美味しいものを食べましょう。
「もー!みんなして何なんですか!
しかも何故ゆえ直接渡さずに水卜さんの持つ段ボールに詰め込むんですか!」
「さやちゃんが素直に受け取らないからだと思う。」
「ミトサンに激しく同意です。」
解放されたさや先輩は珍しくむくれていた。そしてちょっと怒ってる。
いやぁ、でもねさや先輩…絶対遠慮するって分かってるのに直接渡すのって勇気いりますよ?
ミトサンが即行で言葉を返したので乗っておく。
「そんなことは…」
「あるよねぇ?さやちゃん。」
「……」
笑顔で言いきられてさや先輩が黙る。
ミトサンすごいなぁ。私達にはできない芸当です。
「あと、帰り送ってくよ。そんな荷物じゃ電車も大変だろう?」
「いや、でもそれは…」
「鈴丼も乗ってくか?」
「あざーす!便乗させてもらいまーす!」
さや先輩無理して持って帰りそうだからな。私が乗るって言えば押切りやすいとみてついでに誘ったのはわかるけど便乗させてもらいますぜ!ミトサン!!
「ついでにドラッグストア寄ってくれます?
洗剤とトイレットペーパーと箱ティッシュ買いたいです。」
「いいよ。俺もそろそろ買わないといけない日用品あるし。
あ、さやちゃんドラッグストア寄ってもいいか?」
「えっと、あ、はい…かまわないです。
私もシャンプーとコンディショナー買わないといけないので…その、助かります。ありがとうございます。」
ミトサンの笑顔でごり押しされつつも、お礼を言うさや先輩。
罠に嵌められた感ありますが、さや先輩は人に頼ることをもっとしていいと思います。
「さてと、俺はこれからビル向かいの裏手の中華食べに行くけど、鈴丼達は何食べるんだ?
中華でいいなら一緒に行くか?無性にあそこのエビチリと麻婆豆腐食べたいんだけど二皿はきついからシェアしないか。」
「あ!まえーに連れていってくれた所ですか?美味しいけど量がえげつないとこ!
思い出したら食べたくなってきた!さや先輩!行きましょ!!美味しいんですよ~」
ちょっと女の子だけで入るのには量が不安な店だから行きたいと思いつつ数年経ってしまっているお店!
あそこのエビチリほんとすんごく美味しいんだよなぁ~
あ、思い出したらよだれが…いかんいかん。
「ぶふっ!千佳ちゃんそこまでなるほど美味しいのね…
行ってみたいわ。」
よだれが垂れたのをバッチリ見られたけど、さや先輩も行ってくれる気になったので怪我の功名ってことで納得しよう。うん。
貴重品だけ持って、いざ参らん!とオフィスの扉を開けたタイミングで樋口部長とかちあった。
物凄く難しい顔をして立ちはだかったまま退かない樋口部長。
おい、邪魔なので避けるかしてくれませんかね?
「穂積、話がある。」
「…なんでしょうか。」
「ちょっと来てくれ。」
ちょっと来てくれじゃないよ!さや先輩昼御飯食べられなくなるじゃん!!!
「…樋口部長、穂積さんにお話あるのは結構ですけど、昼食とれる時間作ってあげられるんですか?今が昼休みだって分かってますか?」
さや先輩が返事をする前に、サッとミトサンが樋口部長とさや先輩の間に入った上で尋ねる。
「水卜、何故ここに…いや、もうそんな時間か…」
こいつ何も分かっちゃいねぇ…ミトサンが居なかったらさや先輩昼御飯食べ損なうとこじゃないですか!
「じゃあ、昼を食べがてら話をする。とりあえず社外に出る。来てくれ。」
「へぇー、二人だけで話すんですか?
何言うのか見当がつくけど、得策じゃないですね。見ようによっては権力振りかざしてなにか隠滅したと思われますよ?
そもそもとして、樋口部長の口調は威圧的過ぎると思いますよ。」
「水卜、俺は穂積に話している。」
「分かってないみたいだから言いますけど樋口部長、あなたの態度や口調は十分パワハラともとれる。
営業部の高頭に同じ態度取り続けたらぐうの音も出ないほどの証拠積み重ねて人事に話が持ってかれて飛ばされるはめになりますよ?高頭の実力はご存知ですよね?」
バチバチと火花が散っているかのようだ。
高頭さん、女傑だからなぁ。確かに樋口部長を負かす事できそうだ。やってくんないかなぁ?
「……」
「黙りですか?
沈黙は肯定ととりますよ?樋口部長は反撃してこないような相手を狙って高圧的に接する人間ということでよろしいのですね。」
うっわぁ、最低じゃん?
そんなつもりなら最低じゃんか。そしてお腹すいたな。
「そんなことはない!」
「なるほど無意識ですか。」
「そんなつもりは毛頭無い!そうだな?二人とも!!」
そう問いかけられたので、私とさや先輩は顔を見合わせ…そのままうつむき無言を貫いたのだった。
沈黙してるんで、つまりは肯定してるんですよ。
樋口部長。