赤子のように抱えてるもの。
予約し忘れました。
海風が気持ちいい、湿度が低い日ではあるけれど晴れていてなおかつ焼き物をしているとそこそこ熱かった。
首にかけたタオルでこまめに汗を優しく拭き取りメイクが剥げないよう自衛中だ。
ちょっと休みたいなぁ…そんなことを思ってると優しい声が掛かった。
「お疲れ様です。
良かったら一杯いかがですか?」
「えっ、飲みたい!って…さや先輩!!なんですかその一升瓶!!!」
まるで赤子を抱えるがごとく酒瓶を持つさや先輩がとてもいい笑顔でそこにいた。
「?飲み会の時だったら余裕の量よね?」
きょとんとした顔をするさや先輩。
いやいやいやいや、一升瓶が余裕で消える飲み会って…さや先輩のお友達どんだげ蟒蛇揃いなんですか?!
「じゃあいただこうかな。」
驚いているとミトサンが手をあげた。
くっ、先を越された…!!!
「どうぞどうぞ。」
プラスチックの使い捨てカップをミトサンに持たせると、躊躇わずに並々と日本酒を注ぐさや先輩。
ええええええええー?!!!
ギリギリまで並々と注がれている。少しでも動けばこぼしそう!!
「わー、こぼさず注げました。
下に受け取り皿あればもっといけるんですけど。」
「いつもこのくらいを…?」
ミトサンが目を点にしつつ尋ねる。
「宅飲みの時はだいたい。
あれ?多かったです??」
「飲めなくはないんで大丈夫。いただきます。」
こぼさないように手をプルプルさせながら飲むミトサン。
その間に私も並々酒をいただく。
「美味しいっ!!」
「飲みやすいな、これ。」
スッと飲めるお酒だ。
これはいかん。水のようにすいすいいけちゃう!!
松本先輩と那珂先輩も注いでもらっている。
松本先輩はほんの少しだ。あー、お酒弱かったよね、たしか。
那珂先輩の分は表面張力の限界に挑戦するがごとくミトサンより更にギリギリまでいっている。すごい。
「鈴丼、穂積さんについでこいよ。
あのままの流れだと自分で注ぐぞ?ついでに休憩してきてもいいぞ。」
ありがてぇ!
ミトサンが許可をくれたので、いそいそとさや先輩の元へ向かう。
「さや先輩!
私もおつぎしますよ!」
「千佳ちゃん、ありがとう。
じゃあ、これにお願いします。」
プラスチックのコップの下に紙皿がある状態のものを用意される。
あ、なんか飲み屋でよくみる日本酒注がれるときのスタイル!
でもなんか量おかしいです。
しかし、さや先輩がとてもいい笑顔なので躊躇わずに注ぐ!!
「穂積さんって酒強かったのか…」
「まれに飲み会来てもいつもだいたいみんなの世話するはめになってるもんね…」
紙皿からも溢れそうな程に注いでしまったが、さや先輩は全く動じてなかった。




