許すまじ、樋口。
「ミトサン、どういうことですか?
ロングヘアなさや先輩見れてたなんてうらやましい。」
重々しくミトサンは語った。
「穂積さんとは知らなかったけどな、今秘書課の美人方の話を聞いて確信した。
あの時、丁度廊下で遭遇したんだけどな…
樋口さんに声を掛けながら呼び止めるのに肩をたたいた穂積さんの腕を振り払って『ちゃらちゃした格好や化粧で仕事より媚を売る事に重点をおくしか能が無いのか!女は!!』っていきなり…な。」
「なにそれ。」
「案件でしょう、それ。」
「その時聞いてたら血祭りにあげてた。」
「とりあえず、毎日抜ける髪の毛の量が十倍になる呪いをかけたい…」
「うわぁ…ドン引きすっね…」
「というか水卜さん、よく覚えてましたね。」
秘書課の三人、私、丹波、那珂先輩の順にコメントをする。
確かに、よく覚えてたな。ミトサン。
「衝撃だったからなぁ。
近くに居た連中もぎょっとして宥めにかかってる間に穂積さんは樋口さんに背を向けてこっちに向かって来てな、『大丈夫ですか?』って思わず声掛けたら『おかまいなく。』って一言。
泣いてたら胸を貸すつもりではあったんだが。
それもある意味衝撃的だった。」
「ちゃらー。ほんとチャラいですね。ミトサン。」
「水卜君、そういうとこほんと抜け目ないわね。」
「傷心の女の子に漬け込む感じ?」
「うまいなぁ」
「イヤイヤイヤ、純粋な好意ですからね?
普通に人としてあんな罵倒としか思えないような事言われたのみたら男だって女だって声掛けるし、まぁ、鈴丼でもとりあえず胸を貸すぐらいはするって。」
「とりあえずなんですか。
いや~ぁ、でも結構です。なんか酷いこと言われて耐えきれなかったらクレンジングシートでメイクオフした上でさや先輩のお胸にダイブしてよしよししてもらうんで。」
「鈴丼、お前も大概だな。
その後見掛けなくなったから辞めてしまったのかと思ったけど…
ショートになって服装も変わってたなら納得だ。
元々課も違ったから接点もなかったしなぁ…その時うつむいてたし顔をしっかりみてなかったから分からなかった。」
そこまで話をして、ミトサンは食べるのに集中し始めた。
それにつられ皆、暫くは黙々と昼食を食べる。
食後のお茶を飲みながら私は決意を新にして言った。
「私、さや先輩を守ります。
仕事以外のところでぐちゃぐちゃ攻撃してきたら膝カックンで撃退してやります。」
「鈴丼、直接攻撃はやめろ。」
「鈴木、お前が何かしでかした方が穂積さんの負担になるんだからなにもするな。」
速攻でミトサンと那珂先輩に止められる。
何故だ。
「余計なことしない方がいいってやつですね!」
「おいこら丹波、お前にだけは言われたくないぞ。」
調子に乗って言った丹波の足を踏んでやった。
ミトサンや那珂先輩に言われるなら納得できるが丹波にだけは言われたくないぞ!本気で!!!
「鈴木ちゃんが居るからこそ救いになってる所がほづちゃんにもあるんだよ。」
とても優しい顔で佐川さんが言った。
うれしいけど、美人過ぎで目がつぶれそうです、はわわ。