おやおやもしや
「こんにちはー、真城女史。さやちゃん居ますか?」
愛想よくややチャラチャラしがちな営業部の男…水卜悠馬が入ってくる。
穂積さやは今、休ませてるが悠馬とさやが仲良しな姿が想像できない。
「どこのさやちゃんに用があるの?元気な野郎は帰りなさいな。」
「穂積のさやちゃんにご用というか差し入れですって。
はい、真城女史の分もあるんで一緒に食べましょうよ。」
にこやかに、しかし有無を言わさずさっさと中に入り、テーブルの上に最近話題のキッチンカー提供のスープごはんを置いていく。
すごく並ぶらしいので食べたことがないものだ。
「相変わらず、耳が早いというか…対象が気になるものや欲しいものの情報を得るのがうまいわねぇ…
すごい通り越して気色悪いわ。」
「はは、お褒めにあずかり光栄です。」
「誉めてないわよ…ったく、どこでさやが居るか知ったの?」
「鈴丼…あー、鈴木と豆っ子と那珂から聞きまして。
今、あいつらの課、デスク入れ換え作業してますから戻すのは昼休み終わりの方がいいですよ。
様子見と伝言頼まれたので、ついでに飯もと買って来たんですよ。俺、丁度外回りで戻る途中でしたから。」
「さやの後輩連中手懐けてるんかい…あんたの情報網怖いわ…
てか、わざわざなんであんたが動いてあげるわけ?
こんな女子が好みそうなものリサーチして、帰社途中わざわざ暑い中並んでまで買ってくるって…どんだけさやに迷惑掛けたの?」
「えー?俺は迷惑はかけてませんよ、高橋や樋口部長さんじゃないし。
買ってくる理由はありますよ。真城女史、理由聞きたいですか?」
ものすごく良い笑顔で悠馬が言う。
こいつは親友の甥っ子だ。
親友はハーレクインも目じゃない大恋愛の末に海外へ。それと入れ違うように甥の悠馬が入社してきた。
昔はハーフかよ!というくらい色素が薄めで天使のようだったのに、入社する頃はチャラさが備わっていた。なんかがっかりした。
見てくれで散々からかわれてきたり頭髪検査とかで理不尽な目に合ってきたせいもあるんだろうなぁとは思わなくもないが…チャラチャラ過ぎるなぁと思いつつそれとなく見守っていた。
ただこいつ、調子こみのチャラ男手前で終わらずに実力をじわじわとつけ…今では居なくてはならないといわしめる程の男となった。
軽いのりとフレンドリーさに騙されてはいけない。
小さい頃から知っているから分かるが、本質的に執念深く狙ったものは逃がさないやつなのだ。
そんなやつがさやにこんなに構うのは何故なのか。
分かるけど、分かりたくない気がする。
「…真城先生…すいません…寝てたみたいで…私…そろそろ戻ります…」
タイミングよくというか、悪くというか…休養用のベッドのある部屋からさやが出てくる。
ぼやーっとしている。この子、寝起きよくないのよね。
というか足湯したりしてたからスカートの下はストッキングはいてないわ、首もと緩めるのにブラウスのボタン三つほど外してるからキャミソールと谷間が見えている。
「さやちゃんって色白いなぁ」
胸元と足を交互にみやって出た悠馬の一言に、とりあえず一撃をいれてやったのだった 。




