて二人は、白い二階建ての家に入っていった


居間では、ハイエルフの長老オウルが長椅子に

寝そべっていた



キオミが言った



「長老、あのケーブマンティスを

 捕まえたときに会った、

 ウォーヘッドの、勇者マックスです。

 世界樹の森の焼け跡で魔王軍の襲撃に

 あって、仲間たちのテレポーテーションで

 ここまで飛ばされてきたのです

 ちなみに、世界樹たちは、根幹まで

 焼けておらず、炎の魔人は怒りで

 我が身を焼いて消滅したとか」



オウルは長椅子から身を起こして

言った



「ふむ、人間の勇者か

 まさかこんな場所で会うことになるとはな

 前回の勇者マルス殿には、世界樹の件で

 世話になったからの

 ふむ、恩義があるゆえに、悪いようにはせん

 良く、彼を助けてやりなさい

 それにしても、世界樹は無事じゃったか

 それは何よりじゃ」



マックスは言った



「あなたが、ハイエルフの長老どのですか

 初めまして、ウォーヘッドの勇者マックスです

 世界樹の森での戦闘で、こちらまで

 飛ばされてきました

 私は、仲間たちの安否を確かめに、

 そして約束を果たすために

 軍に戻らなければなりません、どうか

 ご助力をお願いします」



頭を下げるマックスを、ハイエルフの二人は

驚きの目で眺めている



キオミが言った



「ねえ、マックス、あなたいつからエルフ語が

 しゃべれるようになったの?」



マックスはハッと頭をあげた



「なんだって、え?

 エルフ語で話してたのか?そして俺は

 エルフ語で答えたのか?

 あ、そういえば、さっきの行商人たちの

 言葉もなぜか理解できた

 イーストエアの言葉なのに

 どうなっているんだ」



慌てるマックスとキオミ

オウルは静かに言った



「ふむ、お前さんに与えられていた

 恩恵が発現したようじゃ

 様々な試練を経て、また一つ大きく

 成長したのじゃよ

 おそらくは、お前さんは言葉を話す

 すべての種族と会話ができるように

 なったのじゃろう、おめでとう」



しかしマックスは言った



「ええ、実は数日前、勇者の剣を手に入れた

 のですが、それは私の手の中で

 消滅してしまいました。

 私は勇者として認められなかったと

 思っていたのですが、

 まさか、新しい恩恵が発現したなんて」



オウルが言った



「ほう、一体、誰がお前さんの

 勇者の資格のあるなしを判定するのじゃ?

 勇者であろうとする自らの意思を

 持ち続けよ、

 勇者の剣も戻ってくるかもしれぬぞい」




キオミに案内されて、マックスは

風呂場に行った


キオミはウンディーネを召喚し、風呂桶に

水を満たし、サラマンダーを召喚して

湯を沸かした。


さらに、洗濯槽の中に水を入れると、

シルフを召喚して小さな竜巻を起こした



「この洗濯槽の中に、服を入れておけば

 綺麗になって、さらに乾燥もするよ

 それじゃあ、ゆっくりと身体を休めてね

 私は昆虫たちに餌やりに行くから

 しばらく家で休んでな」



マックスは一人、湯船に浸かった


そして、綺麗になった服を身に付け、

居間に戻った。


長老オウルとしばらく話していたが、

マックスはうつらうつらと頭を揺らしはじめ

寝込んでしまった


..................................



「うう、こんなに熟睡したのは久しぶりだ」



目が覚めると、長椅子に寝ており、身体に

毛布がかけられていた


ふと、目の前にハイエルフの小さな女の子が

立っていた

イーストエアの人間の衣装を着ている


子供らしい細く柔らかな髪は薄い金色の

プラチナのように光を反射して

大きな青い目はキラキラと光輝いているようだ



「あ、起きた!ねえ、お兄ちゃん、あなた

 キオミ姉ちゃんとどういう関係なの?

 ここで同棲するつもりなの?

 オジジが言ってたけどエルフ語が

 しゃべれるんでしょ?

 なんで人間なのにエルフ語がしゃべれるの?」



矢継ぎ早に質問を投げかけてくるレネク


マックスは苦笑いして簡単に答えた



「俺はマックス、そうか、君はレネクか

 よろしく

 俺はウォーヘッドだから普通の人間とは

 ちょっと違うんだ

 キオミとは君が思っているような

 関係ではないよ

 この家に長居するつもりはないけど

 ちょっとお世話になるかもね

 あと、君一人かい?」



どうやら、家には小さなレネクしか

居ないっぽい

マックスは心配になった



「うん、ママも皆も、店にいるよ

 私はハイエルフだから、

 人間は怖くないんだ

 変質者が来てもすぐに逃げられるよ。

 それに、

 オジジに貰ったアイテムを使えば

 周囲10メートル以内の生物は死滅するよ

 だから、マックスも

 店に行ってみなよ、私はお留守番しとくから」



何げに怖いことを言っているが、レネクは

ハイエルフたちが、夜のバーにいると

教えてくれた


レネクはなおも食い下がった



「キオミ姉ちゃんがあんなに

 嬉しそうだったのに

 そういう関係ではないって?

 だったらマックス、

 あなたは一体、キオミ姉ちゃんの何なのさ?」



マックスはボソリとつぶやいた



「さあ、何なんだろうな?」



そして家を出て、川原の定食屋に向かった


 


 

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