8.青い瞳とナナシ村
村長の家で、ミーナの話をします。新たな事実に、驚く村長たちです。
「さてさて。」
ミーナは3人がけの黄色いソファに座っていた。周りを見渡すと、木彫りのお面や、人形などが飾られている。村長の趣味らしい。窓から温かい風が入り込んで、心地よい。
ミーナの向かいの肘掛椅子に村長がにこにこしながら座っている。そしてお茶をテーブルに並べたホローがミーナの隣りに腰掛けた。
「ミーナさん、まずはお上がり。俺の庭の茶葉じゃからな。フォッフォ。」
「入れたのはわしじゃよ、村長。」
自慢げな村長に、すかさずホローが釘を刺した。
「いただきます。」
ミーナはお茶を飲んだ。ハーブのような香りのたつ、優しい味だった。
「わ、とても美味しい。」
ミーナの言葉で、二人の老人が満足そうに微笑んだ。
「さてさて、申し遅れたな。俺はこのナナシ村の村長のガバラじゃ。この家には孫と二人で暮らしとるよ。」
村長は、お茶を飲み干したカップをテーブルに戻した。
「私はミーナと申します。気がついたら森の奥の祠にいました。自分のことさえ、名前以外は思い出せません。この村の人たちも、私のことを知らないようですね。」
ミーナはカップをぎゅっと握り直した。
「うーむ…。記憶喪失となってしまっているんじゃな。可哀想に。残念じゃが、君のことは見たことがない。まず、俺でさえもミーナさんのように瞳の青い人間に会うことも初めてでね。」
村長はミーナの目を真っ直ぐに見つめた。
「えっ…」
「この村の者はだいたいわしらのような茶色の瞳じゃな。」
ホローも頷きながら話す。
「そうですか…」
誰か人に会えれば、絶対に自分のことを知っている人がいるはず、そう思っていたミーナは俯いてしまった。
「それにしても、よく、あの祠から無事に来られたの。あの辺りももうだいぶウェザー化が進んでいると持ったが。茶獅子がミーナさんに懐いたことにも驚いた。」
「ウェザー化?」
不思議そうに首を傾げるミーナを見て、村長とホローも驚いた顔を隠せなかった。
「ミーナさん、ウェザー化も忘れてしもうたのか!?」
二人の反応の大きさに、ミーナも驚きながら答えた。
「はい…わかりません。」
「祠から来る間に、紫色のモヤがかかっている場所がなかったかい?」
ホローがすぐに尋ねる。
「え…と。特に見ませんでした。」
「そんなはずは…いや。これは。ホロー、すぐに調べよう。村の者にも知らせねば。」
「そうじゃな。今の時間なら教会がいいじゃろ。人と馬を集めよう。」
ミーナは二人の空気がガラリと変わったのを感じた。そしてホローはすぐに玄関から出ていった。
『ギー…』
再び、玄関の扉が開き、見た事のある青年が入ってきた。
「じっちゃん、ただいま!今ホロじいが血相変えて出ていったけど…あれ?ミーナ?」
ソラが驚いていると、
「ソラ、ちょうど良かった。俺は今からホローたちと森へ出る。ミーナさんを頼むぞ。」
村長も、そう言うとすぐにホローを追いかけた。
「あ、うん…え?」
ソラは呆気に取られながらミーナの顔を見た。