その笑顔が怖い!
ぴろろーん、と沈黙の広がった営業のオフィスに電子音が響いた。
「あっ、申し訳ありません!
マナーモードにするの忘れてて…あ、水卜先輩!オヤジが結婚祝いにうまいもんおごるから嫁さん連れてこれる日教えてほしいってメールが…」
磯崎のiPhoneだった。
てか、早いな!もう連絡したんだ。食事おごるとかどんなもん食べさせてもらえるのか気になるな。…高いワインとかも飲むんだろうか…?!
「んん?磯崎君、おとうさんに言っちゃったの?」
「え?はい。めでたいことだからいいかなって…あ、不味かったですか?!」
言ってるうちに顔色を変える磯崎。
「あー…ちょいと順番ってのがね…
水卜ちゃん、今社長室で響部長がミーティングしてるから行って部長と社長に報告してきなさい。
電話いれといたげるから。穂積ちゃんは自分のとこの一応のトップに伝えておいてね~。」
苦笑いで馬場課長が指示を出す。
一応トップ…あー…樋口部長…か…。一応ってつけられるあたりけっこうヤバイんじゃ…
「高頭ちゃん、二課と…あと受付にも話通しておいて。
水卜ちゃんが対応できない時は一課が対応するように。
じゃ、頼んだよ~」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
馬場課長の指示で一斉に営業のメンバーが動き出す。
「那珂~」
穂積さんと大神課長に声を掛けてから部屋を出掛けた水卜さんに呼ばれたのですぐに近付く。
「水卜さん、驚きましたがおめでとうございます!」
「おう、ありがとな。」
とりあえず、まず祝福をした。水卜さんは嬉しそうに笑顔で応じてくれる。
「樋口さんがさやちゃんに何て言ったかと、他の面々の反応を後で教えてくれな。」
「え、いいですけどなんで…あ!」
一瞬なんでそんなこと…と思いかけたがすぐに理由に思い当たった。
「ははっ、察せられちゃうあたり樋口さんの最近の様子が分かるよ…
まぁ、さすがに祝うとは思いたいけどな…なんかあかんことしたらしっかり教えてくれよ、那珂。
頼りにしてるぜ?」
水卜さんの顔は笑顔でも、その声は真剣だ。
「ちなみに、なんかあかんことしたりいったりしたらどうするおつもりで…?」
何とはなしに聞いてしまったことを、この後俺は後悔することになった。
「潰す。」
そう一言…恐ろしく低い声で呟いて、水卜さんは去っていったのだった。
こ、
こここ、
こここここここここここ怖あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!