4.記憶のカケラ
ミーナが少しだけ過去を思い出します。
(あれ…?ここは…。)
そこは、立派なお城の中の一室。天蓋付きのベッドや、大きなドレッサーがある。部屋の中央にあるテーブルには、黄色の花が3輪、花瓶に生けられている。
ミーナは窓から外を眺めていた。窓からの景色は白くボヤがかかったかのようで、見えない。ミーナの容姿は少し幼く、髪も肩につくくらいに短い。
(見覚えのある場所…私がいる…これは夢…?)
そこに、ドアをノックして一人の女性が入ってきた。20代後半に見えるその女性は、髪をスッキリとまとめ、ワンピースに白いエプロンを付けどことなく品の良さがある。手にはトレイにのせたカップを持っている。
『失礼します。ミーナ様、庭園で採れたカモミールティーをお持ちしました。』
『ありがとうリサ!私、カモミールティー大好きよ!』
優しく微笑むリサの方へミーナは振り返り、親しそうに話した。胸には紋章の刻まれたペンダントが光る。
『あっ。ミーナ様、今日は窓から抜け出さないでくださいね。私がまた王様に叱られてしまいます。』
『あははっ。ごめんねリサ。お天気がいいとどうしてもお散歩したくなっちゃうの。この間は、果樹園でリンゴの収穫をお手伝いしたのよ!でも、全部私の責任であって、リサのせいじゃないわ。』
『いいえ、私はミーナ様のことを任されていますし、ミーナ様にもしものことがあったら大変です。せめてお供をつけて頂かないと…』
『ずっとお城の中になんていられないわ!ねえリサ。港町に遊びにいきたいな。もうすぐこの国の外からの船が来るでしょう?』
『いけません!!他国の者にこの国の秘密を知られるわけにはいきませんから。それにミーナ様は…』
『それはわかってる!私の…』
『まあ、気分転換は必要ですわね。王様にお話してみますね。』
『わぁ!ありがとう!リサ!』
ミーナは嬉しそうに、リサに飛びつき抱きしめた。
(リサ…!リサって…!知ってる…!これは夢じゃない…私の記憶…?)