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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
22/114

迎撃  (挿絵付き)

村長の家にある物見櫓の上で、数人の村人たちが

戦場を観察していた


徐々に黄金色に染まっている初夏の

麦畑のさらに向こう側で、

ウォーヘッドたちのチームと、一頭のドラゴンが

ズラリと横並びに整列していた


村長が言った



「あのドラゴンは味方だったようじゃの、

 矢を射かけるなんて

 悪いことをしてしまったのう

 それにしても、一体、何が起こっているのか

 こちらにはチンプンカンプンじゃわい

 いつの間にこんなに人数が増えたのじゃろう?

 それに、火の中で平然としてる人影が見えた

 ような気もするわい」



村人のひとりが答えた



「わしらが加勢しなくて良かったかもしれん

 わしらだと状況が把握できなくて

 ひたすら混乱しておっただけじゃろうて」



さらにもうひとりが答えた



「それに、あのお方たちは麦畑を気遣って、

 村の淵で戦ってくれているだ

 ありがたや、ありがたや」



黄金色に染まりかけた麦畑を揺らして、

心地よい風が、村人たちの頭髪と、

村長の頭皮を優しく撫でるのだった



/////////////////////////////////////////////



チームアルファと、チームブラボー、

チームチャーリーが横一列にズラリと並んでいた

さらに、成り行きで

こちらに加勢することになった

ハイエルフの2人も加わっている


チームブラボーの弓騎士カールソンの馬が、

竜騎士ストゥーカのレッドドラゴン、ボケコラに

対してちょっかいを出していた


脇腹を鼻の頭で突く馬に対して、

ボケコラは長い首を回して、

その大きな口から牙をむき出しにして

威嚇している


すでにハイエルフたちとウォーヘッドたちは

自己紹介を終えていた


キオミはフードを脱いでいた

マックスはその美しい顔に見とれていた



「へえ、レッドドラゴンを乗りこなすの

 凄いね、ドラゴンの中では気性が荒く、

 頭も悪い、手懐けるのは苦労したと

 思うよ、凄いね」



キオミは、たどたどしい共通語で結構、

無礼なことを言っている


透き通るような金髪は

肩の辺りで無造作にバッサリと切っており

風にたなびいて、細い髪の毛が

左右に大きく羽ばたいている


切れ長の目の中の瞳は、澄んだ空の色だった


馬の首に噛み付こうとしたボケコラを

戒めながら、ストゥーカが言った



「ボケコラはいい子よ、

 最近はキャラを作りはじめて

 クールさを醸し出そうとしているから

 そのうち、頭も良くなろうと

 努力もするでしょう

 私たちにフルボッコにされた頃と違って...」



ストゥーカの言葉を、ボケコラが慌てて

遮った



「ハイエルフの娘よ、我を偏見で判断するな

 我は、彼らの力を試し、そして認め、

 さらに懇願されて協力しておるのだ!

 手懐けられた訳でもフルボッコにされた

 わけでもないぞ」



鼻先から眼窩の上にかけてなだらかに

隆起した厳ついフォルムの細長い頭部、

眼窩に奥まった、鋭い赤い瞳が

ハイエルフのキオミを睨む


ちなみに、ドラゴンの長い首に

手綱を付けることは難しく、

ボケコラも嫌がるため、

ストゥーカは鞍についている取っ手を持っている。

彼らの連携は、乗り手とドラゴンとの

阿吽の呼吸が重要なのだ



もうひとりのハイエルフ、ディックソンは

チームチャーリーのエルフ、リリーベルから

エルフ語で色々と質問されていた。


丹念に手入れされて七三分けにした金髪と

青い目、その口元に柔らかな笑いえくぼを作って

ディックソンは苦笑いしながら

リリーベルの質問を受け流していた


巨漢の戦士ティルクとほぼ同じ背丈の

ディックソンに比べると、キオミは割と小柄で

人間の女性の平均身長くらいだった。


そのキオミよりもさらに背が低いドワーフの

イルガが言った



「そういえばうちの親父、勇者マルスの一行

 だったハイエルフの女性に眼鏡を作って

 あげたんだよねー

 その人って今も元気にしてるのかな?

 伝えられているところによると、 

 この世界を去ってしまったらしいけど

 ねえ、リリーベル、ちょっと聞いてくんない?」



しかし、勇者マックスが言った



「みんな、おしゃべりは終わりだ。

 どうやら刈り取り部隊が到着するみたいだぞ

 もうひと暴れしてやろうぜ」



黙々と聖眼レーダーを発動させていた

セリスが体勢を解いた



「思った以上に数が多いわ、でも、この人数なら

 なんとかなるでしょう。

 B集団とC集団もなんとか敵を

 食い止めたみたいだし

 この攻撃を防いだら戦いは終わるわ」



ウォーヘッドたちは武器を構えた

キオミは、マントからゴソゴソと

大剣を取り出した


クレイモアのような外見の、

刀身の4分の1ほどの根元の部分

に刃がついておらず、

その部分を保持することができる両手剣だった



マックスが感心して言った



「イメージと違って、ごつい武器を扱うんだな」



キオミが答えた



「私は、実家で甘草飴を作るとき、

 いつも大きな釜をかき混ぜてる 

 だから、腕力があるからこういう武器が

 扱えるのさ」 


 

マックスは察した



「なるほど、君は、あの飴を作っている業者

 だったのだな、だから執拗に俺たちに

 飴を勧めてきたのか!商売熱心だな」



キオミは小さく舌打ちした


ディックソンはただひとり、武器も持たずに

両手を腰に当てたまま前方を睨んでいた



「俺は彼らと違って、戦闘能力はゼロだ

 素人なのに、常に最前線に立たされるのさ

 まあ、慣れてるから別にいいけどな」



エルフ語で悪態を付くディックソン



キオミは、リリーベルにエルフ語で説明した



「彼は、変質者で、最強のハイエルフと

 言われているのよ

 戦闘スキルや技なんて無意味とも

 思わせるくらい、力押しでヤケクソな

 チート野郎、大物は彼に任せましょう」



リリーベルが答えた

エルフらしい金髪のストレートヘア、

美しい顔は困惑の表情を浮かべている



「ほんまかいな、素手で立ち向かうとか

 ありえへんがな、

 せやけど、まあ、見といたるわ

 ほんま、あんたらハイエルフっちゅーもんは

 変わりもんばかりやね、ほんま正味の話」



やはり地上界のエルフの方言は

変わっているとしみじみと思うキオミだった




挿絵(By みてみん)

 




 







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