エピローグ4 (挿絵付き)
隔離界の中央大陸の北西部にある
タジマコヘイの森
大陸の西半分を覆う世界樹の大森林から
ポツンと外れたこの世界樹の森は、
今や世界で一番活気に溢れた場所だった
タジマコヘイ.チルドレンという
大都市を中心とした連邦がそこにあり、
性犯罪マウスのマックスは結局、自首して
キオミによって連れてこられたのであった
大都市の記者会見の会場には、
今や大勢のジャーナリストや
群衆が集まっていた
長テーブルの上に、ミニチュアサイズの
椅子が据え付けられ、
その上に鎮座するのは体長15センチ程の
黄金色のげっ歯類
すぐ後ろに、告発者という種族の
髭面の弁護士が座り
さらに左右に魔人の警察官が二人、
直立不動で立っている
魔人、それはヴァンパイア.ロードや
魔族の上位種族をも凌ぐ世界最強の種族、
その目は爛々と光り輝いている
地上界において目にすることはまずないが、
隔離界ですら希少な彼らの存在は、
もはや性犯罪マウスが
大都市の法の裁きから逃れることはできない
ことを皆に印象づけていた
カメラがマックスマウスにズームしていく
ズームされたその顔は、まるで
不貞腐れているかのようだ
ふいに、マックスマウスは
カメラのほうを向いて
ニカっと凄まじいまでの笑みを浮かべた
大きく広げた口の中には
2本の隣り合った長い歯が、それぞれ上下から
にょきっと伸びている
青一色の目の中に、知性を灯す
黒い瞳孔が出現していた
目の形は、ニヤリと大きく開いた口によって
下から押し上げられ、
いやらしい三角形になっていた
そして、一瞬にして元の仏頂面に戻る
マックスマウスは、目の前に群がる
ジャーナリストたちの中に
見知った顔を二人見つけた
一人はマイクを持って構えており、
もう一人はカメラを抱えている
そのマイクを持つ女性ジャーナリストが
マックスマウスに質問してきた
「マックス、あなたは地上界だけでなく、
この隔離界においても
最大級の栄誉を称えられている英雄です!
そんなあなたがなぜ、
こんなちんけな性犯罪なんかを?」
ジャーナリストとしては珍しく
感情的な口調で
しごくまっとうな質問をぶつけてくる
....まあ、無理もないだろう
マックスマウスは答えた
「あるいは、それは
表現の自由に対する冒涜か。
純粋無垢なる追求心に対し、
倫理という名の愚かな恐怖が
愚民どもを覆いつくしている
とでも言うのだろうか!
だが、それは恐るべき
損失となるであろう...
俺を裁くということによって
お前たちは何を失うのか見ておるがいい」
別の知らないジャーナリストが
怒り心頭で言った
「あなたは全く反省をしていないように
見えますが、私自身を含め、
ここに集まっている人々の失望を、
あなたはどうお考えなのですか」
マックスマウスは言った
「はいっ、全然反省してませーん!!
え、映画の感動を返せって?
知るかよ、俺はエロ動画を望む人々に
感動を与えたんだぜ、なに怒ってんの?
アホかとバカかと」
弁護士が、マックスマウスの前に
手をかざしてその姿を隠した
「ええっと、彼は唐突に
このような場に出されて興奮しており、
発言は本心ではありません。
以降の質問は私が代わりに....」
しかし、弁護士はかざしていた手を
飛び上がらせた。
マックスマウスがその手に噛みついたのだ
記者会見はめちゃくちゃだった
群衆のブーイングが会場の空気を
大きく震わせた
ふいに、群衆の中から、
一人のハイエルフの男性が
大声で叫びだした
マックスマウスにとって、
その男はかけがえのない友人であった
男は、ブーイングをかます群衆に対して
大声で悪態をついている
しかし、警官たちが群衆をかき分け、
その男を会場からつまみ出した
マックスマウスは、大勢の警官たちに
がっしりと掴まれて退場させられていく
ハイエルフの男性に対して
片手を上げてウインクしたのだった
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罵詈雑言が飛び交う記者会見場の中継を、
ノヴァは投影映像で見ていた
その隣には、ハイエルフのキオミがいる
性犯罪マウスを隔離界に送り届けた後、
キオミはすぐに地上界に戻り、
さらにマックススターに戻ってきたのだった
やはり、独りぼっちのノヴァが気になったのだ
キオミは言った
「マックスやあなたと違って、
私は隔離界の各種族の共通語が
あまり分からないけど
でも、まあ、マックスが
悪態をついているってのが
はっきりと分かるわね」
ノヴァが言った
「ええ、マックスは大都市の
性犯罪者矯正施設に入って
お仕置きボックスの刑に処されると思う
タジマコヘイや、ディックソンや、
ハイマンだけでなく、マックスまでも
性犯罪で摘発されるなんて
ほんと、性犯罪者矯正施設は
大都市の黒歴史そのものね」
淡々と告げているが、ノヴァの姿は
心なしかやつれているように見える
近未来風の衣装に身を包み、
エキゾチックな黒髪と深緑色の瞳の
人間の少女
その隣には、カジュアルな服装で
肩の辺りでバッサリと切った金髪に
空色の瞳のハイエルフの女性
2人は、しばらく一緒に
マックススターで
過ごすことにしたのだった
キオミが微笑みながら言った
「でも、私は、今のマックスは
以外と嫌いじゃないわ
なんだか、本当に肩の荷を下ろして
自由にしている感じがしてね。
私までも、どこか自由になった気がするの
マックスが性犯罪者矯正を終えて
帰ってくるまでに、
彼がびっくりするくらいここを
素敵な場所にしてあげましょうよ」
ノヴァが答えた
「ええ、キオミさん、
あなたのコーディネイトに期待してるわよ
マックスが戻ってきたら、
3人で星海への探検に出かけましょう、
きっと驚きの連続が待っている」
投影映像を見つめながら、
二人は笑みを浮かべたのだった




