想いは重なりあって。
バレッタ買うのにちょっとした押し問答あったけど、ミトサンと私とで押切り購入する方向へ舵を切った。
「分不相応だと思うんですよ…私が、こんな…」
渋い顔でさや先輩が言う。さや先輩…自分の事となるとなんと言うか…卑屈なまでに自信ないよね…あれか、やっぱ樋口部長のせいか…!
あんちくしょうめ。
「何回もいうけどな、さやちゃんは可愛いからかわいくしていていいの。
自分のためにするのが微妙なら義務感でもなんでも俺のためにお洒落すると思えばいいんだよ。」
笑顔で有無を言わせないミトサン。そして会計にいってしまった。
「悠馬さんの為には義務でお洒落するわけないのにな。」
その背を見ながらポツリとさや先輩が言う。
「少しでもかわいくありたい女心ですね。」
「あ…う、うん…そうね…少しでも素敵と思ってもらえる人でありたいと思ってるわ。」
さや先輩、心の声ポロっと出ちゃった感じですか。
好きな人の目に写る自分を素敵に見せたい、自分でも好きな姿を見てもらいたいのは当然だと思うんですよ。
これを機に、さや先輩がお洒落することに少しでも意欲的になって生き生きできたらいいのにって思ってしまう。
フォローはありがたいし、頼りになるけど…
たまには私もさや先輩のために何かしたいし、もっと自分を大切にしてほしいって思うんですよ。
さや先輩はもっと我が儘になってもいいと私は思う。
「さや先輩、私達に甘えるのは難しくてもミトサンにたくさん甘えちゃっていいんですよ。
大丈夫、ミトサン基本世話焼くの好きな方ですよ!
丹波や私も可愛がってくれてるんですから、さや先輩が頼ったり甘えてきたら大喜び間違いないですって!」
「そうなのかなぁ…私ばかりいい思いしてないかって不安になるのよね…」
「さや先輩は息するように人様を思いやったりフォローしてます!
だから甘えたくらい何てことないんです!」
握りこぶしを作って言い切ると、さや先輩がやっと笑った。
「ふふふ、ありがとう千佳ちゃん。
そうね、ちょっとくらい甘えてみようかな…」
ちょっとと言わず、おおいに甘えていいと思いますよ。さや先輩。
ミトサンに追い詰められてゴールインかとちょっと心配したりもしたけど…さや先輩もちゃんとミトサンを好きなようで安心した。
難しいからできないって言っていたマスカラや、綺麗に整えられた爪とネイルにさや先輩の努力と想いの片鱗が少し見えた気がする。
ミトサンにいいように押しきられた感は拭えないけど…、
私にとって二人とも大切で大好きな先輩だから、その幸せを願わずにはいられないのだった。