石に花咲く。
樋口部長が自分が見ると言ったよね…
え、空耳?幻聴?あー、とうとう起きたまま夢見る様になっちゃったかぁ~
「鈴木、聞いてたか?富久山に任せた仕事は俺が見てそのまま仕上げはやってやる。
ほら、入力作業を早く…」
「樋口部長、本当に…?え、もしかして後からトラブル起きたら私の責任とかになるやつですか?」
混乱のあまり思ってる事をするりと言ってしまう。わっやばっ!!!慌てて口を押さえるが後の祭りだ。
サーッと血の気が引いた。
「そんな事をすると思われてたのか…
責任は全て俺が取る。鈴木が気を揉むことはない。この入力は定時までに終わらせろ。いいな。」
「分かりました。」
傷付いた様な顔一瞬したけど自業自得だと思います。そこまでするって私信じちゃってますよ?
定時までには終わらせろってことは定時で上がってよしってことですよね?!
ふらふらと自分のデスクに戻って着席する。
「鈴木さんどうしたの?顔色悪いよ?」
水海道先輩に尋ねられ、私は呆然としたまま答えた。
「い、今…富久山の進行状況見に行ったら全く手をつけてないって言われたんですが…」
「「「はぁああ?!!」」」
「残業覚悟でまるっと引き取ろうとしたら、樋口部長が自分が最後まで面倒見るから入力作業してくれって…」
「え?それは何かあったら鈴木先輩に責任押し付けるけどな!が付く仕様ですか?」
丁度、水海道先輩のとこに来ていた丹波が眉をしかめて聞いてくる。あはは、丹波にまでそういうことしかねないって思われてますよ樋口部長。
「それな。私も思わずぽろっと言っちゃったんだよ本人の前で。」
「うわー、鈴木先輩勇気あるぅ~」
「鈴木さん、それで更になにか言われたりはしませんでしたか?大丈夫でしたか?」
松本先輩が心配そうに言う。優しいなぁ…あーでも松本先輩にもそう思われて…いないわけがなかったな。うん。
指導の仕方が自分達の時と随分違うね~って背後に般若背負って笑顔で話してたことあるもんね。
「そんな事すると思われたのかって言って、傷付いた顔してましたよ。」
「「「「……………」」」」
私も含め、松本先輩、丹波、水海道先輩はしばし黙りこんだ。
「散々周りを傷付けといて今さらって感じがすごくするけど…
あれだね石に花咲く、だね。」
「へ?」
「あり得ないことの例えだよ、丹波君。」
水海道先輩が苦笑いで言うと、丹波がきょとんとした顔で首をかしげたので松本先輩が解答してあげている。優しい。
私はBL小説で出てきたから知ってるぞい!
「さ、仕事に戻ろ。鈴木さん、定時に帰れるね、おめでとう。」
「ありがとうございます!
さ、いっちょ頑張りますか!!」
水海道先輩に励まされ、私はパソコンに向きを変えたのだった。