わらしべ長者さや先輩。
大神課長にクリーニング取りに行く件を相談すると今すぐ行きなさいと言われてしまい、しぶしぶオフィスを出る。
行かないなら人をつけるとまで言われてしまえばそうするしかない。
千佳ちゃんに言うと、当然ですよ!!とぷんすかされてしまった。
水卜さんに教えてもらったクリーニング店に向かう。
会社からも程近く、なおかつ丁寧に早くあげてくれるところらしい。
営業部は一課も二課もどちらもロッカーに着替え用のスーツを最低一着はいれておくって聞いてたけどちゃんと貸してもらえて助かった。
先週、トイレから出た所で丹波君と富久山君が件のお得意様と遭遇したと聞いたときは驚いた…
富久山君の引きの良さをなめてました。丹波君がちゃんと挨拶して、それにつられてくれたから良かったけれど。
丹波君って色々そそっかしいけれど挨拶は本当に良くできるのよねぇ。
ちなみに磯崎君のスーツはけっこうなブランドモノだった。さすが社長の御子息なだけある。
スーツを受け取り、オフィスに戻る。
受付の前を通り掛かったときに、受付嬢から声を掛けられた。
「あっ、あの!!穂積さん!!」
「え、は、はい、何でしょうか?」
「ちょっと待ってください、あのあの…」
ガサガサと何かを探しこちらにやって来る。
「あのこれ!よかったら使ってください!」
差し出されたのは可愛くラッピングされた袋。
「え、あの、なんで…」
「先週倒れたって聞いて…
穂積さん、覚えてないかもしれませんけど…私がひどい生理痛で廊下でうずくまってたとき声を掛けてくれて…痛み止めと貼るホッカイロとチョコレートくれたのがすごく嬉しかったんです。
これ温熱シートと、おすすめの入浴剤です。使ってください!」
思い出した、丁度人気の無い廊下でうずくまっていた可愛い子だわ。この前の冬、遭遇して丁度持ってたものを押し付けてしまったけど感謝される事態になるとは思いもよらなんだ。
もらうほどのことはしてないけど…受け取らない方が失礼かと思ったのでありがたく頂戴する。
「ありがとうございます。大事に使わせてもらいますね。
覚えてますよ、その後大丈夫でしたか?」
尋ねるとカアッと頬を染めて頷く受付嬢ちゃん。
「バッチリです!あの、私、紫苑みゆきって言います。またお話させてもらっても良いですか?」
「紫苑さんですね、改めまして穂積さやです。
かまいませんよ、受付嬢さんとお話できるの楽しみにしてますね。」
「あ、ありがとうございます!では、あの、また!また必ず!!」
念を押して受け付けに帰っていく。
可愛らしい子とお知り合いになれちゃったわ。
楽しい気分でエレベーターに乗り、営業部へ。
行く道々、何故かよく声を掛けられお見舞いと称して色々もらう。えっ、持ちきれないんですけど…
ギリギリのバランスで営業部に辿り着く。
「あ、開けられない…」
片手にスーツ、片手にギリギリの状態で盛られた差し入れ達…
ドアを開けられずに途方にくれてるとぶふっと吹き出す声が聞こえた。
「なにやってんの、さやちゃん。
はい、どーぞ。いやぁ…もりもりに盛られたねぇ…スーツ持つね。」
振り返れないけど誰だかわかる。
「ありがとうございます…
というか水卜さん…私が倒れた件なんで知れ渡ってるんですか…?広めました?」
「え?俺は営業のやつらにしか…あ、秘書課の美人さん方は知ってるぞ?
みっちゃんの報告書ついでにあげたし。」
それでか…!!
「まぁ、聞いた連中が誰かに、その誰かが…って感じでねずみ講のような広がり方したんじゃないか?
後ね、俺が広めようと思って広めたら朝からみんなに詰め寄られると思うけど?」
「怖い。そんな目立つことしたくない。」
「さやちゃんは奥ゆかしいねぇ。」
なんか違うと思います、水卜さん。




