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よろしい、ならば戦争だ。

「樋口部長、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

それにしてもこれはどういう状況なんですか?」



「…その…営業の水卜に潤がその格好で外に出るなと言われて…

服装指導が足りないと鈴木が水海道に注意を受ける事態になった。」



なにその言い方。

水海道先輩とミトサンと私が悪いみたいなニュアンスにも聞こえんぞ。



「千佳ちゃん…鈴木さんはしっかり指導をしていましたよ?

私は何度も相談を受けてましたから…指導しても他の方から色々言われる事も含めて…。

あと、富久山は水卜さんに言われても仕方のない服装だと思えますが?

樋口部長、一緒に過ごすことが多いでしょうに何故注意をなさらなかったんですか。那珂君達には以前あんなに指導してましたよね。」



水海道先輩と同じこと言われてらー

てか、どんだけえげつない指導をされたのか気になるんですけど…

穏健派の水海道先輩とさや先輩があんなに…とか厳しく…って言うくらいだから相当なのかな。



「…俺が潤の服装を誉めたので、それも一因で今日はラフな格好で出社してきてしまったんだ。

けれど今後はきちんと改めるように話して、本人も納得済みだ。」



「今後じゃ遅いって話なんですよ、樋口部長。」



水海道先輩がチベスナ顔から復活して意見する。



「大事なクライアントが今日みえるって話でしたよね。」



さや先輩は私の背をポンポンと叩くと離れ、電話で内線をかけた。



「…もしもし、御忙しいところ恐れ入ります。

穂積ですが…あ、先程はありがとうございました。そしてうちの富久山がご迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません。

ええ、はい、……そういうことでしたか…はい、重ね重ね申し訳ありません。

え、メールで…?少し待ってもらっていいですか、はい…」



一旦受話器を手で覆い、さや先輩が厳しい目を樋口部長に向けた。



「樋口部長…メールチェックなさってください。

大至急の用件で課長より上に連絡が回っています。午前中のうちに知らされたそうですよ。」



おいおい、席移動は11時前には終わってて仕事する余裕、あったよね?

え、なにメールチェックもしとらんの?!正気か?!!



「今、確認させています。

ちなみにどちらの……ええ?!……それは…はい。…ええ。

大変申し訳ないんですがスーツお借りできたりしますか?富久山に。

…ええ。はい、ありがとうございます。丹波を向かわせますので…はい、申し訳ありませんでした。ありがとうございます。」



受話器をおいて、さや先輩は深ーいため息をついた。



「ほ、穂積さん!もう大丈夫なんですか?」



「無理はよくないですよ。できることには限りがありますが、お手伝いできることならなんでもしますから。」



「本当に平気ですか?!」



そこに戻ってきたはいいが、声をかけられずにいた先輩方がどやどやとさや先輩を囲み声を掛ける。



「皆さん、ご心配おかけして申し訳ありませんでした。

席の入れ換えも忙しい中、ありがとうございました。

真城先生のお墨付きももらえて戻りましたので大丈夫です。

それよりも連絡事項があります。

万葉の社長が営業部に訪れるそうです。服装チェック互いにして、もしすれ違うなどしたときの対応も丁寧さをより気にかけてください。

あと、富久山君にスーツ貸してもらえるよう営業部に頼みました。丹波君、申し訳ないけど取りに行ってくれるかしら?」



ま、万葉?!すごい老舗で稼いでる会社じゃないですか!

確かあそこ礼儀とかマナーにとてつもなく厳しかったはず…みんなザワッってなってる。



「わかりました!」



今すぐ駆け出しそうな丹波を止めて、さや先輩が服装チェックをしてあげている。

緩んでいたネクタイを締めてあげている。羨ましいぞ丹波!!

新婚ごっこちっく!!



「走らないで行ってね。まだ間に合うから。

丹波君は礼の仕方がとてもきれいだから慌てないように。足音をあまり立てず、端を歩いて戻ってきてね。」



「了解です!!俺、頑張ります。行ってきます!!」



元気に出ていく丹波。



「富久山君、丹波君がスーツ借りてきたらそれに着替えてね。

お客様が帰ったら、脱いでクリーニングに出して…」



「えっ?!なんで俺がクリーニング行ったりお金出したりしなきゃいけないんですか?別に頼んでないのに…」



「………」



空気が凍った。

え、お前の為にやってくれてるんですけど?!



「…そう。

ふふ、そうね?富久山君は頼んでないわね。結構です、私がクリーニングに持って行きますから終わったらすぐに脱いでください。」



「ほ、穂積…俺が出すから…」



笑顔も無く淡々とさや先輩が言う。

大抵の事はふんわり笑顔で対応してくれるさや先輩がである。激おこやないか!!

そこにたじたじな感じで樋口部長が声を掛けてくる。



「ご心配無く、結構ですので。

富久山君、そのかわりこれからもし別の部署にうつって誰に指導をされたと聞かれても私達の名前は絶対に出さないでちょうだい。迷惑です。

樋口部長に全部教わったと言ってくださいね。」



わおー。さや先輩が攻撃的なのはじめて見ましたよ!!?

私は同じ陣営だからわおーで済んでるけど、逆だったら泣いちゃう。無理!



「では服装チェックしましょうか。

あ、高橋君はオフィス出るときは誰かの背広とネクタイを必ず借りてくださいね?」



そう言って富久山with樋口部長&高橋先輩に背を向けたのだった。












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