週末はショッピンクを。
「来週の土曜日はバーベキューになりました。
ちくしょう。」
「あらあら、言葉遣いが悪くてよ?」
「バーベキューってそもそもなに着てくればいいの?」
金曜日…さや先輩と私は綾城さんの店にやってきていた。
バーベキュー参加偽装事件により、私達が仕方なく参加することになった為か、富久山関係のとばっちりは今のところはきていない。
そんなわけで終業と同時に店にやって来れた。
このお店は二次会や飲み歩きの最後の方に利用する人が多いので、今の時間は貸し切り状態だ。
入ってすぐにバーベキューに参加することになったと言ったら笑われてしまった。
さや先輩はずっと服装検索をしている。
混乱しているようだ。
「夏コミ冬コミの服装ならすぐに思い付くのに…うぐぐ…」
いまだに何着ようか迷う私からするとすごいです、さや先輩。
「まぁ、でも場所によって変わるじゃない。服装。
どこでやるとかは聞いてないの?」
「それがまだ…」
と、言いかけた私とさや先輩のスマホが同時に震える。
「「あ」」
俺様からのグループへの招待が来たのだ。
渋々、招待を受けるとプランと予算がババーンと出た。
都内ではないが隣の県の海沿いの海浜公園でやるそうな。
というかそもそも手ぶらでBBQプランとかあるのにビックリ。
設置も片付けもやってくれるとかすごすぎる。
レンタカーで俺様こと樋口部長がお迎えに回ってくれるらしい。
新人とさや先輩と私は3500円、他のメンバーは4000円徴収だそうだ。ドリンク飲み放題とかすごいわ。
新人はおいといて私達の減額の理由は食べる量が~って書いてあるけど多分、無理矢理メンバーにした償いだろう。
酒類は各自持ち寄りなので、ちょっといいお酒を持って行こうかな…?
「へぇ、けっこう簡単に体験できるのねぇ。」
さや先輩のスマホを覗いて綾城さんが言う。
「辛い思いして鉄板を運んだり洗わなくていいなんて!
あー、それより海近かぁ…益々服装迷子だわ。」
「海風があるとね…けっこう後々くるのよね…」
「三十過ぎると色々出てきますよね…」
さや先輩と綾城さんは遠い目をして語り合っている。
いつか海風にあたるとくるようになるのかしら…?
不意にさや先輩のスマホが震える。
「あっ!電話出てもいいですか?」
「今だけね。どうぞ~」
「ありがとうございます…もしもし、どうしたの?
また喧嘩した?…え、違うの?ん?うん、うん、へぇ…えっ?
え、じゃあ見立ててくれる?
うん、あ、それは持ってない人でも一緒に行けば大丈夫?うん、ちょっと待ってね…」
話を一旦切ってさや先輩は私に尋ねた。
「千佳ちゃん、明日友達が勤めるショップで会員限定のセールあって私はバーベキュー用の服買いに行こうかと思ってるんだけど一緒に行く?」
「えっ!なにそれ、行きますよ!何がなんでも行きますよ!」
さや先輩とイベントやコラボカフェ関係以外で出掛けるの初めてかもしれない。
行くしかないとすぐさま返答する。
「うん、二人で行くね。ありがとう、じゃあ明日!」
通話を終えて、さや先輩はカウンターに座り直した。
「ありがとね、千佳ちゃん。
これで一人だけテイストが違う危険が無くなるわ。急に誘って大丈夫だった?」
「いえ、特にすることはないので大歓迎ですよ!
ショップ店員のお友達がいるんですね~」
「うん、性別は男性なんだけど女の子にしか正直見えない…いわゆるジェンダーレスって言うのかしら?
綾城さんとはまた違った美少女系かな。ちなみに男性のパートナーがいる。」
「なにそれめっちゃ美味しい設定じゃないてすか。」
「ふふふ、設定ではないわ。現実よ。」
「だからさやちゃんは抵抗なく受け止めているのねぇ。」
さや先輩の意外な交遊関係にビックリしたけど、明日がより楽しみになったのだった。