さや先輩、うろんな目で見る。
玄関横付けで送ってもらい、疲れきって自分のオフィスに帰る途中に千佳ちゃん達に遭遇した。
那珂君と丹波君に水卜さん、そして何故か秘書課の美女軍団と一緒にいる。
「ほづちゃん!お帰り!大変だったね、この前はどうもね。」
「ひとり接待だったんでしょう大変でしたねぇ。」
「お疲れ~」
「由貴奈さん、まどかさん、莉子さん先日はこちらこそありがとうございました。
ところで何故、千佳ちゃん達と一緒に?」
美女達に代わる代わる声を掛けられる。
三人は私の新人時代の年上同期だ。
美女だけど、それを鼻にかけることのない人柄で面倒見もいい。
前はよく遊んだり旅行にも行った仲で、現在三人とも結婚出産をへて職場復帰を四月からしたばかりのワーキングママでもある。
「今日は久々社食にしようと思って、席探してたらほづちゃんの後輩ちゃんに声をかけられてご一緒したのよ。」
「なるほど。」
「ほづちゃんの課のイケメンや別な課のイケメンを見ながらのご飯は楽しかったですよ~」
「そんなに楽しいならうちの課に来てくれてもいいですよ?」
「外から見てるのが一番です。遠いからこそいい。」
「よくわかってらっしゃる。」
軽口を叩きあっていると水卜さんが不意に顔を覗きこんできた。
じっと見られた後、にっこり微笑まれた。
「穂積さん、雰囲気違うと思ったら目のところに塗ってるんだね。
かわいいよ。」
自分の瞼をトントン人差し指でさしながら、ややチャラチャラ系が入った水卜さんが言う。
こんな間近で美形になんの含みもなくかわいいと言われるとは思いもよらなんだ。
ちょっと化粧溶けかけなのでマジマジ見ないでくれませんかね、本気で。
急に千佳ちゃんが袖を引いてきてこっそり私に囁いた。
「さや先輩…チベスナ顔になってますよ…
ミトサンにとって女子にかわいいと言うのは挨拶みたいなもんですから気にしないでくださいって私、顔見てかわいいと言われたことないんですけど?!」
「かわいい後輩だっていってるぞ。とりあえず。」
「とりあえずってなんです?!」
いけないいけない。
表情を取り繕う。
ワイワイ言い合う千佳ちゃんと水卜さんを見ながら笑っているメンバー達の光景を見て、接待昼食で疲れた心がなんだかちょっと和んだのだった。
まぁ、さっきのかわいい発言は目の欠陥を疑うけど。




