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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
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捕虜

さすがに捕虜を取らずに敵を皆殺しにするほど

殺伐とした世界ではなかった。


敵対する以前から、人間たちの王国と

魔族たちの勢力の間には、

様々な協定が結ばれており、

もしも敵対した場合の捕虜の扱いなども

その一つだった


戦闘の一発目に、マックスに向かって

回転ジャンプをかましたコボルトをはじめ、

ディックソンと首を絞め合っていたゴブリンなど、

運よく生き残った低級モンスターたちは、

大体が現地招集の連中だ。



「こいつらは、村の村長に処置を任せよう、

 もしもこの村に対して酷い行いを

 していなかったのなら

 お前たちは許されるかもしれないな」



人間側に下り、従順になった

コボルトとゴブリンは、

それなりに使い道はある。


彼らは、人間側と干渉しない森の奥に、

今まで通り住まうことを

許されるかもしれない。

その存在を把握できて、連絡も取れる隣人が

居ることはそれなりにメリットがあるのだ。



「問題は、この二人の魔族だ。

 王都に連行することになるだろうが、

 現地での俺たちも、彼らを尋問する権限はある」



ゴブリンとコボルトの捕虜の集団は、

駆けつけてきた村人たちに監視されている。


少し離れたところで、

ウォーヘッドたちと、ハイエルフたちに囲まれ、

二人の魔族は地面にヘタりこんでいた。


マックスは、彼らを見下ろしていた。


一人は、魔族の魔術師の女性だ。

セリスによって肩の傷は治癒されたものの、

腫れ上がった頬と、鼻血の跡はそのままだった。


褐色の左右に分けたセミロングの髪と

緑色の肌、緑色の瞳を持っていた

そして、額から角のような突起物が

一本ニョキっと生えている

魔術師らしく、ゆったりとしたローブを

纏っており、魔族特有の刺繍はそれなりに

美しかった


もう一人は、魔族の指揮官の男性だ。

やはり腫れ上がった頬と、鼻血の跡がある

手入れされ、オールバックにした黒っぽい髪、

青い肌、青い瞳、頭の両脇に短い角が生えている

顎の下に、ひと房の髭が伸びている

指揮官っぽい、黒いマントと貴族的な

服装だった。


そして、指揮官はあからさまに不貞腐れていた。



マックスは問うた



「さて、お前が指揮官だろう、

 聞きたいことがあるんだが」



指揮官は返した



「”お前が指揮官だろう”じゃなくてさー

 見れば分かるやん」



マックスの眉がピクリと動いた



「指揮官なんだな、それでは答えてもらうぞ

 あの昆虫のことなんだがな」



指揮官は返した



「”あの昆虫のことなんだがな”じゃなくてさー

 どの昆虫だよ、そちらはわかってるつもりでも

 こちらには伝わらねーよ」



マックスの頬がピクピクと引きつった



「お前たちの部隊の、数マイル前方に居た

 5匹の昆虫軍団だ、どこからどう見ても

 この世界の生き物じゃない、

 どこから持ってきたんだ?」



指揮官は返した



「”この世界の生き物じゃない”じゃなくてさー

 そちらは、この世界の生き物の

 すべての種類を把握してんのかよ

 勝手に決め付けるんじゃねーよ」



マックスは拳を握り締めプルプルと震えた



「あの5匹の昆虫、一体、何者なんだ?

 どこに住む、なんていうモンスターだ、答えろ」



指揮官は返した



「”どこに住む、なんていうモンスターだ”

 じゃなくてさー

 だからさー、それがなんなのかそちらは

 分かってるつもりでも

 こちらには全然伝わってねーつの、

 もっとわかりやすく話せや」



マックスの拳が、指揮官の顔面にめり込んだ


魔族の魔術師が小さな悲鳴をあげて

身を縮こませた


顔面から鮮血を吹き出すその指揮官の襟首を

掴み、マックスはさらに数発、ぶん殴った



「いいか、俺の質問にだけ答えろ、

 今度、”じゃなくてさー”を使ったら

 お前を切り刻んでレッドドラゴンの餌にする、

 わかったな」



血と唾液を口から吐き出しながら

指揮官は言った



「捕虜に対する暴行は....」



マックスのパンチが再び指揮官の口を

沈黙させた

霧吹きのように赤い霧を吹き出しながら

指揮官は後ろ向きにぶっ倒れた



「...俺の許可なく勝手に話すな

 俺の質問にだけ答えろ...」



結局、指揮官は知っている情報を全て

しゃべった



マックスは腕を組んで言った



「なるほど、やはりキオミ、君が

 言ったとおり、あの昆虫は

 あっちの世界から卵の状態で密輸によって

 連れてこられたみたいだな

 

 本当に、君たちが現れて、

 あの昆虫を無力化してくれていなかったら

 俺たちはひどい損害を受けていたかもしれない

 

 でも、この世界とあっちの世界との行き来は

 本来は容易にはできないはずだ、

 膨大な魔力とゲートという大魔法が必要

 となるはずだ

  

 今から数百年も前の、勇者マルスの時代ですら

 あっちの世界からこちらにやってきた例は

 数少なかった。

 勇者マルスの仲間になったヴァンパイア.ロード

 が一人と、魔王本人と、その部下数名だけだ。

 

 でも、今や、あの昆虫にしても、そして

 ディックソンともう一人の

 移転魔法陣のハイエルフも

 あっちの世界から来たんだろ?」



ディックソンは人間の言葉を理解できないため、

ボーっとして虚空を見つめている



キオミは答えた



「ええ、当時はそうだった。

 勇者マルスの仲間になった

 ヴァンパイア.ロードも、

 勇者一行に召喚された風を装って、実は、

 あっちの世界のヴァンパイア.ロードたちに

 よってゲートの魔法でやってきたね、

 魔人たちに対抗するためにね。

 

 でも、時代は変わった、

 大魔法であるゲートを簡単に

 使用できるほどの魔力を

 あっちの世界は手に入れたんだ

 

 マナを工業的に利用することによってね」



キオミは、ディックソンやアンソニーが

この世界に来た方法については話さなかった

ハイエルフだけの秘密なのだ。



(でも、これからの魔王と人間との戦いにおいて、

 密輸されたあっちの世界の怪物がどんどん登場

 してくる、それに関しては秘密にはできない)



そう、公正取引委員会も、

人間たちと手を結ぶしかないのだ



  

 







 




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