樋口部長への評価。
「大神課長と穂積さん付けてもらっといてよくここまで問題を大きくできるなというのが営業部の共通見解です。」
ミトサンが淡々と言う。
「大神課長は貴方もよくご存知のように大変な人格者だ。
社長からの信頼も厚いうえ他社との繋がりも広く、部下の育成もうまい。緩和材的に人と人とを結ぶのにも長けている。人事と総務の部長が犬猿の仲なのはご存知ですよね?あの二人を言い方は悪いが手懐けてるお人ですよ。
本来ならご病気や介護の件もあるので負担の大きいそちらに置いておくには向かない。それをおして貴方につけられているのは交渉力や企画力などの実力あれど人を育成するのに不向きだからだ。」
おー、そんな事が…あっ、でも樋口部長の俺様何様樋口様っぷりは上も把握してるってことですね。
「それでもって穂積さんは社を立ち上げた翌年に入社してきた古参とも言える人だ。物凄く突出した所はないが何をやらせても卒無くこなして相手を思いやった行動もとれるし、よく気がつきフォローもうまい。
人事と総務、あと経理からも来てくれってちょいちょい話が出てるの知らないでしょう。上が営業も欲しい位だってよくこぼしてますけど色々背負いこんで周りに気を使いすぎて倒れかねないから無理だねぇ、なんて話されてますよ。
本人が大神課長が居るうちや後輩が一人前になるまではってやんわり断り続けて樋口部長の下に居るんです。
決して樋口部長を支えたいとか貴方の為とかではないの分かってますよね。」
さ、さや先輩!そんなこと思ってたんですか…!!!
うわーん、嬉しいけど自分も大切にしてっ!他のとこでもナチュラルに無理するってばれてますよ。
しかし人事にも総務にも営業にもさや先輩は渡さん!!!
「水卜さん、あの、過大評価過ぎるかと…
人事や総務、経理の方から冗談で早くうちにいらっしゃいって言われますけどあくまでも冗談でしょう?」
「笑って流されたーってよく愚痴を聞くけど?」
「えっ…?」
「改めて聞くけど、色々尻拭いしてるのは樋口部長を支えたいからとかではないよね?」
「そのままにすると、他のメンバーというか大神課長に迷惑かかるからですけど。」
「そうだったのか…?穂積…」
さや先輩が天然さで引き抜きをかわしていたとは…
てかミトサン、えげつない質問するな…って樋口部長なんでそんな驚いた顔するのですかね?
え、もしかして好かれてるとか…お、思ってたんですか…?
ひええぇ、こわっ!!
どうやったらあんなキツイ事言ったり尻拭いさせておいて好かれてるなんて勘違いを…
「はい。
ああでも仕事ですからある程度理不尽な事を言われても我慢もしますし処理はしますよ、仕事ですから。
樋口部長を好いているとか憧れているとかはミリ単位もありませんので安心してください。」
さや先輩、大事なことだから仕事ですからを二回言ったのですね、流石です!
えっと、あと、さや先輩…樋口部長は自分が好かれてると思ってたから驚いてるだけであって、好かれて迷惑って思ってるわけじゃないんですよ?
絶対分かってない。キリッとした真面目な顔で返してる天然さや先輩…
可愛い…
「そうか…」
「鈴木も穂積さんと同じだから安心するといいですよ?」
ミトサンは全部分かっていてあえて言ってる。
流石である。私からは何も言えないが、代わりにお腹が盛大に鳴って同意を示してくれる。
なかなか良いタイミングをつかむようになってきたな!
恥ずかしいけど!!!