第3話 身体を鍛えろと言われましても!
ヒルダお姉さまに身体を見られた、………フラグかな?
読みやすくするために所々修正しました!
4月22日4時頃
異世界召喚された初日、俺はヒルダお姉さまに用意された服に着替えるとお姉さまの案内でとある場所に連れてこられた。
「えっと、あのヒルダさん?」
「はっ?」
ヒルダお姉さまはすごい顔でこちらを睨む、名前はまずかったか?
「あっ、えっと、なんと呼べばいいのかわからなくて」
「あぁ、人間風情に呼ばせる名など持ち合わせていないが仕方ないな、気楽に様をつけて呼ぶ事を許可する。」
辛辣にそういうヒルダお姉さま、いや、ヒルダ様、気楽とはいったいなんなのだろうか、なにかに目覚めてしまうかもしれない。
「えっと、ではヒルダ様に質問が」
「手短にな」
どうやら質問は聞いてくれるようだ、お優しい方だ。
「ここはどこでしょうか?」
「………見て分からないのか?」
どうやらイラつきやすい質らしい。
冷たい視線が刺さる、だが俺はこの場所がなんなのか全くわからない。
「………地獄?」
「……ふざけているのか?」
ヒルダ様の視線がより冷たく鋭くなる。
だってわからないんだもん!周りをみると数キロ位の広さがあるだろう広場だ、城が周りにあるからおそらく中庭なのだが問題はその景色………
「「「ギャォォオオ」」」
「………」
数十種の魔物達が血反吐を吐きながらとある者は殴り合い、とある者は走り回り、とある者は身体の数倍はある大岩を持ってスクワットのような事をしている。
………スクワット?
「えっ?これ、まさか運動場?」
「それ以外に何がある?お前はバカか?」
ヒルダ様が冷たい目で見てくるがこれを運動場と思う人間はおそらくサイコ野郎かなにかだろう、決して勇者ではないと確信を持てる。
あそこの魔物とかさっきから岩の下敷きになって微動だにしてない、そこの魔物に至っては鉄の剣を身体に突き立てられて血まみれになっている、やはりここは運動場ではなく地獄だろう。
「「「ギャォォオオ」」」
「ひぃっ」
「ふむ、少し騒がしいな」
ヒルダ様が前に出て息を思いきり吸う。
『ちゅぅうもぉぉおく!!!』
「「「!!!」」」
「ひっ!?」
ヒルダ様の叫びを聞いた魔物達が動きを止めて一斉にこちらを向く!
驚いたのは岩の下敷きになっていた魔物は岩を軽々持ち上げて、剣を身体に突き立てられていた魔物も平然とした顔でこちらを見ている事だ、魔物とはやはり化け物らしい。
「「「お勤めご苦労様です!!」」」
「うむ」
………シャベッタ?
あまりの事態に俺の脳はショートした。
「少々場所を借りるぞ!あと少し騒がしすぎるからもう少し静かにやれ!」
「「「ういっす!すみませんでした!」」」
………イミワカラナイ
周りにいるこの世の者とは思えない化け物達が全員姿勢を正しながら日本語を話す。
人は衝撃が積み重なると今の俺のようになるらしい。
「あとこいつが新入りの勇者だ!今は弱いがそのうち魔王様を滅ぼす脅威にするから殺すんじゃないぞ!」
「「「はい!」」」
………カエリタイ
この一瞬、俺の意識は完全に別世界にトリップしていた。
「…ら、……ろ」
なにか聞こえる?
「お……、……きろ」
女性の声?
「何を呆けている!さっさと起きろ!!」
《バチィン!》
「ベボラァ!?」
左頬に衝撃が走る!あれ?俺今飛んでる?
《ブヨン!》
「!!??」
瞬間俺の身体がものすごく柔らかい何かに沈んだ!なんだこれ!?
あと頬の感覚がない。
「立ったまま寝るとはずいぶん舐めた真似をしているな?」
「ガボッ!?」
口の中に何か入る!なんだこれ!気持ち悪い!
「そろそろ出ないと溶かされるぞ?」
「ボッ!?」
溶かされる!?今溶かされるって言ったか!?
俺は死に物狂いで手足を動かしなんとかそこから這い出した!
「ぶはぁっ!!」
「ふむ、やはり肉体レベルは低いな」
ぬるぬるの何かから這い出す俺を待っていたのは仁王立ちしたヒルダ様だった。心なしか顔つきが厳しい。
「いっ、いったいなにが!?」
「お前が呆けているからだ、心配せずとも加減はした」
人間を吹き飛ばす攻撃に加減したと言われても!俺はそう思いながら殴られた左頬に触れるとある事に気がついた。
「あっ?あれ?」
「ん?どうしたぁ?」
ヒルダ様がニヤニヤしながらそういう、そういう笑顔も素敵だ。
……いや!今はそれどころじゃなく!
「痛くない?というか腫れてもいない?」
「おう」
そう、確かに殴られたはずの左頬にはまったくと言っていいほどに痛みがないのだ、感覚がないとかじゃなく本当に殴られたのが嘘だったように違和感がない。
「これはいったい?回復魔法とか?」
「近いがそうじゃあない」
そう言うとヒルダ様は指で俺の後ろの方を指す
俺は釣られて後ろを見ると……
「ひっ!?」
「こいつが今回の試練の相手!アブソーブスライムのブーちゃんだ!」
そう、俺の後ろにいたのは俺の身体を容易に覆え尽くせそうなほどにでかいスライムだった。
「スっ!スライム!?」
「ただのスライムじゃない!アブソーブスライムのブーちゃんだ!」
ヒルダさんがやたらスライムの事を強調するが、……ツッコミどころが満載だ!アブソーブって確か吸収の意味だよな?ものすごく安易なネーミングな上にブーちゃんって!名付け親の顔がみてみたいほどセンスね~!!
