できる男です。
「いまいち、怖さが分からないんだが…?」
別なデスクを運びながら那珂先輩が首をかしげる。
ちなみに那珂先輩と丹波が机持ち、私が椅子持ちである。
「水卜先輩は、あれっす。良く言えば粘り強いとか忍耐力があるとかいえますが、めっちゃ執念深いんですよ。
できるまで真摯に向き合う…いいかえるとできるまで許してくれない…マジ怖かったっすよ。」
空気を読めない子の丹波が遠い目をしている。
こんなお気楽な丹波に恐怖を植え付けられるなんてミトサンマジぱなねぇな…恐ろしい子…!!
「それな!丹波や、よく分かるよ。
限界値ギリギリの要求を出して、投げ出しそうになるとちょっと引き上げて笑顔で見守る感じね。
ミトサンと一緒に仕事すると、本気でこいつとはねぇな…ってなりますよ。だからカッコイイ~ってなっても誰もアタックしないんですよ。
まぁ、仕事はできるわサポートもできるわ新人育成もできるわである意味優良物件なのに未だに独身貴族なのには訳があるんですよ。那珂先輩。」
「えげつない評価だなぁ…」
「まぁ、先輩としてはこれ以上無いくらい尊敬してますけどね、さや先輩の次に。
どうします?ミトサンにとりあえず連絡しときます?」
「まぁ、忙しかったら仕方がないが大丈夫なら様子見てもらうか。一応、俺も連絡しとこう。」
そんな話をしていると丹波のアイフォンが鳴りだした。
「あ、水卜先輩からだ。ちょっと出ていいっすか?
もしもーし。」
「許可投げっぱなしは良くない、丹波。」
「ほんとだぞ、丹波。」
「えっと…あー…う…すっ、鈴木先輩!チェンジ!!!」
私達の小言を無視して電話を続けた丹波だかすぐさま困惑顔になりアイフォンを渡してくる。
なんなんだ、一体。
「もしもし、鈴木ですがミトサンに伝えたいことが…」
『鈴丼…さやちゃん倒れたってだけ丹波からメッセージが入ってたんだがどういうことだ…?』
電話ごしなのにヒヤリとする。
お怒りだ、この感じはけっこうお怒りだよ!!なんでだか分からないけど…!!
てか、丹波ゴラアァァァ!!!ホウレンソウしっかりしろよ!!
「うまく説明できる自信無いので、詳しくは那珂先輩が説明します!」
流れるようにミトサンの怖さを知らない那珂先輩に託す。
さすが冷静眼鏡だけあって、那珂先輩の説明は的確かつ客観的だった。
ミトサンは出先なのだそうだが昼頃には帰社するそうなのでさや先輩への伝言と様子見を頼めることになった。
ありがてぇ!!
「良かったですね!」
にこにこと丹波が言う。
その肩をがっしりつかんで那珂先輩笑顔で言った。
「丹波は心得復習しような?水海道さんと俺と一緒に。」
「ええー?!!!」
新しい席にズルズル引きずられていく丹波。
しょうがないよね、相手に分かるように伝えないんだもん。
この隙にと仕事をしつつ、引き出しの整理整頓をするのだった。
ちなみに…席移動が完了した後、樋口部長だけさや先輩がいたゾーンに座らせ20度強風を体験してもらった。
五分も待たずに根をあげて、さや先輩に陳謝することを約束させた水海道先輩の手腕に内心拍手喝采を送ったのだった。




