上映会は突然に。
夜は午後七時を回っていた。
しかし我々は帰宅していなかった。
「俺は別に良いよ?けどほんと良いの?」
「何いってるんですか、水卜さん!!あのドラマを見ないなんて間違ってますよ!!!」
顔を赤くした松本が意気込む。
とてつもなく好きなドラマのDVDを水卜さんが持っていると発覚したのだ。
「私は知らないですけど、さや先輩が面白いっていうなら見ようかなって感じでーす!」
「私は急な夜勤とかで見れないこともあったので、ほんと!!ほんとみたい!!」
「スペシャル版まであるなんてすごいですね。これは見とくべきよ、みゆきちゃん!」
みんな見る気満々だ。
田中も好きだったんだな。まぁ、あれは面白いしな。
そんなわけで水卜さん宅に泊まり上映会することになった。
普通に考えると、遠慮したりするんだが、まぁ、そのときの俺達はしたたかに酔っていたので正常な判断はできなかったのである。
「うーん、女子達スキンケア用品とかなくて大丈夫か?化粧落とさないとひどい目にあうって姉さんよく言ってたけど?」
「よく気がつきましたね、水卜さん!気づきすぎて気色悪いです!!!」
ケラケラ笑いながら紫苑さんが辛辣なことを言う。
無表情はどこかに置いてきたらしく、酒量が一定を越えたあたりから毒舌笑い上戸が発動しっぱなしだ。
「お褒めにあずかり光栄ですよ。」
「あっはっは!!面白い!!!!」
「水卜さん、顔に似合わず気にしいなんですね~あははは~」
田中も笑いながら言う。こいつも酔うと遠慮なくなる感じだなぁ…
「あー、うん、那珂に松本この二人頼むわ。
近所にコンビニはあるからそこにスキンケア用品とか買ってくるから。
一緒に行こうかって聞こうとしたけど、連れ歩く方が危ない。さやちゃん悪いけど付いてきてくれる?」
「はい、良いですよ。二人とも肌荒れやすいとかある?」
「無いです。」
「大丈夫です…え~さや先輩行っちゃうんですかぁ…みゆきは寂しいです。」
上目遣いで目を潤ませて紫苑さんが言う。
あざと!!あざとい!!!くっそ、でもめちゃめちゃ可愛い…!!!
「みゆきちゃん、ちゃんと帰ってくるからおりこうにしていてね。
甘いものなにか買ってきましょう、何が良いの?」
「ハーゲ○ダッツ!!」
「さやさん、私も食べたい!ダッツの新作!!!」
ふんわり笑顔で紫苑さんをいなし、頭ポンポンしながら話をそらす穂積さん。さすがです。
「分かったわ。
二人ともお留守番頼みます。那珂君と松本君も同じで良い?」
「「はい!食べたいです!!」」
酔いのせいか、俺も松本も元気に返事をして、二人を送り出してしまったのだった。