「ちなみに私が名付けた!可愛いだろう?」
「ブッハッ!」
「あ?」
ヤバい!思わず吹き出してしまった!殺される!でもブーちゃんはないわぁー!!
そう思いながら俺は、否定の意思表示の為に両手を前に出し全力で首を横に振る!
これしなかったらおそらく殺されてしまう!
「お前、今笑ったか?」
「いえ!そんなまさか!」
俺は全力で否定の意思表示の続ける!
「…………まぁいいだろう」
「ははは」
なんとか助かった、マジで危なかった気がする。
というかヒルダ様のネーミングセンスって………いや、考えるのはよそう、命が惜しい。
「では説明を続けるが、結論から言って、お前には体力がない」
「えっ?あっ、はい」
突然言い切られて少し悲しいが確かに俺はインドア派な人間なので否定は出来なかった。
「なので今回はこのブーちゃんと、とある事をしてもらう。」
「と、とあること?」
名前を意識しちゃダメだ!名前を意識ダメだ!
名前を意識しちゃダメだ!
俺は全力で雑念を払う!
「お前にはこのブーちゃんの攻撃から24時間逃げ切ってもらう」
「はぁ、」
名前を意識しちゃダメだ!名前を意識しちゃっ!………ん?今サラッと、とんでもない事を言われたような。
「先ほどお前が体験した通り、ブーちゃんは他のスライムとは違い少し特殊でな、ブーちゃんの体液には生物の傷を癒す作用があるのだ、そしてアブソーブスライムの吸収性質によって疲労も吸収してくれる、なので相当な事が無い限り死ぬことはないだろう」
「へ、へぇ」
さっきのあれはそういう事だったのか、と俺は頬を擦りながらそんな事を思考する。
「休息時間は与えるから安心しろ!人族でいう朝、昼、夜の食事の時間!そして3時間ほどの睡眠時間は与えてやる!それ以外の時間は全力で逃げ続けろ!」
「へっ?えっ?あのっ」
そんな俺を置いてヒルダさんが説明を続ける、えっ?逃げ続けろ?えっ?えっ?
「範囲はこの場所全体、他の者にも伝えてある!一応言うが反撃はなし!お前は攻撃から逃げるだけ!捕まったら時間はリセット!ブーちゃんの能力によって疲労を回復し、また24時間逃げ続けてもらう!」
「へっ?逃げっ?24時間?」
また言った、どうやら聞き間違えじゃないらしい。
「ただし、捕まったら一定時間以内に抜け出さないとブーちゃんによって溶かされるから注意しろ!では始め!」
「ちょっ!?ひっ!?」
[ウニョウニョニョ]
突然の開始合図直後、後ろのブーちゃんから変な音がするのでギリギリと音がしそうなほどぎこちなく動く首を動かしブーちゃんの方を振り向く俺。
「あっ、えっ?」
[ニョニョニョニョ]
そこには無数の触手のようなものを俺に向かってゆっくり伸ばすブーちゃんの姿があった。
逃げないとなんかヤバい!
「うっ、うぉぉおお!!!」
[ニョニョニョビッ!]
俺は全力で走り出した!後ろから何かが来る気配に恐怖を感じながら!
だが走り出した俺の視線の先に1体のオーガのような魔物がいる!
「くっ!」
「グァ?」
ぶつかるっ!!俺は全力でブレーキをかけて横に跳んだ!負担がかかった足が悲鳴をあげる!
「グァァァアア!!」
[ニョニョニョニョ!!!]
無数の触手がオーガの身体にものすごい勢いでぶち当たる!あっ、死んだ?
「グァァァアア///ギモヂイイイ////」
[ニョニョニョニョ♪]
そんな事を思っているとオーガからなんかものすごく不快になる声が上がる。
事態を理解出来ない俺でもその光景に思わずドン引きした。
「ふははは!これがブーちゃんの力!相手を気持ちよくしながら疲労と傷を癒してくれるのだ!」
「…………」
いや、その力はすごいのは分かったのですが。
………正直触手に襲われるオーガなんて見たくなかったです。
思わず状況を忘れて動けなかったわ。
数十秒ほどして触手から解放されたオーガ。
………気のせいか肌がつやつやしている。
「ブーちゃんありがとよ!また頼む!」
[ニョニョニョニョ♪]
ものすごく笑顔のオーガ、ブーちゃんもどことなく嬉しそうだ。
「ちなみに今回のブーちゃんはお前を捕まえて疲労ある程度回復させたら
溶かすように指示をしてある!拘束力もある程度弱めるように指示しているが気をつける事だ!」
「………ヒック」
なるほど理解した、これはそういう事なのだろう。
ブーちゃんから逃げ続け、疲労が溜まったら捕まり、回復したら溶かされる前に逃げる。
なるほど、これを続ければ自ずと体力がついて足も早くなり、回避力も上がり、脱出する為の瞬発力も上がるだろう、じつに合理的だ、ただ一つ問題があるのは……
[ニョニョニョニョ!]
「どっ、どうかお助けァァアア////」
この試練で俺は人間としての尊厳を確実に失うという事を悟りながら、先程のブレーキで酷使した足のせいで動けない俺は、ブーちゃんのテクニシャンな攻撃に成す統べもなく身を弄ばれるのであった。
不遇な主人公に合掌。
とりあえず修行編です!
次話21日21時投稿予定です!




