大丈夫ですか…?
美味しい料理教室は五時過ぎに閉幕となった。
松本先輩達カップルはデートついでに電車で帰るから~といって去っていき、丹波は近いから歩いて帰れと叩き出し、さや先輩と那珂先輩そして私の三名はミトサンに家まで送ってもらうこととなった。
「水卜さんとこのワインなのに俺らで飲んでしまってすいません。」
「いいって。いつでも飲もうと思えば飲めるしな。
女子もいるし元々送ろうと思ってたんだから気にするな。那珂はワイン好きなんだな。お前がよければ今度店連れてくか?」
「是非お願いします!」
那珂先輩がキラキラしている。そんなにワイン好きなんだなぁ…
ミトサンの車まで来た時、さや先輩が忘れ物をしたので先に車に乗って待ち出発する。
外に出ると、雨が降りそうな天気だった。
「…あ゛っ!!!!
ヤバイ!タオルケット干しっぱなしだった!!!」
「鈴木、お前…すぐ帰れないときに布団類干すとかないだろう。」
「夜まで快晴!!って予報聞いてたのに!!!」
くそう、お天気お姉さん信じていたのに!!!
「鈴丼とこ先にするか?
あー、でもそうすると道順的にさやちゃんが最後になるか。」
「私は最後でもいいですよ?
千佳ちゃんのお布団濡れたら大変だし。」
「さや先輩…!ありがとうございます!!ついでにミトサンも!!」
「はいはい。じゃあ出発するからな。」
ハラハラしたが無事、間に合った。
洗濯物全部しまい終わったとたんものすごいゲリラ豪雨となった。
危ない!!本当に危なかった!!
ミトサンには後でなにかお礼をしなければ。
そんなわけで、その日はふかふか布団に包まれて眠りにつけたのだった。
★★★★★
「おはよう、鈴木。
昨日は布団間に合ったのか?」
エレベーターに向かう途中、那珂先輩に声をかけられた。
「おはようございます、那珂先輩。
おかげさまでゲリラ豪雨の前に全部とりこめたんですよ!ありがとうございました!」
「次はないようにしろよな?まぁ、とりあえずは間に合って良かったよ。」
「次はないように気を付けます。
那珂先輩達は車でしたけど大丈夫でした?」
「あー前が見えなくなるぐらいの雨でさ、穂積さんなんかスイッチ入ったみたいで雨がすごいって爆笑してたよ。
このまま進むのは危険だからって近くの駐車場でしばらくやり過ごした後送ってもらったな。」
「さや先輩、酔うと笑いの沸点ものすごく低くなるんですよね。
お泊まりさせてもらったとき金曜も土曜も飲んだんですけど…」
「ちょっと待て、土曜けっこう飲んでたよな?更にか?」
那珂先輩に遮られそういえば飲みすぎだったかも?とちょっと思ったがそこは深く考えないようにした。
「さや先輩お手製の梅酒と柚子酒が絶品過ぎて…飲んじゃいました。
まぁ、そこでさや先輩すんごい笑ってました。最終的に私のペコちゃん顔ですら大爆笑で呼吸困難でしたね。」
「顔芸までできるようになったのか。まぁ、盗んだヅラで髭ダンスよりは平和じゃないか?」
「那珂先輩けっこう毒舌眼鏡なんですね。」
「お前も大概だと思うぞ?」
はっはっはっ、と笑い合いながらもバチバチにらみあっていたらエレベーターの前にさや先輩が立っていた。
「さや先輩!おはようございます!!
昨日はありがと…ってボタン押してませんよ?大丈夫です?」
さや先輩はエレベーターの前でボタンも押さずにぼんやり立っていたようだった。珍しい。
「え?!あ…ほんとだわ。ありがと、千佳ちゃん。
おはよう、昨日は間に合ったの?あら、那珂君もおはよう。」
「おはようございます。昨日はありがとうございました。」
三人で話しながらオフィスに入る。
そうして始業となり業務が開始された。
珍しく、富久山が誤字ぐらいのミスしかしなかったので仕事がはかどった。先週と雲泥の差だ。
絶好調の私に対して、さや先輩はちょっと変だった。
ぼんやりして壁やドアにぶつかることがしばしば。
お茶をいれようとしてカップを置かずに注ごうとするなど、普段なら見られないレア状態なさや先輩。
あまりにも普段と違ったみたいで、我関せずな高橋先輩にまで大丈夫ですか?と声をかけられてた。
まぁ、そう声掛けられたことで我にかえって普段のさや先輩に戻ったけど。
たまには高橋先輩も役に立つんだなぁ~
それにしても大丈夫かな?




