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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
34/114

バジリスク

基本的に、地上界には伝説級のモンスターの数は

少ない


世界が2つに分かれてしまった時に、

強力な種族のほとんどは地上界ではなく、

あっちの世界に住まうことになった


地上界に残った強力な魔王やモンスターたちも、

時代を経るにつれて

人間種族によって倒されていき、封印という名で、

あっちの世界に飛ばされてしまった


地上界とあっちの世界の関係は、

水の流れで例えると、上流と下流のようなものだ


それでも双方の行き来が難しいことは

言うまでもないが、

地上界からあっちの世界に行く方が

比較的容易であり、逆の場合は

水の流れを遡るがごとく、労力が段違いなのだ


半精霊であるグラウンド.ゼロのような

少数の例外はあるものの、

この地上界にバジリスクのような

伝説級のモンスターが出現することなぞ

ほとんど考えられなかった



「バジリスクだと!くっ、前の昆虫のように

 あっちの世界から密輸されてきたのか」



地面がグラグラと揺れている、

そして、周囲はストーンゴーレム

たちによって包囲されている。



マックスは仲間たちに言った



「上空に逃げられる者は、上空に逃げるぞ、

 チームブラボーの騎馬たちはゴーレムを

 突破してくれ、こちらからも援護する」



一斉に、チームアルファの勇者マックス、

聖女セリス、魔法使いマリアンヌ、

戦士ティルクが上空に飛び立った


続いて、チームチャーリーの僧侶エリーが、

エルフのリリーベルを抱えて、

魔法使いルーティーが、

ドワーフのイルガを抱えて上空に飛び立つ


チームブラボーの聖騎士リックと、重騎士ドン、

弓騎士カールソンが突撃態勢に入った


騎馬連中の目の前のストーンゴーレムに向かって

セリスとマリアンヌの攻撃魔法が放たれる。

同時に、騎馬連中がゴーレムに向けて突撃した


魔法攻撃と、騎士たちの突撃を受け、

一体のストーンゴーレムが耐え切れずに

バラバラと崩れ落ちた



しかし、グラグラと揺れていた地面に、

ふいに巨大な穴が開き、

カールソンの馬が、炭だらけの地面と共に、

穴に飲み込まれそうになった


馬上で姿勢を崩すカールソンの襟首を

片手で持ち上げたのはルーティーだった


歯を食いしばって、額に青筋を立て、

鬼のような形相で、

ドワーフと弓騎士をそれぞれ片手で掴み

上空に浮遊するルーティー



カールソンが悲痛な叫びをあげた



「俺の馬が、くそ、俺の馬が穴に飲み込まれる、

 頑張ってくれ、俺のスウィーハニー!!」



スウィーハニーと名付けられている

カールソンの馬は、

流砂のように穴の中に流れ込む土砂の上を

必死で駆け上がっている


しかし、上空からレッドドラゴンのボケコラが

急降下してきて、スウィーハニーを前足で

器用に掴んで飛び立った


そして、なんとか包囲を突破したチームブラボーの

騎馬たちの側に、スウィーハニーを下ろした。

スウィーハニーは嬉しそうに嘶き、飛び立つ

ボケコラの後ろ姿を見送った



カールソンが言った



「サンキュ、ボケコラ、それにルーティーもな!

 まさに怪力魔法使いだな、すごいぜ」



ルーティーが憤慨して言った



「誰が、怪力魔法使いでありますか!

 重装備の弓騎士と、ドワーフ戦士を

 両手に抱えて、自分は限界に近いでありますよ、

 あなたたちの鎧、重すぎではありませんか?

 加えてイルガは体重そのものも重いのであります」



イルガが言った



「ごめんねー、でも、今のところマジで

 あんたの怪力だけが頼りなの、もうちっと

 頑張ってちょうだいね」



そんな光景を眺めるアジテーター.デーモンの

イワノビッチは余裕の表情だった



「ふむ、先ほどのレッドドラゴン、

 確かあの時、吾輩の主催した決起集会から

 勇み足で抜け駆けしたアホではないか?

