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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
29/114

豚箱にて

タジマコヘイ.チルドレンと呼ばれる連邦


それは、タジマコヘイの森を中心にできた

フロンティアだった


沿岸の大都市と、ハイエルフの都市コンボイト、

モンスター王国、南に広がる農業エリアの

4つが高度な自治権の元に連邦を作っていた


中でも、マナ圧縮炉を持ち、

タジマコヘイ思想を共有した様々な種族が

集まり、平等な市民権を持つ大都市は

この世界でも類を見ない繁栄を遂げていた。


それゆえに、大都市のダークシティーと

呼ばれる区域の、ブラックマーケットには

世界中から様々な品が集結するのだった。

それらの商品を取引するために

取引所が作られ、タジマコヘイによって

ウォール街と名付けられた


そして、ついに、

ウォール街とダークシティーの

大物たちが軒並み逮捕される事件が

起こったのだった。


スロウテルが連れてこられた留置場には、

それら大物たちが集結していたのだった


とりあえず、一時的に被疑者たちが集められる

大牢屋は、周囲を鉄柵で囲まれているが

それは形だけのもので、

その実は、巨大な結界魔法陣の中にあった。


スロウテルは、大牢屋に入れられると、

深々とかぶっていたフードとマントを脱いだ。


豊かな金髪が現れ、ふわりと形を整えていく。

長い前髪の隙間から、アメジスト色の瞳が、

窓際に立つヴァンパイア.ロードの姿を捉えた



「あら、あなたはダークシティーの大ボス、

 ヴァンパイア.ロードのマリー様では

 ありませんか!

 まさか大都市の建設者の一人である

 あなたでさえもとっつかまってしまうとはね、

 奴らも本気なのね」



ゴテゴテとした趣味の悪いマントを羽織り、

窓の外を見ていたマリーは振り向いた



「ん?スロウテルじゃない、あんたのせいで

 私は捕まってしまったのよ!

 まったく、ブラックマーケットの

 管理くらいちゃんとしてなさいよね」



スロウテルは両手を腰に当てて言い返した



「はあ?マリー、私こそ、あなたのせいで

 捕まってしまったと思ってるんだけどねえ。

 大体、ダークシティーの連中の悪事を

 大ボスのあなたが

 抑えなかったせいなんじゃないの?」



お互いに両手を腰に当ててにらみ合う

ヴァンパイア.ロードと、魔族の上位種族を、

ふいに白衣の女性がたしなめた



「これこれ、こんなところで喧嘩をするでないぞ!

 まったくもって、我こそが、

 お前さんたちの悪事のとばっちりを

 受けたのじゃが、

 そんなことを今ここで言い合っても

 仕方なかろうて」



スロウテルは驚きに目を見張った



「まさか大賢者ルールリラ様、

 マナ圧縮炉の最高責任者である

 あなたも捕まったの?

 

 大都市の建設者が二人も留置場にいるなんて!

 ああ、こんなスキャンダル、

 あのクソジャーナリストどもが大喜びだわ」



黒っぽい銀髪のヴァンパイア.ロードのマリー、

金髪に頭の両側から形の良い角を生やした

魔族の上位種族スロウテル、

そして、ピンク色のふわりとした髪の

大賢者ルールリラ


この3人の美女たちは、しばらく

お互いのせいにして言い合っていたが

やがて、取っ組み合って喧嘩を始めた


他の収容者たちが、迷惑そうに

隅っこに退避している


やがて、大牢屋を警備していた警官たちが

敬礼をして道を空け、

メガネをかけたハイエルフの女性が

こちらに向かってやってきた。


鉄柵越しに、

収容者たちが小さく驚きの声をあげた



取っ組み合いをしていた3人は、彼女に

気がつくと、一斉に向かってきた


鉄柵越しに3人と1人は対面したのだった



「ちょっとスオム、これは一体

 どういうことなのよ!

 大都市の建設者の一人にして、

 タジマコヘイ一行の一人であるこの私が

 なんでいきなり逮捕されなきゃならないの?」



鉄柵を両手で掴んで、ワサワサと揺らし、

その目に怒りの炎を赤く灯したマリーが言った



スオムはため息をついた



「マリーに、スロウテルさんに、

 ルールリラまでも逮捕されたなんてね...

 裁判所が捜査令状と逮捕状を

 大量に発行したのよ、

 証拠隠滅の恐れがあるから、

 こうして一斉にね。

 タジマコヘイ憲法の三権分立によって、

 司法の決めたことには、

 こちらでも手出しはできないわ。


 まあ、彼らは彼らなりに責務を

 淡々と果たしているだけだから、

 非難をするつもりはないわ」



マリーの頭の中に、

鳶色の髪の裁判官の姿が浮かんだ。


彼女たちは、タジマコヘイの遺した法の精神を

忠実に守っているのだ



ルールリラが腕を組んで言った



「まあ、あのタジマコヘイですら、

 この大都市の法に触れた時は

 逮捕されたわけじゃしな。

 我やマリーのような大都市の建設者の一人

 であろうと、例外は認められんのじゃ。

 とにかく、我々にどのような容疑が

 かけられているのか

 スオムよ、改めてそなたから聞かせてくれい」



この大都市の市長であるスオムは、メガネの淵を

少し触ってから言った



「ジーマは性犯罪だったけど、あなたたちは

 違法取引の容疑ね。

 取引が禁止されているモンスターの生体が

 この大都市で取引され、大魔法の使用を

 可能にするマナ結晶も

 マナ圧縮炉から違法に流されている。


 さらに、生体が流れている先が

 地上界らしいのよ

 だから、ここまで大事件になったのね。


 このタジマコヘイ.チルドレンだけでなく

 この世界の種族のほとんどの政府が

 協定で、地上界への非干渉を

 取り決めているから」



スロウテルが言った



「なんでも手に入ると言われている

 ブラックマーケットでも

 私は、人身売買は絶対に許してないわ。

 タジマコヘイ憲法の精神と、

 私自身、そういうの大嫌いだから...

 でも、モンスターの生体や、卵なんかは

 グレーゾーンかもね...」



マリーが言った



「うう、もしかしてダークシティーの

 ボスたちの中で裏で暗躍

 したのが居るのかも。

 地上界にこの世界のモンスターたちを

 持って行って

 何をするつもりかなんて決まってるからね」



ルールリラが言った



「ダークシティーの犯罪組織が、

 ブラックマーケットで生体売買を行い、

 マナ圧縮炉で生産される

 マナ結晶を使って、容易に大魔法のゲートを

 発動させておるのじゃな。

 うむ、我ら三者に疑惑が及んだのも

 そういうことなのか」



やがて、4人の女性たちの会話は、

自分たちをしつこく追いかけてきた

コンボイト.ジャーナルの報道記者たちの

傍若無人ぶりに対する愚痴になったのだった。

 

 

 

 


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