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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
14/114

世界樹の葉2

湖のほとりからすこし離れた岩影に、

楽団がいた。


指揮を取っているのはごま塩頭のジェネラル、

そして歌手は、チームエクスレイの

踊り子マリアと、俳優のハーディス、

弦楽器を奏でているのが、

同じくチームエクスレイの

吟遊詩人ジョルジュだった。

すこし離れたところで、手持ち無沙汰の

テレポーター、パイソンが一人で

情熱的な一人踊りをしている。


指揮を取りながら、ジェネラルは一人つぶやいた



「うむ、ウォーヘッドの極意である

 愛の力に目覚めるとはさすがだ諸君、

 こればかりは教えられて身につけられる

 ものではない、自力で気が付く必要があるのだ

 しかし、その難題すらも

 安々と乗り越えたようだな」



ウォーヘッドは、人類が神々に与えられた恩恵を

発現させるものだが、それは人によって様々だ。

チームエクスレイは、特殊な恩恵を発現させた

メンバーによって成り立つ


踊り子のマリアは、あらゆる歌や踊りに秀でており、

それらは周囲に補助魔法のような効果をもたらす

さらに、戦闘舞踊という踊りによって、実戦に

おいても強力なアタッカーとなりうる


俳優のハーディスは、任意の者の能力を

まるごとコピーできる。

ウォーヘッドの仲間たちならば、誰にだって

なることができるのだ

さらに、敵である魔族であっても、一部、その

能力をコピーできると言われている


吟遊詩人のジョルジュは、楽器を武器として扱う。

マリアの踊りと同じく、

その楽器から奏でられる音色は補助や回復、

さらに攻撃にも使用できるのだ


テレポーターのパイソンは、唯一無二の強力な

テレポーテーション能力で、

チームエクスレイのメンバーを、

彼らを必要とする最前線のパーティーの元に

一瞬で送ることができる



ウォーヘッドのパーティーにとって最強の助っ人、

それがチームエクスレイだった。


そして、今は彼らはその存在を悟られないために

魔力を一切使っていなかった

つまり、美しいソプラノやテノール、

弦楽器の演奏は彼らの地力によるものだった。


それでも、彼らの奏でる歌声と演奏の力は

最上級であり、若きウォーヘッド訓練生たちの

心に、愛を目覚めさせるに十分すぎるほどだった。



//////////////////////////////////////////////



勇者マックスは思い出から醒めた。

隣りの聖女セリスと魔法使いマリアンヌを

見ると、まさに同じ思い出から醒めたところ

なのがわかった


マックスは懐からゴソゴソと平べったい

皮製の入れ物を取り出し、さらに中から

世界樹の押し葉を取り出した


あの時、クローディス大公の股間から

直接頂いた世界樹の葉、


マックスは世界樹の押し葉を顔に近づけ、

そのかぐわしい香りを胸いっぱいに吸い込んだ


その光景を見ていた村長が言った



「ほう、これは世界樹の葉ですな、

 西方のルーンの国々から来られた

 あなたがたがお持ちとは珍しい。

 東方に住む我々ですら目にする機会は

 滅多にございません

 こうして、年月を経ても、この葉に宿る

 不思議な癒しの力は消えることはございません

 

 ここよりも遥かに東の大森林の中に

 世界樹の小さな群生があるらしく

 そこには伝説の種族であるハイエルフが

 住んでいるとのことです

 おそらく、あなたがたも戦いの旅の末に

 彼らと出会う機会があるかもしれません」



マックスは、かつてクローディス大公の股間に

直に貼り付けてあった、その世界樹の葉の

かぐわしき香りを再び胸一杯に吸い込み、言った



「この世界樹の葉の香りは、いつでも、

 我々を大切な思い出の場所へと帰してくれます

 それだけではなく、やがて我々が

 たどり着くであろう未知の土地への

 ワクワクとした想いを喚起させてくれるのです

 

 村長どのがおっしゃるとおり、いつかは

 我々は、はるか東方の伝説の世界樹を目にし、

 ハイエルフとも会うかもしれませんね」



隣のセリスが言った



「かつての勇者マルス一行が世界樹を救った

 おかげで、ハイエルフたちも人間にたいしては

 親和的になっています

 まあ、はるかな距離を隔てているので

 私たちが簡単に会えるほどではないけども

 魔王の脅威がこうして全世界を覆っている以上

 彼らも私たちに協力してくれるかも

 しれません」



マリアンヌも言った



「ええ、父上が世界樹の葉を手にいれていた

 くらいですし、ハイエルフたちも

 無関係とは思っていないでしょう

 ドワーフやエルフたちはすでに

 私たちに協力してくれています

 私たちは、戦いの中でも

 頼もしい味方を得ていくことでしょう」



マックスは、セリスとマリアンヌを見つめた


二人共、特別な素材で作られた高価な衣装を

身にまとっているとはいえ、長い旅と戦いで

それらはくたびれている


ふいに、村長の家のドアを開いて

大柄な戦士が、スワンプドラゴンの尻尾の肉を

抱えて入ってきた



「よう、遅くなってすまん

 これはブラボーからのおすそ分けだ!

 俺たちだけでは食いきれないので

 村の人々で分けてくれ

 燻製にしたり、干し肉にしたり

 塩漬けにするってのもいい

 でも、今日は新鮮な肉をステーキに

 して皆で食おうぜ!!」



切り分けされた、丸太のような肉を

ドスンと、目の前に放り出され

セリスとマリアンヌは次々と苦情を

言ってきた


そんなこと構うことなく、

戦士ティルクは、ニンマリと

笑ったのだった


 


 

 


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