まだまだ週半ば。
昨日は帰りがけにさや先輩が樋口部長に天花寺社長を接待してくれたお礼に奢ると言われていたが、申し訳ないが疲れたのでもう帰りたいとバッサリ切っていてカッコ良かった。
そんな翌日の水曜日。
そうまだ水曜日なのだ。月曜からクライマックス的だったので気分は週末なのに、まだ水曜日。
はぁー、やる気でないなぁ。
しかし週末はさや先輩のお家にお泊まりだから頑張る。
正直、 バーベキューはとても憂鬱だけど…ミトサンも居るし最近面白い丹波や那珂先輩も居るから耐えられると思う。
「今日も一日乗りきろう。」
★★★★★
「穂積さん、チェックお願いします。」
あと数分で昼休み。
そんな時に高橋先輩がさや先輩にデータを転送したらしい。
午前中にあげてね、と言われていたものだ。
確か、午後イチで必要なものだったはず。
「……分かりました。すぐにチェックします。」
少しの間をおいて、さや先輩が返事をする。
表情は無表情に近い。にこやかさが消えている時点で内心おかんむりだろうが、決して責めることもしない。
「松本君、頼んでいたものは何時くらいになるかおおよそで教えてくれますか?」
「えっ、あ、はい!このまま続ければ午後イチで終わると思います!!」
「違うのよ松本君、ちゃんと昼休憩はしてちょうだいね。
午後一で今の仕事持っていくから、せっかく仕上げてくれてもすぐに対応できないと困るでしょう?
午後から始めてどのくらいで終わるかの目安を教えてくれればそれまでには対応できるようにしておくから。」
「15時までにはかならず!」
「分かりました。よろしくお願いします。」
フツメンでそこそこ優秀な松本先輩はとても腰が低い。
私だけでなく、富久山、果ては丹波にまで敬語を使う人だ。
というか高橋先輩…、他の課が絡むような仕事切羽詰まる前に相談しないのかよ…
ほんと、富久山に恋してから評価が下がりっぱなしな人だなぁ。
仕事はしつつもぼんやりそんなことを思っていると昼休みとなった。
高橋先輩は富久山を誘ってどこかに行った。
さや先輩はパソコンに向き合ったままだ。
「さや先輩、お手伝い…は…できないか…うう、なにか、なにかしますよ!」
今日は一緒にご飯かと楽しみにしてたのに、高橋先輩のせいでさや先輩ははりつけで仕事だ。ゆるすまじ…
「いいのよ、千佳ちゃん気持ちだけでも嬉しいわ。
気にせずお昼ご飯行ってね。丹波君達と食べてきたら良いわ。」
疲れた顔で笑って言うさや先輩。
なにもできないのが歯痒い。
「丹波!出番だよ!!」
「なんですか?鈴木先輩。オレお腹すいたッス。」
「nonokoカード渡すから、むかいのコンビニでフルーツサンドとBLTサンド、あったかいほうじ茶買ってきて今すぐに。
お礼に社食でなにか一品奢るから。」
「了解です!!」
丹波は風のように駆けていった。
「せめて昼ごはん奢らせてください。
さや先輩、ちゃんと食べてくださいね!」
「…ありがとう、千佳ちゃん。」
「明日は一緒に社食行きましょうね!」
五分ほどで戻ってきた丹波を誉めて、私は後髪を引かれつつ社食に行ったのだった。




