2.祠
「頭…いたい。」
ミーナは目を覚ますと体を起こし、周りを見渡した。そこは古い祠のような場所だった。その部屋はがらんとしているが、何かを祀るための台のようなものはある。格子状の扉の方からは光が差し込む。
「え…ここ、どこ。私…あれ?…」
「なにもわからない…」
ミーナは今にも泣きだしそうに、よたよたと扉の方へ向かった。扉を開けると、そこは森の中だった。風で木々の揺れる音がする。
「だれかっ!だれかいませんか!だれか」
我慢出来ずにミーナの目から涙が溢れた。
外へ出ても返事はなく、人の気配もない。
「…」
日がだいぶ高くなった頃。
泣き疲れたミーナは、祠の前にある石段に座っていた。
「川の音がする。」
ミーナは音のする方へ歩き始めた。のどが乾き、お腹も減ってきた。
しばらく歩くと、そこには小川が流れていた。
澄んだ水が、森の木々の隙間から差し込む光でキラキラと輝く。
ミーナは手で水をすくい、顔を洗うと、そのままごくごくと水を飲んだ。
「はぁ…」
ミーナは空を見上げた。木の葉の隙間から青空が見える。
「とにかく、だれか人を探さないと。」
そして、ふと胸元に手をやった。丸く小さなペンダントがある。
「これ…。小さい頃からずっと付けてた…。でも…」
理由も、誰からもらったのかも思い出せずに、ミーナはまたため息をついた。何かの紋章が刻まれているが、その意味ももちろん思い出せない。
すると突然、
『ガサガサ、ガサガサ。』
ミーナの背後から物音がしてきた。
音はどんどん近づいてくる。
「だ…だれ!?」
ミーナが恐る恐る振り返ると、現れたのは大きな動物だった。枝のような大きな角。茶色く短い毛。しかし黒くつぶらな目はどこか愛らしさを感じる。
「見たことない動物!かわいい!おいで…!」
ミーナが優しく撫でると、動物はミーナの匂いを何度も嗅いだ。