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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
19/114

公正取引委員会2

ボケコラの背中の上に乗ったストゥーカは

振り返って地上を眺めた


空になびく、結んだ長い髪と同じく、

その瞳も赤く光っている。



「チームアルファと、チームチャーリーを挟んで

 敵が合計4体出現、向こうのテレポーターに

 飛ばされてきたのね

 そして、さっき、炎に巻いた

 昆虫たちの背後にも何者かが3体出現したわ。

 敵の応援部隊かもしれない、再び踵を返して

 昆虫たちに炎を浴びせかける」



ボケコラは、空を旋回すると、再び地上に向けて

炎を吐こうとした。

しかし、念話を聞いていたストゥーカが

それを止めた



「攻撃中止、攻撃中止よボケコラ、目標を変更、

 チームチャーリーが二手に分かれて

 対処しているバーサーカーの迎撃に変更」



急いで口を閉じたボケコラの、

ズラリと並んだ歯の隙間から、炎が溢れ出した


吐き出そうとした炎を飲み込みながら、

ボケコラは地上で壁となってそそり立っている

炎を通り過ぎて、そのまま一直線に、

2体のバーサーカーの元へと向かった


槍を構えるストゥーカ



「私はこちらのバーサーカーの相手をする、

 あなたは反対側の応援に回って頂戴、

 それじゃあ、またね!」



ストゥーカはボケコラの背中をポンっと叩くと、

そのままドラゴンの背から飛び降りたのだった



地上では、2体のバーサーカーと

エルフのリリーベルと

魔法使いルーティーが対峙していた


優雅な形の、2本の小型の曲刀をクロスして、

リリーベルはバーサーカーのギザギザとした

剣の刃を受け止めた


隣では、ルーティーが杖で同じく

バーサーカーの剣を受けている



「テレポーテーションを使いすぎて

 魔法が使えないからって

 魔法使いである私を肉弾戦に

 投入するでありますか?

 相変わらずの

 やっつけ仕事ぶりでありますなー」



そう言いつつも、杖で剣を跳ね返し、さらに

バーサーカーの胴体に強烈な杖の突きを入れた


リリーベルが答えた



「最近の魔法使いは、

 物理で殴るのが流行りらしい。

 正直、普通の魔法攻撃よりもあなたは

 物理攻撃のほうが強いように思える、

 泣き言を言わない!」



そして、隙を付いて、

バーサーカーの胴体を曲刀でなぎ払った


ふいに、彼女たちの上空が暗くなった


即座に、上空から竜騎士が降ってきて、

ルーティーの杖の攻撃で怯んだバーサーカーの

背中に槍を突き刺したまま着地したのだった。



反対側では、ドワーフのイルガと僧侶エリーが

やはり2体のバーサーカーと対峙していた


エリーが言った



「メシアの前駆者である私達ウォーヘッドの、

 怒りの鉄棒を受けるのです、

 メシアの天罰をお受けなさい!

 信仰の力を味わうのです」



こちらも魔法よりも物理で殴るほうを選んでいた


ウォーヘッド用の、特別に鍛造された鉄の杖で

ビシバシとバーサーカーを殴っている



イルガが言った



「ほんと、君らの信じる神っていうの?


 基本的に罰を与えようとするよねぇ

 コワいわー


 人間以外の種族は、だいたいが

 信仰する神の慈愛を期待するんだけどさ

 まあ、別にディスる気はないんだけどね」



言いながら、巨大な斧を振り回して

バーサーカーのギザギザの剣を弾いている


エリーは真顔で答えた



「...イルガ、少なくとも私は

 あなたの罪を許します

 

 しかし、不信心者は

 罰せられるのが当然なのです、

 いつの日か、人間である私たちは

 全員が復活して、

 メシアの裁きを受ける運命なのですよ」



ふいに、二人の上空をレッドドラゴンが

急降下してきて、

目の前のバーサーカーの頭を

巨大な両足で掴んだ


トゲトゲの兜のトゲが、トゲよりも硬い

ドラゴンの足の裏の鱗によってボキボキと折れた


頭を掴まれたバーサーカーは、

そのまま空中を飛んでいって

ポイっと投げ出され、

さらに激しい炎がその後を追った


エリーは鉄の杖を両手で掲げて言った。


その杖の先には、

メシア教のシンボルである星がついている



「改心してメシアの下僕の羊となりし

 レッドドラゴンよ、感謝します。


 救世主メシアのご加護と来世での救いが

 きっと、あなたに与えられることでしょう」



ボケコラは、空中をバックしながら、

二人の目の前に着地した。

そして、振り向くと、赤く鋭い目を下からすぼめて

長い舌をチョロっと出しながら言った



「チームチャーリーの僧侶よ、

 私は別にメシアの下僕となった覚えはないぞ

 勝手に羊にすな!

 我はストゥーカの友人として彼女の懇願ゆえに

 君らに協力しているのだ、忘れるな」



かつて、訓練生だったウォーヘッドたちに

フルボッコにされて、

命乞いして助かった過去を捏造する

ボケコラだった。

 


こうして、なんとかバーサーカーたちを

食い止めている面々を背後に、

チームアルファは、目の前の燃え盛る炎の壁を

呆気に取られて眺めていた


セリスが言った



「ねえ、あの外人、何しているの?

 ずっと同じセリフを繰り返しているし

 その意図はなんとか伝わったけど、

 私たちの言葉をしゃべれるわけではないみたい」



マリアンヌが答えた



「ええ、とりあえず、前もって覚えておいた

 セリフをただ、繰り返しているようですわ

 ...炎の中を平然と歩いてきたことといい

 突っ込みどころ満載ですけど、

 一応、敵ではないみたいですわね」



炎の中の外人は、そのセリフを変化させ

相変わらず恐るべき行動を取っていた



「ワタシハ、テキデハアリマセン、オトモダチネ

 ワタシハ、テキデハアリマセン、オトモダチネ

 

 コノ昆虫、ワタシ、イタダキマス

 コノ昆虫、ワタシ、イタダキマス」


 

そう怒鳴りながら、丸まった昆虫の周りを

クルクルと移動し、銀色の金属製らしきワイヤーを

巻きつけている。


気がついた昆虫が、炎の中で丸まった身を解こうと

暴れるが、しっかりと絡んだワイヤーによって

昆虫は丸まった状態から動くことができない


そして、丸まったその昆虫を、

巨大な馬よりも大きなその身体をひょいっと

持ち上げて、後ろに放り投げている


...これで3体目だ...



やがて、燃え盛る炎は、鎮火を始めた。









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