 人間たちに寝返ったと聞いたが

 ほんとうにどうしようもないアホだな」



///////////////////////////////////////////



王国の外れにある険しい山脈は、魔物たちの

巣窟だった。


岩山の洞窟には、所狭しと

魔物たちが溢れかえっていた


彼らの前に、唐突に異空間ゲートが開き、

その中から、首輪を嵌めた「扇動者」が

出現したのだった


勢いよく地面に転がり落ちる

アジテーター.デーモン。

異空間ゲートから鎖が伸びて、彼の首輪に

繋がっている


イワノビッチは、しばらく地面でもがき苦しむ

ような動作をした

無念の極みのような表情を浮かべた顔には

大粒の脂汗が浮かんでいる


集まった魔物たちは、心配そうに、そんな

イワノビッチを遠巻きに見つめている


そして、扇動者イワノビッチは言った



「ぐあああ、なんたる無念、なんたる無念よ

 今、この瞬間、魔物たちが迫害を受け、

 人間たちによって苦しみのどん底に

 落とされている。

 この無情、誰が救いたもうのか?」



瞬時にイワノビッチの顔に、

救いを見出したかのような穏やかな笑みが浮かんだ

上半身を上げ、両手を広げて天を仰いで言った



「むむ、吾輩には見えるぞ!!

 吾輩をはじめ、諸君たちを救済したもうであろう 

 偉大なるお姿が。吾輩には見えるのだ!

 もちろん、諸君らもそうであろうな?」



挑発的なイワノビッチに対して、魔物たちは

威勢を張るかのごとく頷いてみせた



「そのお方とはどなたなのだ?」



魔物たちは一斉に叫んだ



「魔王様だ!魔王様だ!魔王様だ!」



大声援に後押しされるがごとく、

芝居じみた動作でイワノビッチは立ち上がった。

そして、目の前の魔物の一人の肩に両手をおいて、

その目をしっかりと見つめて言った



「そのとおりだ、ついに我々のために

 あのお方が立ち上がってくださったのだ!


 幾千もの願いを捧げたあの夜のことを

 思い出すがいい、おそらく諸君らは

 自らの願いが叶うことなぞ、

 考えてもいなかったのではないか?


 涙で枕を濡らし、幾多の夜をただただ、

 空虚に過ごしていたあの屈辱の日々のことを

 思い出せ!!


 しかし、今日から何もかもが変わるのだ!!

 我々の夢を叶えて下さるお方がついに

 現れたのだ、そのお方とは魔王様だ!」



イワノビッチに両肩を掴まれた魔物は、

肩を震わせ、その顔に決意を込めた。

そして、ふいに叫びだした



「わかりました、今すぐに

 魔王様をお助けしなければ!

 私が馳せ参じますぞ、魔王様!」



くるりと背を向けて駆け出そうとした魔物を、

他の魔物たちがあわてて止めた


イワノビッチが煽る



「待て、早まるな、気持ちはわかるが

 今はまだその時ではない、

 魔王様のご命令を待つのだ!

 その時まで、熱い心を内に秘めておくのだ」



しかし、魔物たちの最後尾で佇んでいた

一匹のレッサードラゴンがふいに大声で叫んだ



「ぐぬぬおお、ぬおおおお

 許さねえ、絶対に許さぬ、許さ、る許さん!

 人間どもがふざけやがって、

 俺が今からあいつらを皆殺しにするぜ

 お前ら見てろよ、俺が今からやってやるからよ」



イワノビッチが何かを言う前に、

そのレッサードラゴンは背を向けて飛び立っていった



/////////////////////////////////////////////////////



あの時よりも一回りほど大きくなったか?

イワノビッチは上空のボケコラを見つめた



「ふむ、ドラゴンというのは、

 修羅場をくぐり抜けることによって

 その成長も早くなると聞くが、

 それなりに修練をしてきたようだな、

 面白い、吾輩が相手をしてやろう」



どこからともなく、

醜く平べったい飛行モンスターが出現した。


イワノビッチはその飛行モンスターに飛び乗ると

上空のボケコラに向けて飛び立ったのだった


 

地上では、数体のストーンゴーレムが、

包囲を突破したチームブラボーの騎馬たちを

追いかけていった


包囲網のゴーレムの数は減ったが、

そのようなもの問題でもなかった


地中に空いた穴から飛び出してきたもの


それは伝説級のモンスター、「バジリスク」だった





 











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