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勝てない人。

「先週は大変だったのに在宅ワークですまなかったね。」



朝礼の後にすまなそうに大神課長がみんなに言う。

大神課長のせいじゃないつーか、樋口部長からはその件について何も無かったのに何故ゆえあなたが謝罪の様なことを口にするのか…

ちなみに樋口部長は上からお呼びがかかったそうで、連絡事項をさっと言って消えた。ちなみに水海道さんが約束させた穂積さんへの謝罪はまだ無い。本当に…本当に…なに考えてんだよ…



「穂積さん、体調はもう大丈夫かい?君、前はよく無理しすぎて夏の終わりに必ず熱出してたろう、無理は本当にしないようにね。」



そうして穂積さんを労りつつも、がっちりと大神課長が釘を刺した。

というか、穂積さん毎年夏の終わりに体調崩してたのか?!



「はい、ご心配おかけしました。これからは無理をしすぎずみなさんを頼ろうと思います…

あ、あとですねここ何年かは夏に寝込んではないですよ。」



お、言い返してる。

すごーくにっこり笑って大神課長が言った。



「夏には寝込まなくなったの間違いだろう?

連休前にとか週末に体調不良になることはけっこうあったろう。知っているんだからね?」



「え…気づいて…」



「やっぱりかね。ダメじゃないか穂積さん。」



「あっ!カマかけましたね?大神課長…!」



「みんなー、穂積さんは無理させると体調崩すから無理させないように。まぁ、全員がだけどね。

八月にも入ったし、皆体調崩さずに夏期休暇入れるようにしようね。」



諸先輩方は笑いながらも了解しましたとの返事を返して始業となった。

なんか、穂積さんが転がされてるの珍しいというかほほえましいというか…

なんだろう、ほんと同じ人間なんだなって思う。



「そういえばその髪留めよく似合ってるよ、穂積さん。これからもつけてきたらいいと思いますよ。」



大神課長も気付く変化だった。





★★★★★





「大神課長、早めに仕事を開始しますので昼休みを少し前倒しでとっても構いませんか?

クリーニングを取りに行きたいので。」



丁度、大神課長に仕事内容を確認していたタイミングで穂積さんがやってくる。後一時間ほどで昼休憩だ。

そういや、富久山がスーツをクリーニングする意味がわからない的なことをほざいて、指導者として樋口部長以外の名前をあげないようにする代わりに穂積さんが代表してクリーニング出す話になってたな。



「どういうことかね?」



穏やかに大神課長が問いかける。

穂積さんは少し言葉を探しているようだった。ならばと俺が代わりに説明した。

大神課長は少し目をつぶった後、深く深~く溜め息をついた。



「穂積さん、急ぎの仕事ないならば今からでも行ってきなさい。君の休み時間を削ることはないよ。」



「いえ、でも…」



「いいから。ね?

それで帰りに営業に寄って返してきなさい。クリーニング代、領収書とりあえずもらってきて見せて。」



「ですが…」



「いいから、ね。はいすぐ行く。行かないなら誰か付き添い頼むよ?」



「分かりました…ご迷惑おかけしますがよろしくお願いします。

行って参ります。」



穂積さんが完全に離れたのを見て、また溜め息をつく大神課長。



「さすがですね、大神課長。」



「本当ならこういうのは樋口部長の役目だけどねぇ…」



遠い目をしている…



「課長も無理なさらないでくださいね。」



当たり障りの無いことぐらいしか言えない語彙力が悔しいな。







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