社長、襲来。
「天花寺社長!
おはようございます。今、応接室にご案内しますね。」
「いいのよぉ。けっこう早くついてしまって悩んだのだけどお邪魔しちゃったわ。
迷惑だったかしら?」
「すぐに話し合いはできないかもしれませんが、飲み物をお持ちしますのでご案内します。
暑い中、来ていただいてありがとうございます。先に涼んでいてください。
天花寺社長、水だしのアイスティーと温かい紅茶どちらがよろしいですか?」
現れたのは、富久山は行かせたくないけど華のない地味女子はちょっと…事件の男好きのお客様こと天花寺 司社長。
とてもいい声のオネェ…。
いつも紫や白がベースの服を着ている。見ようによってはマフィアっぽい。けどオネェ…。
この社長、フットワークがとても軽い。
人数でいえば小規模の会社なのもあるのかもしれないが、営業や交渉もこなすというスパダリ仕様。
BL好きにはたまらない設定を持つお方だ。
もちろん美形。
隣に立たれたくない美形だ。
「水だしいただくわ。
穂積ちゃんのいれるお茶は絶品なのよ。あなたもそうなさい。」
「はい、社長」
社長の影から小柄な美少年が出てくる。
まごうことなき美少年だ。エフェクトかかってる!!
キラキラキラキラ…と空耳が聞こえるほどの美少年。
どうみても中高生なんですけど?え?未成年つれ回してるの?!
「天花寺社長、そちらの方は…」
「私、ランスロット・イエィガーです。秘飛び級で大学院を卒業し、今月から秘書見習いをしております。
こちらは社長からみなさんに。我々も食べたいのでお茶請けに出してほしいそうです。」
「はじめまして。私は穂積さやと申します。
えっ、これはあの老舗の…!!!」
さや先輩が驚き、天花寺社長を見る。
さや先輩は美少年よりお土産に興味があるようだ。
「さすが!
やっぱりあなた違いがわかる女ねぇ!
そう。限定数しか販売しない例の老舗のやつよ。
ランスがわざわざ並んで購入してくれたの。
話し合いまで時間かかるでしょう。その間、穂積ちゃんも一緒にお茶とこの和菓子を楽しみましょ。
ここの課の人数分あるからみんな後で召し上がってちょうだいな。」
「ありがとうございます!
みなさん、天花寺社長からいただきました!」
くるりと振り返ったさや先輩がとっても綺麗な笑顔で言うと、ほとんどが立ち上がってお礼をのべる。
「ではご案内します。
私はお茶の準備をしてすぐ参りますので…丹波君、お部屋にご案内を。」
「は、はいっ!!こちらになります!!!」
ガチガチに緊張しながら丹波は案内に去っていった。
一瞬、オフィスが静まり返る。
さや先輩がくるりと振り向くがその顔は無表情。
笑顔どこにやったんすか。
「で?
何分時間稼ぎすればいいですか?」
そう静かに問いかけてきた。