さや先輩は俺の嫁。
美味しい香りが鼻をくすぐる。
トントントン…とリズミカルに響くのは包丁の音。あれ?実家だっけ…?
そこまで考えて、違うと気付いた。
慌てて起き上がる。そうだった!さや先輩の家にお泊まりしたんだった!!
慌てて横開きの扉を開ければキッチンに佇むさや先輩。
「おはよう、千佳ちゃん。よく眠れた?」
飾り気の無いシンプルな五分袖の割烹着エプロンが眩しい。
新妻とか嫁って言葉がよく似合いそう…!!!
「すいません、寝こけてました!おはようございます!
さや先輩嫁っぽい!!なんかドキドキするんですけど!!!」
「あらあら千佳ちゃん、まだ寝ぼけてるの?
先に顔洗ってらっしゃいな。」
さらっといなされてしまった。
とりあえず、顔洗ってお手伝いせねば!!!
★★★★★
さや先輩が昨晩しこんだアイスティーを飲みながら、料理のお手伝いをする。
おにぎり型にごはんを入れては出して、お弁当容器におにぎりを置いていく作業はけっこう辛い。だってすごい美味しそうなんだもん…
食べたいよー!!
「千佳ちゃん、あーん。」
なにをあーんなのか確認もせず、振り向き様にかぶりつく。
あっ、なんか味ついたごはん!なにこれ美味しい!!
「おいしいです!!」
「ふふ、良かった。
めんつゆで味付けして白ごま混ぜただけだけど、けっこう美味しいの。
昨日お米五キロの買ってもらったから、どうせならバーベキュー網の隅で焼きおにぎりさせてもらってみんなで食べたらいいかなぁと思って。
これはこっちのお重につめてね。」
「はーい!!」
キッチンと、そしてちゃぶ台の上は使い捨て容器がずらりと並べられている。
最近の使い捨てできるお弁当容器はレンチンもできて、冷蔵も冷凍もできるとは知らなかった。
使い捨てのお重とかもあるなんて!!
明日、焔さんに差し入れする分も詰めるから色々大量だ。
使い捨ての食品用手袋をしてつめていってるので、なんだか食品工場の人みたいだ。
本日のお弁当メニューは
おにぎり
唐揚げ
人参とツナの炒め物
パプリカ入りのきんぴらごぼう
卵焼
キュウリの浅漬け
である。
さや先輩と昨日下ごしらえしたけど、どんな料理ができるか全く分からなかった。
魔法みたいだなぁ。
唐揚げは二度揚げするけど、揚げてから一度置いて余熱で火を通してから揚げると冷めても美味しい唐揚げになるんだって!
「さや先輩、すごい!物知り!!」
「ためしてガッ◯ン!で昔やってたのよね。」
「すごいですね。ためしてガッ◯ン!…」
ご長寿番組のすごさを朝から感じるのだった。
しかし、熱々の唐揚げの魔力って怖い。気付いたら五個も味見していて、さや先輩ストップがかかってしまった。
あともう一個~!!!