花より団子。
「それでは富久山君と丹波君を歓迎して、乾杯!!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
週の半ばの夜ー…
我々の部署一同は、とあるホテルに居た。
いよいよ今夜は恋の駆け引きも生まれるかもしれない(※男性同士)新人歓迎会が始まった。
ここまで大変だった…
しかし、その苦労は今日で終わる。
めっちゃ嬉しい…!!!
「それでは料理は各自好きなものを取ってくださいね。」
にこやかにさや先輩が言う。
「いやー、最初聞いたときはびっくりしたがこういうのもアリだねぇ。
穂積さん、鈴木さん、色々ご苦労様。
妻と娘に言ったら羨ましがられてねぇ。なかなかとれないんだろう、ここ。」
「ステーキすごい!ローストビーフ分厚い!!唐揚げもオシャレ!!!」
大神課長に労われていると、丹波が目をキラキラさせて戻ってくる。
皿にもりもりだ。
「丹波君、分かっているとは思うけど、残食あると追加料金になる場合もあるし、他の方も居ることを考えて食べられる量にしてね。
あと、残すのはもったいないから。」
「俺、大食いなんで大丈夫です!
あ、でもごっそり取りすぎないようには気をつけますね。」
本日の歓迎会の会場は某ホテルで行われている…のだがなんとホテルビュッフェ食べ放題にしてみたのだ。
半個室の様な奥まった部屋にしてもらえたので、さほどガヤガヤしても大丈夫なはず。
決まったとき、樋口部長は当然グジグジ言って来た。
高橋先輩もモゴモゴ言って来た。
しかしさや先輩と私はスルーし続け、今に至る。
席順がくじ引きと聞いて、樋口部長が絡んできそうな気配がしたが、大神課長が面白いなー!とウキウキし出したので事なきを得たりした。
「課長、来月のフェア案内と割引券よければ使いますか?
家族サービスには良いですよ。」
「お、いいのか?
いやーありがたいな。」
「大神課長、寿司ありましたよ。良ければとってきますか?」
さや先輩がチケットとチラシを渡していると、那珂先輩が戻って来て言う。
眼鏡男子の那珂先輩は寡黙系だけど、大神課長にはフレンドリーで、まるでワンコだ。もしや…と密かに思ってしまう。
大神課長は妻帯者なので両思いは弊害が出そうだが、片思いジレジレなジャンルならば美味しいかも…と思ってしまう。
富久山勢は仕事に支障を出したり迷惑がかかるが、二人はちゃんと仕事するので私の中の好感度が高いのだ。
「那珂君、案内してくれるかね?」
「那珂君、そのお皿席においておくから案内してもらって良いですか?
我々幹事は皆が一通り行ったら取りに行こうと思ってるから。」
「ありがとうございます、さ、課長…」
ペコリと頭を下げて大神課長を連れて行く那珂先輩。
口許には笑みが浮かんでいる。楽しそうで何よりだ。
「じゃあみんなが行ったら取りに行こうね、千佳ちゃん。」
「そうですね!食べる前からわくわくが止まりません!!!」
この後ー…歓迎会などそっちのけでビュッフェを堪能するさや先輩と私だった。
ちなみに…
富久山は長テーブルの奥で両隣を樋口部長と高橋先輩に挟まれ、周囲の幾人かも富久山ガチ勢になっているという、引きの強さを見せ付けてくれた。
そんな富久山は、顔にクリームをつけて洋菓子を堪能している。
ご満悦のようで何よりだ。
そして、その周囲は自分が食べるのをそっちのけで富久山を見守ったり、甲斐甲斐しく世話をしていたのだった。
二時間のビュッフェはあっという間に終わった。
飲みたい人間は二次会でもなんでもいけばいい。我々の仕事は終わった…!!!
ビュッフェで好きなものを好きなだけとれるとあって、そこから会話が広がったり盛り上がったりできて良かったと個人的に思う。
普段そんなに話せない人とも話せたし。
一部の男性陣が飲みに行くかとボソボソ話し合っているのをスルーして、私とさや先輩は帰路についたのだった。
明日も六時更新です。