ほめられると意外とうれしい
ヤバイ磯崎の姿に固まることしばしば…
ハッとした私は尋ねた。
「え、でも今日は富久山に服装についてビシッと言ってましたよ?!」
私の疑問にミトサンが答える。
「徹底的に矯正したからな。」
「え、」
「鈴丼の時は性別違うしな、あまり徹底的にぶちのめ…いや、指導できなかったけど磯ボン同性だし、親父さんと連絡がとれる上、俺の信頼度かなり高かったからな。
そりゃーもう徹底的にやったぞ?」
今ぶちのめすって言いかけけましたね、ミトサン。
私の営業部二日目のミトサンの指導よりはるかに強い指導を受けたのか磯崎よ。
なんか、同情…しないな、うん。このホストもどきはさすがに酷い。因果応報だよね。
「それでミトサンへのあれだけの信頼感を持たせられるってすごいですねぇ」
しみじみ言うと、ニヤリとミトサンが笑った。
「おー?鈴丼だって信頼はしてくれてたろう?俺のこと。」
「まぁ、それは。おっかない先輩ですけど、頼りになるし味方にいればこれ以上もないくらい安心できましたしね…」
そうなんだよね。
色々あったし言われたけど、ミトサンは必ずできるまで待ってくれたし、必要なら全部責任かぶって別な道に導いてくれたり、ポカやってもサポートしてくれたし…今、富久山指導してみて思うけど、ミトサンみたいな指導、なかなかできないよなぁ…
「磯ボンもそんな気持ちなんじゃないか?本心は分からんけどな。
とりあえず、どこにいっても最低限仕事ができるようにするのが俺の役割だ。いつまでもついてやれるわけじゃないしな。縁があって指導することになったんならそのくらいはやっとかないとな。
鈴丼のときは…ちゃんと指導できたの半年ぐらいで、俺は他支店のテコ入れに送られたからけっこう心配だったんだぞ?」
「ミトサン…!」
ちょっと…いや、けっこう感動してますよ私!!!
「なにか取り返しのつかないことしでかして、俺を連座にしないかが。」
「感動返して!!もー!!!」
「はっはっは、半分冗談だ。」
「半分本気なんじゃないですか!!」
「まぁ、俺が抜けた後の半年間…しっかり頑張ったって聞いてたからホッとはしたな。別支店先でもちゃんと仕事できてたようだし、今はさやちゃんの指導でほんと普通になって…やればできる子の鈴木でミトサンは安心してるよ?」
「くっ!なんですかいきなり優しい!!
感謝の印におつぎしますよ!ほらさっさとグラス出す!!!」
とても優しい目で言われて、なんか居たたまれなくなる。
くっそ恥ずかしい!!!でもうれしいですよ、てかその眼差しは反則ですよ!!
那珂先輩からぶんどった高いワインをミトサンに注ぐ。
「さや先輩もどうぞ!!」
現在、私が絶対の信頼をおくさや先輩にも感謝の気持ちをのせて酒を注ぐ。表面張力ギリギリに。
「さや先輩!私の溢れんばかりの感謝を表現してみました!!」
「普通はこうすると良くないけど、並々の美味しいワインなら話は別ね。
千佳ちゃん、想い確かに受け取ったわ。」
グッと親指をたててさや先輩が言うので、私も同じように返した。そして自分にも並々注ぐ。
「鈴木!もったいないつぎ方するなよ!!」
那珂先輩の怒りの声を華麗に無視して、私達は微笑みあってワインを飲んだのだった。




