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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
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風呂覗き

美しい黒髪と緑色の澄んだ瞳、

水が弾けるような肌はほのかに火照っている。

かつてマックスの知っていたセリスとは

違う美少女がそこにいた


並んで身体を洗っているのが、

栗色のウェーブした優雅な髪と、

切れ長の瞳、白磁のような肌のマリアンヌ、

貴族出身らしく立ち振る舞いの一つ一つが

どことなく洗練されていた


ぐったりと広い湯船に浸かるのが、

赤色のまっすぐな髪を後ろで束ねた

長身の美女ストゥーカだった

間違いなく3人の中で一番発育がいい


女子用浴場を囲むようにそそり立つ崖の上には

岩の窪みにすっぽりと身体を収めた

ステルスマックスと

へばりつくトカゲのような格好のボケコラがいた



「ああーたまんねえー俺も入りてえよー

 たまんねーぜ」



鼻息荒く、レッドドラゴンのボケコラが言った。

興奮してる感じのボケコラを、

困惑した顔で眺めるマックス、


ついにボケコラが行動を起こした


マックスの額に一筋の冷や汗が流れた


体重で崖の頂辺の岩をガラガラと崩しながら

レッドドラゴンの巨体が女子風呂に侵入したのだった


3人の少女は驚きを込めて目の前の光景を見つめた


崩れ落ちる岩の破片とともにこちらに向かってくる

レッドドラゴン



「あ、ボケコラ、またほっつき歩いてるのね」



セリスが呆れたように言った

立ち上がったマリアンヌも、座り直した



「王都の人たちもボケコラの放蕩に

 すっかり慣れてしまったようですわね、

 本当に自由すぎるドラゴンですこと」



湯船に浸かっていたストゥーカが

立ち上がって言った



「ちょっと、ダメじゃないかボケコラ、

 浴槽に沢山、石ころが入ってしまったよ」



ボケコラは構わずに、広い浴槽の中に、

その巨体をドブンっと沈めた



「めんごめんご、気持ちよさそうに

 湯に浸かる姐さんたちを見てたら俺も

 やりたくなってきてよー

 ちょいとお邪魔しまっさい」



ごく自然の成り行きのように、

3人の少女と共に湯に浸かるレッドドラゴンを、

岩影に隠れながら見つめるマックス


長い首を伸ばし、まるでワニのように

水面から鼻先を出し、大きな翼を

45度の角度でめいっぱい上空に伸ばして

長い尻尾を嬉しそうに振るレッドドラゴン



セリスとマリアンヌとストゥーカは

やれやれと言った風に

その巨体をゴシゴシと洗いはじめたのだった



BANされる基準が不明瞭なので、

全裸の3人の少女がどうやって全身を使って

ボケコラを洗ってあげているのか

明確な描写は避けるが、

その光景を指を咥えて見守っている

マックスの表情で悟って欲しい


そしてついに、マックスが隠れていた

岩の窪みにヒビが入り、

女子風呂を囲っていた崖が大きく

崩れ落ちたのだった


ボケコラの巨体の移動によって

引き起こされた崖崩れによって

隠れていたマックスと、

さらに向こうで息を潜めていた

カールソンが勢いよく、

湯船に向かって転がり落ちた


女子たちの悲鳴と、

カールソンとマックスの悲鳴が

同時に風呂場に響き渡った



/////////////////////////////////////////////////////



軍司令部の一室にて...



ごま塩頭のジェネラルの前に、

マックスとカールソンが

座って身を縮こませていた


普段は威厳が服を着ているようなジェネラルは

ひどく慟哭していた



「なぜだ、マックス、なぜだ、カールソン

 なぜなんだ?

 女子風呂を覗くなんて、なんでそんなことを!!」



歯を食いしばって、固く閉じた目からは

一筋の涙さえ流れている


普段は微動だにしない、まっすぐな背筋を丸め、

その肩を震わせて、ジェネラルは泣いていた



「誇り高きウォーヘッドたる君たちが

 なんてことをしたんだ!

 私はこれほど悲しんだことは久しく無かった

 女子風呂を覗くなんて...覗くなんて..

 なんてことを!」



マックスはいたたまれない思いだった

何よりも、あのジェネラルを

これほど悲しませたことが

身を切られるよりも痛かった

マックスの隣りでは、カールソンが俯いて

肩を震わせている



しかし、ジェネラルはふいに真顔に戻って言った



「なーんてな、ぶっちゃけ、君らが女子風呂を

 覗いただの覗かれただの、私にとっては

 クソほどどうでもいいことだ」



「は?」



マックスとカールソンは、同時に間抜けな声を

出してしまった



一瞬にして、いつもの威風堂々たる司令官に戻った

ジェネラルは淡々と言った



「まあ、マックスに関しては

 セリスもストゥーカも

 君を擁護してくれている。

 二人とも君に対して恩義を

 感じているらしいな

 しかし、問題はマリアンヌだ

 彼女はどうも腹の虫が収まらぬらしい

 私としては、形式上でも君らに罰を与えねば

 ならぬ

 例えば、一週間、宿舎の掃除当番とか...

 それはそれで解決したとして、

 君ら二人とも、直接、

 マリアンヌに謝罪したまえ」



マックスがおずおずと言った



「しかし、ジェネラル...

 マリアンヌは私とは顔も合わせたく

 ないのではと思います

 訓練所で教育を受けさせて貰い、

 それなりの作法を身につけたとは言え

 私は元村人...

 高貴な生まれのマリアンヌにとって

 私のような者に風呂を覗かれ

 ひどく心が傷ついていると思われます]



しかしジェネラルは言った



「勝手に彼女との間に壁を作っているのは

 君のほうではないか?

 生まれの貴卑など関係なく、我々は

 等しく選ばれし者、ウォーヘッドだろう

 自分から歩み寄るのだよマックス

 

 私からの命令だ、マリアンヌに

 謝罪して、彼女とじっくりと接する

 機会を作りたまえ

 やり方は自分で考えるのだ」



マックスとカールソンはつい、顔を見合わせて

しまった

 








 

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