あっ、これは恋しちゃう!!
ミトサンの目の色で盛り上がってたら、さや先輩がいきなり立って目を見ようと顔を覗きこんだ後に化粧室へと行ってしまった。
え、えええええええー!!!!
さや先輩、見ようによってはキスしようとしたようにも見えてましたよ!!
というか絶対、ただ目を見たかっただけなんでしょうが、あかん!他所でそんなことしたりしたらさや先輩の身が危ない!!
もー、ミトサンだから良かったようなものの…
「ミトサン…?」
目を見開いたまま、固まってらっしゃる…
え、そんな顔はじめて見ましたけど?!数拍後、両手で顔をおおって上を向いてしまった。
耳までというか首まで赤いんですけど?!
えっ、照れてるの?!マジで?!!
取引先の年上美女や年下美女にコナかけられてもしれっと流して契約結ばせちゃうお人なのに!!?
「天然…て…怖い…」
呻くように呟くミトサン。
確かにな。全く計算してないのにミトサンを赤面させるさや先輩…!強い!!
「さやって時々警戒心とかごっそり抜けるときとかあるのよねぇ。」
なんかすごい勢いでスマホに文字を打っていた真城先生が顔を上げしみじみ言った。ついでにまだ顔をおおって赤面してるミトサンをぱしゃりと激写する。
「今のはびっくりしましたね…バーベキューの時もお友達との距離感おかしかったですけど…」
「さや先輩、飲むとしゃっきりモードが下がるから可愛くて仕方ないんですよね。
本人に言うと何言ってるの?って言う冷ための目で見られるからあまり言えませんけど…」
くっ、酔って可愛いさや先輩は私の特権だったのに…思いがけずミトサンにお裾分けされてしまった…!!
「しかしミトサンが照れるなんて…どっか悪いんですか?」
「鈴木よ、お前それひどくないか?」
「取引先の年上や年下美女達に色目使われようがコナかけられようがさらさらーっと流してたのに、このくらいで照れるなんてどこか悪いとしか…」
「アハハ!悠馬、仕事モードだとなんとでもできるでしょうけどこういうのに弱かったみたいね!
うけるわー!
あー、でもねぇ鈴木ちゃん…こいつ意外と女運無いのよ?
遊んでそうに見えるんだけどねぇ。
学生時代は知らないけど…社会人になってからは他社の受付嬢達や社内の先輩と付き合ったこともあったけど、仕事より私をかまってよタイプで出張中にみんな浮気されてふられ、
取引先の社長のお嬢さん紹介された時はうまくいってたんだけど繁忙期でなかなか会えなかったら浮気相手の子ども身籠ったってことで破談になって…あー、そこからフリーね!アハハハハハ!!!おっかしーい!!!」
那珂先輩と私は思わず顔を見合わせ、そしてミトサンを見た。
な、なんにも言えねぇ…
真城先生、全然笑えません。
というかさらっとばらすにはかなり踏み込んだ内容を聞いてしまった。ミトサン、チャラチャラして見えるのに…思いの外、しょっぱい恋愛遍歴ですな。
まぁ、私も大学時代の彼氏に男の幼馴染みがやっぱり好きだから…ってふられて以来フリーなのでちょっぴし親近感。
ミトサンはねえな…と思うのは相変わらずだけど…なんか…可哀想なんで幸せになってほしいなぁ。
「那珂、一本一万越えるワイン頼め。真城女史の奢りだ。」
赤面から復活したミトサンが真顔で言う。
「あらー?悠馬くん怒ったの~?」
ケラケラ笑いながら真城先生が流し目を送る。強いわー
全然効いてませんよ、ミトサン!越えられない壁なんだなぁ、きっと。
那珂先輩は夢見る少年みたいな顔してワイン選んでるし。
寡黙系眼鏡はどこいった?
「ミトサンでも照れたりすんですね~」
とりあえず当たり障りないことを言う。
「鈴丼、あれは俺でも無理だ。
さやちゃん戻ったら、同じことしてもらえよ。俺の気持ちわかるぞ?
とりあえず次されたらキスしていこうと思う。」
「そんなことはさせませんよ、ミトサン?
あ、さや先輩お帰りなさい。」
「トイレも雰囲気あって綺麗だったわ、千佳ちゃん。」
にこにこしながら座ろうとしたさや先輩にはっとして声を掛ける。
「さや先輩、私の目は何色です?」
「え?千佳ちゃんの?どれどれ…」
少し首をかしげて、さや先輩が覗きこんできて…
「これはヤバイ~!!」
思わず声を上げて、赤面したのだった。




