お先に失礼しますねー
沈黙の中、はじめに動いたのはさや先輩だった。
「千佳ちゃん、よければ一緒に行かない?帰りは送ってもらえばいいわ。」
「えっ、いいんです?今日は記念日じゃないですか。」
「明日は出かけるけど、今日はどこかで適当に食べようかって話してたの。
どのくらいかかるか分からないから一緒に居てくれると嬉しいわ。」
「それならご一緒しまーす!」
何事もなかったかのように帰り支度を始めるさや先輩。
それに乗って私も片付け始めた。すると他の人もぎこちなくではあるが帰り支度を始め出した。
「穂積さん、ひどいです!」
そこにいきなりさや先輩を名指ししたあげく酷いとのたまう富久山。え、意味わからないんですけど?!
「なんで正親さん困ってるのに助けてあげないんですかっ?!
もとはといえばいつも穂積さんが会議室とかの手配してたのをやらなくなったせいじゃないですか!」
樋口部長がそんなの要らねぇ、恩着せがましいとまで言ったからだよ。
そもそもとして樋口部長が酷いからこうなってんだよ。その理論でいくと富久山が居るせいでおかしくなってるといっても過言ではないぜ?
「いらないと言われたのでやめたまでですよ?
それに樋口部長は優秀ですし、私ごときが手助けやフォローした方が足手まといかとおもいます。
そんなに心配なら富久山君が庇ってみてあげたらどうかしら?
とても喜ぶと思いますよ。」
にっこり笑顔でバッサリ切り捨てるさや先輩。
「私が手を貸すよりも、富久山君がすぐそばで支えたり励ましてくれる方が樋口部長の力になるはず。
守られてばかりでなく、あなたも助けられると良いわね。」
「あ、えっと、はい。」
急に勢いを無くす富久山。途中でためらうなら最初から噛みつくなよー
「ではでは、お疲れ様でした。お先に失礼します。」
「お疲れ様でしたー!」
その隙を見逃さず、さや先輩と私は無事オフィスを脱出したのだった。