からっぽピエロがまた泣いた
———また泣いているの?
ピエロがそう言って笑った。
「泣いてないよ」
僕は答えた。途端に、涙が溢れ出した。
———ほら、やっぱり泣いてる
ピエロがまた嗤った。
「ばか。君のせいだよ」
僕は答えた。拭ってしまえば負けな気がして、頬を伝うしょっぱい水はそのままに。
———なんで泣いたわけ?
笑顔のピエロがそう聞いた。
「理由なんかないよ。悲しくも辛くも寂しくもないんだ」
僕は答えた。本当の事だと思った。
———こんなに泣いてるのに?
ピエロが笑みを深くした。
「知らないよ。僕が教えてほしいくらいだ」
僕は答えた。これ以上溢れそうなものは、ふたを閉めてひっこめた。
———本当は泣きたかったんじゃないのかい?
ピエロが嘲笑った。
「そんなわけないよ。泣くより笑っていたいに決まっている」
僕は答えた。そういえば、久しく笑っていない気がした。
———君は泣いていいんだよ、僕が代わりに笑うから
ピエロが微笑んだ。
僕は、答えられなった。
はらはらと、押しとどめたはずの涙が、零れ落ちた。
ピエロは、僕だった。
———さあ、また、ショーを始めようか
空っぽの笑みを張り付けて、ピエロが両手を広げた。
僕らはまた、滑稽な踊りを踊り始めた。
どうか僕らを見て、笑っておくれ、と。