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さや先輩、頑張ることにした。

「大神課長…、今お時間良いですか?」



「ああ、穂積さんご苦労様。

かまわないよ、どうしたんだね?」



書類を出しに行ったついでに大神課長にお伺いをたてる。

自主的に大神課長に珈琲を渡しに来た那珂君が少し面白くなさそうな空気を出しながらも、ちゃんと去ろうとしたところでついでに呼び止める。



「那珂君も聞いてほしいのだけど、構わないですか?

急ぎのものがあるなら後から伺います。」



「いえ、大丈夫です。」



「ありがとう。

ちょっと富久山君のことでご相談が。

指導担当が鈴木さんには荷が重いようなので、別な方に変わってもらうことはできませんか?」



「何故だい?」



「鈴木はちゃんとやってると俺は思いますが…」



良かった、ちゃんと見てる人は居る。

内心ガッツポーズを取って何事もないように話を続ける。



「私もそう思います。

ただ、周りが口出しをしたり、変に庇い立てて鈴木さんが残業をしたり文句を言われるはめになるのはどうかと思いまして…

鈴木さんだけでなく富久山君の為にもならないのでと思った次第です。」



「具体的には?」



「先程、午前に提出するはずの書類をなんの相談も報告もなく遅れて出したそうで…

それについて話していた所に通りかかった高橋君が、言い方が悪い、感じが悪い等言った後、富久山君が綺麗だから僻んでるのだろう…と言ったのを見かけ、さすがに止めました。

鈴木さん、心外だったようであまりの事に固まってしまってました。

今日のようにあからさまではないにしろ、指導をすると他から横槍が入る事はこれまでにも何度かありまして…」



そこまで言って私はため息をつく。

そして申し訳なさそうな顔をして続ける。



「新人さんですから、ミスや要領が悪いこと、間違うことは仕方ないと我々も分かってます。

新人さんがすぐ辞めてしまわないよう皆それぞれ気を使っているのだと思うのですが…

鈴木さんに相談を受けるたび、その事は伝えてますし、彼女も分かってます。

ただ、私から見ると普通に指導しているにもかかわらず、言い方がどうのと途中から言われる回数が多いのではないかと…

同じ女性だからそう思うだけなのかも知れないんですけど…

那珂君はどう見えますか?

私達がきついのかしら…?」



そこで、ある程度距離をおいて見ている那珂君に話をふった。

那珂君が好きなのは大神課長なので、富久山を贔屓目で見ない意見をくれるはずと思ってのことだ。



「そんなことはないですよ。

穂積さんや鈴木は、節度をもって指導したり仕事していますよ。

あまり間にたてず申し訳ないくらいです。

実は…飲み会の時によく富久山をかばう言動をするやつが多くて、ちょっとどうかと思ってたんです。

まぁ、酒の席なんで多少は仕方ないかもしれませんが…

あまりひどいときには俺も言うようにはしてるんですが、先輩方にはなかなか言いづらい所もありまして。

あと、富久山一人に構いすぎな気がします。

同じく新人がいるのに。

丹波はまぁ、暢気だから気付いてませんし、別な課の水卜さんや一応俺や何人かの同僚はフォローしてるつもりですけど…

いや、あいつ本当にあの性格で良かったと思います。」



丹波君はデリカシー無いけど、まあ明るく元気だし、細かいところを気にしないおおらかさがいいと思う。うん。



「そうか…私も気を付けて見てみるようにする。

すまんが穂積さん、少し様子を見たい。これまでのように相談にのったり鈴木さんのフォローをしてやってくれ。

那珂君も、頼んで良いかね?」



済まなそうに大神課長が言う。

どうにか解決するなど思ってはいない。現状維持になることなど織り込み済みだ。

一番の目的は、現状を知ってもらう事だ。

富久山勢ではなく左右されない人達に…である。



「はい。分かりました。

那珂君もお手数ですがよろしくお願いいたします。」



「出来る限りの事はします。」



こうして、千佳ちゃんを守る布陣が少しずつ完成しつつあるのであった。











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