世界樹の森へ
踊り子のマリア、エルフのリリーベル、
魔法使いマリアンヌの3人の踊りを
マックスは突っ立ったまま、放心状態で
眺めていた
ふと、腕を掴まれて横を向くと、
竜騎士ストゥーカだった
「あなたたちが楽しんでるのをよそに
私はずっと、ボケコラに乗る子供たちを
監視してたの...
だから、その、そろそろ私も楽しみたいわ、
マックス、付き合ってくれるわよね?」
ゴツゴツした鎧を脱いだストゥーカの上半身は
黒のタンクトップだけだった。
豊満な2つの丸みが、竜騎士として鍛えられた
筋肉によって余裕で重力に抗い、
ツンと上向きにその存在を誇示している
...たまんねーぜ....
マックスが答えた
「お疲れさん、俺でよかったら君とのダンスに
付き合うよ、
俺は下手なんで、君がリードしてくれ」
ストゥーカは言った
「じゃじゃ馬を慣らすのは私の得意分野なの、
ボケコラしかり、あなたもしかり」
こうして、ストゥーカのリードのもと、
マックスはぎこちないダンスを踊った
長身で赤毛の美女のしなやかなステップに
必死についていこうとする勇者マックス
村人たちが口々にそんな二人をはやし立てた
マックスは顔を赤らめて、照れ隠しのように
言った
「な、なあ、ハイエルフたちが
待っているであろう世界樹の森なんだが、
普通の人間なら、山や川を迂回したり、
街道を通ったりするから、たどり着くのに
2ヶ月ほどかかるかもしれない。
でも、俺たちウォーヘッドなら、
直線の最短距離で走破できるだろう、
つまり、ここから世界樹の森まで、
直線距離で、800マイル程度だと思うから
ウォーヘッドならば、下手をすれば、
10日前後で行けてしまうんじゃないか?
もちろん、ドラゴンで飛んでいけば
一日もかからないだろうし、
騎馬のメンバーならもっと早いだろうけど
つまり、キオミが予想している以上に、
俺たちは彼女と早く再会できるかもしれない」
マックスの手を取ったまま、くるりと身体を
一回転させ、ストゥーカは言った
赤い瞳は、まるで火が灯っているようだ
「...マックス、私と踊ってる最中に
他の女と会う話をするの?
ふーん、いい根性じゃない」
少し語気を強めたストゥーカは、マックスの身体を
ぐいっと引き寄せると、なんか、こう
密着系の感じに変更した
火が付いたら、グイグイと来るまさに、炎の女よ
「ストゥーカ、君がレッドドラゴンのボケコラを
手懐けた理由がわかった気がする、
君はドラゴンの吐く炎よりも、その体内に
宿る破滅の炎よりも、はるかに熱いものを
持っている...
うん、俺みたいな未熟者はやけどしちゃう」
マックスはとろけきってしまっていた。
ふいに、やりすぎたと気がついて
急いで、密着させた身体を離すストゥーカだった。
彼らを見ていた村娘たちは、両手で顔を
覆って黄色い悲鳴をあげている。
酔っ払ったおっさんの村人たちが、
マックスを指差して、笑いながら隣の奴と
何やら話していた。
「マックス、何、ちょっと
前かがみになってるのよ」
セリスが冷たい目で、マックスを
見つめていたのだった
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「アンソニー、無事だったの?
他のハイエルフたちは?
...そう、数人がはぐれてしまったのね。
く、地上界の魔王がこんなにも早く
動くなんて...
この世界での動きに連動しているのかしら」
スオムは、少し焼け焦げたアンソニーと対面していた
アンソニーは肩を震わせて俯いている。
そして、かすれたような声で言った
「スオム市長、その、ディックソン氏ですが、
はぐれてしまった方たちを救出するために
長老のオウル氏と共に、
森の外周部へと向かったのです
私も後を追って、そして、私は見ました。
ディックソン氏が、地中深くに
飲み込まれていくのを!
はぐれてしまった方たちは、オウル氏と合流して
無事に逃げ延びたと思います、
ディックソン氏が身を挺して囮になってくれた
おかげだと思われます
おかげで、私自身も大勢のハイエルフたちと共に
こうして、無事に脱出を果たしました!
ほんとうに、すいませんでした!
ディックソン氏をお守りすることが
できませんでした!」
アンソニーはスオムの前で、膝をついた
スオムは、眼鏡の淵を少し触ると、
そんなアンソニーを見つめて
不思議そうな顔で言った
「え?ああ、ディックソン以外は、全員が
無事に逃げ延びた可能性が極めて大きいのね
安心したわ。
アンソニー、あなたも、非常事態に
よく対応してくれました、感謝します。
どうか、立ち上がってください」
アンソニーはおずおずと言った
「しかし、スオム市長、ディックソン氏は
あなたの配偶者ではないのですか?
まだ学生の娘さんもおられるのでは?
あの人は、地中深くに
飲み込まれていったのですよ」
スオムが言った
「ええ、ディックソンは私の夫よ。
そして、豚のように薄汚い性犯罪者であり、
未だに、性犯罪者矯正のための拷問を
その威力を通常の100倍にして
受け続けていて、おかげで、その不死身性は、
かつてのタジマコヘイをも
凌駕していると思われるわ。
タジマコヘイも、性犯罪を犯して、
晩年は私の拷問を受け続けたのだけども、
ディックソンは
タジマコヘイへの拷問によって発展し
まさに完成され真髄を極めた
ロウソクやムチや、洗濯バサミや、
電撃や水責めや熱湯プレイだけではない、
BANになるからこれ以上は言えない
”お仕置きボックス”での拷問を
受け続けている
まさに、拷問エリートなの」
アンソニーはようやく立ち上がり、
そして理解した
「そうでしたね、タジマコヘイ氏と同じく、
ディックソン氏も性犯罪者でした。
タジマコヘイ氏が、猥褻物陳列や異物混入などの
あまりにもチンケな小物性犯罪者なのに対し、
ディックソン氏は
獣姦や強姦という深刻度があまりにも違う
超大物性犯罪者...
そして、この大都市において、
性犯罪者であるということは
何を意味するのか、失念しておりました」
スオムはニコリと笑った
その眼鏡がキラリと光る
「そう、思い出してくれたみたいね、
例え、火に巻かれようと、水に深く沈もうと
落雷に貫かれようと、地中に埋められようと、
ディックソンにとっては、それが普通なのよ」