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女は二つ以上の顔を持つ。

「失礼します。」



昼休みになると同時くらいにオフィスのドアが開く。

視線が集中し、室内がざわついた。


そこにはべらぼうに可愛いと評判の受付嬢、紫苑さんが居た。

無表情だがそんな済ました顔もとっても可愛い。

可愛い子はなにしても可愛いんだな。



「こんにちは!何かご用ですか?

よかったら一緒にご飯食べない?!」



速攻で丹波が寄っていく。



「チッ…

穂積さんと鈴木さんにしか用がないので結構です。」



うわ、舌打ちしたよ。まぁ可愛いんだけど…

害虫見る目で丹波を見てる。あ、回れ右してこっち来る。



「那珂先輩!!

胸はないけど可愛いさでときめいて声掛けたのにひどい降られ方しました!!」



「丹波、失礼だぞ。謝ってこい。

声おっきいから紫苑さんにも聞こえてるぞ。睨んでるぞ。」



丹波がデリカシー無く騒ぐのでこっち見てる…というか睨んでるっ!!般若背負ってらぁ…

可愛い子でも般若になると顔立ち整ってる分、なおのこと怖い。



「ただいま戻りました~」



そこに戻ってくる鈴木。



「す、鈴木さん…!」



その瞬間、くるりと回り鈴木の腕にしがみつく。



「えっ、あっ!なんだっけ紫苑さんだよね?!どうしたの?」



「あの丹波って人にご飯食べようって誘われて断ったら、胸がないくせにって言われました…」



そう言いながらうるりとした目を鈴木に向ける。



「はあぁぁ?!

おいこら丹波、セクハラ発言うっかりこんな可愛い子にするなんてどんな神経してるの?謝りなよ。」



確かにな。

舌打ちはしたけど口を滑らした丹波が悪いわな。しかし俺らと温度差すごくないか?紫苑さん。



「えっ、俺悪いんですか?可愛い子いたら声かけちゃうのはしょうがないじゃないですか!」



「アウト~、それアウト!

学生じゃないんだよ。社会人なんだから節度をもって、相手の話も聞きなよ。

スカートはいてるんだから痴漢してほしかったんだろうっていうやつと同じ理論になるよ。」



「うっ…」



鈴木のもっともな意見に丹波も怯む。さっさと謝ればいいのに。



「丹波…自分の間違い認められず勘違いしてると…」



そこまで言って鈴木は黙り、目だけをある席に向ける。



「………!!!!!

お、俺テンションが上がりすぎて本当に失礼なことをしてしまいました…

紫苑さん、ごめんなさい…」



鈴木が目だけ向けた方を見て、丹波は心底反省した顔になった。

そうして深く深く頭を下げる。



「謝罪を受け入れます。

今度同じようなことした時には色々触れ回りますのであしからず。」



「ひっ、可愛いのに恐ろし…あっ、いえキモニメイジマス…」



淡々と恐ろしいことを言う紫苑さん。可愛い顔してなんとやらだ。丹波は二の足を踏むところだったな。ギリギリだぞ?



「紫苑さん、ごめんね。丹波はちょっと考えが足りないことあるけどまぁ悪いやつではないから許してやって。

今度何か言われたらコンビニスイーツ高いの買ってこさせるといいよ。」



鈴木が先輩らしくかばってやっている。さりげなくパシらせるコツを伝授していやがるな。



「あの、鈴木さん…私の事はみ、みゆきって呼んでくれませんか?」



「え、いーの?友達にみゆき居るから、みゆちゃんって呼ぶね。私も千佳でいいよ。」



「千佳先輩、よろしくです!」



ぱあぁっと輝かんばかりの笑顔で言う紫苑さん。



「わっ、可愛い!!めっちゃ照れる!那珂先輩可愛い女子からの先輩呼びってたまりませんね!」



鈴木が照れながら言う。それは分かるが、肝心の顔面的に可愛い女子の後輩がうちのオフィスには居ないんだよな。羨ましいぜ、鈴木。



「それな。俺も顔が可愛い後輩に先輩呼びされたい。」



思わずポロリと漏らすと鈴木が嫌そうな顔になった。

あ、さすがに不味かったか?



「あんまオススメしませんけど…その…富久山に呼ばせたらいいんじゃないんですか…?」



「鈴木、あいつは男だ。」



「美人ですよ?」



「俺は女子の可愛い後輩だって言ってんだよ。」



「さんすくみがよんすくみになっても仕事はしてくださいね?」



「おいこら聞けよ。」



水卜さん直伝のアイアンクローをお見舞いしようとしたが避けられたので、代わりに丹波にお見舞いしておいたのだった。




ちなみに、鈴木が見たのは樋口部長の席だ。

あの人もたまにはいいことするんだな。




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