第46話:死への誘い v0.0
_皇城、第二階層
バサッ!
結婚するらしい隊員ともう一人の隊員は勢いよくカーテンのようなものを開くと、一斉に部屋の中へと入って行った。
「・・・何も・・・いない・・・?」
結婚するらしい隊員はフラッシュライト片手にハンドガンを構えて呟く。この部屋の奥行きはとても深く、そして暗い。ただただ一本道のジメジメした空間だけが広がっている。
「・・・何もいないじゃないか」
隊員は呆れた声で言うと、銃を構えるのをやめる。
「あれ・・・おかしいなぁ・・・」
結婚するらしい隊員は数回頭を掻くと、フラッシュライトであたりを照らす。
「・・・ん?」
何度か周りを照らした後、ふと何か違和感を感じた。
「どうした?」
「いや、これ・・・」
結婚するらしい隊員は姿勢を低くすると、どこからか滴り落ちる液体によって床にできた水溜りのようなものを指差す。
「それ・・・なんだ?」
警戒した口調で隊員が結婚するらしい隊員に尋ねる。
「えーと・・・ちょっと待ってください」
結婚するらしい隊員はそう言うと、ゆっくりと人差し指を近づけて謎の液体に触れた。
「う、うぇ・・・ドロドロする・・・」
糸を引くそれは何度もなんども手にくっついて、なかなか離れない。
「いったいどこから落ちてるんだ・・・?」
フラッシュライトを手で動かし、ゆっくりと上へと上げていく。
「う、うーん・・・?」
結婚するらしい隊員がそう呟いた時だった。
「ッ!」
その瞬間、上方から突如として現れたマチェーテにより、結婚するらしい隊員は大動脈から血を高々と巻き上げ叫ぶ間も無く絶命した。
「お、おいッ!?どうした!」
一部始終をはっきり見ることのできなかった隊員は、すでに生き絶えた結婚するらしい隊員のそばへと向かう。
「おい!おい!お前は結婚するんだろ・・・!?な!?」
何度も、何度も隊員に問いかけるが、一切反応がない。気づけば足元には赤い水溜りが構成されており、彼が死んだと言うことを表すには十分な証拠となる。
「く、くそっ!」
結婚するらしい隊員をそっと地面へ置くと、PDWを構える。
「いったいどんなやつなのかはわからんが・・・死ね!」
バババババババババババッ!
その瞬間、PDWの銃口から大量の弾丸がフラッシュとともに発射される。
「くっ・・・」
隊員はグリップを力強く掴み、なんとかしてフルオート発射の反動を抑えようとする。
「あ、あいつを殺した罪は・・・でかいんだぞ!」
マガジン内の弾丸を発射し終えると、トドメと言わんばかりに暗闇の向こうへグレネードを放り込み、数秒後に無事信管が作動、何かを巻き添いにしてこの通路を塞げるはず___だった。
「な、なんだって!?不発!?」
よりにもよって、このタイミングでグレネードが不発になる。
ガッ...ガガッ......
「き、来たなッ!」
突如として暗闇の中に現れた二つの赤い光。それを見た隊員は、瞬時に敵だと理解する。ハンドガンを構えると、すぐにやってくるであろう敵を迎撃する体制に移る。その時だった。
ヒュンッ!
隊員は、突如として暗闇の中より飛来し体の横をかすめた投げナイフに心底恐怖する。
「こ、後退しなきゃ・・・」
隊員は怯えた声でボソボソと同じことを繰り返し言う。今まであれだけの銃弾を乱射されて無事な生物は見たことがない。それはこの世界に来てもそうだ。だがどうだ?目の前にいるのはそれだけの乱射を食らってもなお平気で投げナイフを投げてくる赤い目をした何かだ。
「ハァ・・・ハァ・・・」
荒い息を立てながらゆっくりと後ろへと移動する。
「な、なんとしても死体だけは持って帰るからな!」
すでに生き絶え、向こうで手を組んで安らかに眠っていそうな顔をした結婚するらしい兵士にそう告げると、隊員は大急ぎで第一陸戦隊が待機するカーテンの向こうへと飛び出して言った。