明日は休みっていってるだろ?
「富久山さん、以前も話しましたが明日は有給とっていますのでこの仕事は遅くとも午後の二時までにお願いします。」
やつれて出社した月曜から数日…明日は楽しみにしていた祭典の日。
私もさや先輩も四月から申請して有給をばっちりとっている。
邪魔はさせないぜ?
「はーい。わかりました。」
旅行雑誌を閉じながら富久山が言った。
軽い返事…スゲー心配なんだけど…?というか、パソコンすらつけてないって何しにここに来てるの?
オフィスラブ?オフィスラブしにききてんのか?!
金もらってるんだからまずは仕事せんかーい!!!
デスクに戻ってくると不安がもくもくと沸き上がってきた。
「心配だ…水海道先輩、那珂先輩…万が一富久山の仕事終わらなかったらどうすれば良いですか?私、明日休みなんですけど。」
「なに、そんなに不味いの?」
「パソコンつけずに旅行雑誌数社分と付箋が散乱してました…」
「浮かれすぎじゃないか?それ…
うーん…明日は絶対来れないなら残業しかないだろうな…
まぁ、最悪駄目そうなら手伝ってやるか?」
「聞きましたからね?那珂先輩!絶対手伝ってもらいますからね?!」
「君たち、終わらない前提で話しないであげたら?
…うーん、とりあえず自分の仕事は終わらせとくとか自己防衛しといたらどうかな?」
そんなことないから、大丈夫だから。って水海道先輩にすら言ってもらえない…富久山…ある意味プライスレス…
★★★★★
「富久山さん、終わりそうですか?もうすぐ2時なのですが。」
昼休み返上して、なんとか今日のノルマは終わらせた。
富久山が半分ほど、最悪三分の一ほどしか終わらせていなくとも定時か、プラス一・二時間の残業で済むはずだ。そう思っていたのだがー…
「え?
………あっ!す、すいません忘れていました!!」
何やってたん?今まで…
デスクに少し広げられた旅行の行程表がちらりと目を掠める。察した…
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…………!!!
もっと早く声かけときゃよかったああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「仕事、戻してください。こちらでやります。」
淡々とそう言う以外、他になんの選択肢があるのだろうか。
「出来ます!定時までには仕上げて…」
「私は明日休みなのでそれでは間に合いません。」
「あっ…」
あっ…じゃねぇわ!!!ねぇ聞いてた?私の話聞いてた?!
「…ちなみにですが、私は四月にもう明日の有給申請許可をもらってますので休日出勤はしません。絶対に。
それに明後日からは皆、夏期休暇に入りますので他の方に回すこともできかねますので、その仕事戻してください。」
ごねられる時間すら惜しい。とっとと渡せや!
「……………」
おっとぉ?!得意のだんまりか?!いい加減にしろよ、マジで!!
あんたがごねてると、隣の高橋先輩がうるさいんだよ!!口はさんでくる前にとっとと出してくれよマジで!!!めんどくさいことになるから。
「鈴木、俺が見る。かわりにこの入力をしてくれ。」
その一言に無言の攻防は遮られることとなった。




