9 和解
話を聞いていて、みなさまはどうしてこのようなひどい仕打ちをするのだろうとお思いになられたかもしれません。どうにもコンラートは何か悪いことをしでかしたわけでもないのに、不相応に辛い状況に追い込まれていたわけですから。
実際、あの時の私たちは大変な過ちを犯していました。
今となっては恥入るばかりですが、その時は私たちも恐ろしい化け物から身を守るために必死だったのだと、理解していただきたいと思います。
さて、私たちは長いことコンラートとエヴェリーナを締め出していたわけですが、そこに変化の兆しが訪れました。
秋口のその日、私が見張り台の当番をしていた時に、コンラートが一人で現れたのです。
久しぶりに見たコンラートはひどく痩せ細って、身につけている服もボロボロになっていました。
頭の毛もやたらと伸びて、ボサボサとしていました。
あまりに貧相で、これから寒くなっていくというのにどうやって冬を越すつもりなのだろうと思ったほどです。
私は不意に自分がコンラートを憐んでいることに気づきました。
すると涙がとめどなく溢れてきて、目が霞んでいました。ふと気がつけば見張り台を降りてコンラートを抱きしめていたのです。
私はコンラートを自分の家に連れて帰りました。
彼が囮かもしれないとか、そんなことはどうでもよかったのです。
娘のロココはやつれたコンラートを見て、泣きじゃくりました。
温かいスープとパンをコンラートに食べさせながら、エヴェリーナのことを聞きました。
彼女は——エヴェリーナはメスだそうです——決して誰かを襲ったりはしないとコンラートが言いました。
彼女は生き物の血肉を食べたりはしないのだとコンラートは言っていました。草食で、主に花の蜜を好むのだそうです。
彼らは私たちに追いやられて、スレタリアの谷の底にたどり着いたのです。そしてそこにはとても大きな、美しい赤いバラの花が咲いているそうです。後でわかったのですが、そのバラは枯れることなく、朝も昼も、夏も冬もずっと咲いているのです。
その花びらは私を丸ごと包み込むほどのもので、美しく上品な香りが、谷底全体に広がっています。
その光景を見たエヴェリーナは大喜びして、赤いバラの蜜を堪能したのだとか。
とにかく彼女はえらくその場所を気に入って、それ以来彼らはスレタリアの谷の底を住処にしたのだそうです。
コンラートもバラの蜜でそれまで飢えをしのいできたと言いました。
私も後でそれを味わう機会があったのですが、これまで口にしたどんなハチミツよりも甘く、素晴らしい香りがするのです。
ともかく、コンラートはエヴェリーナが危険な生き物ではないと主張しました。
そして、コンラートがエヴェリーナと過ごしてきた日々の話を聞いて、私たちも、彼女と友達になりたいという気持ちを取り戻したのです。
そんな私たちを見て、コンラートが言いました。
「まだ覚えてます?
僕がシュヴェリーン王子と交わした約束を。
僕はもう一度あなたたちと友達になりたいです。
そして、アヴィとも友達になってくれたら、どんなに素晴らしいだろうって思うんです」
ロココはやはりわんわんと泣きながら、コンラートに抱きついて言いました。
「うん。うん。
友達だよ、私たちは友達なんだよ。
ごめんね。
コニーは友達だと思ってくれてたのに。
私たち意地悪して、ほんとにごめんね……」
私も妻も、それを見てただコンラートに頷くしかありませんでした。
その日、コンラートはエヴェリーナを一人ぼっちにはしておけない、と言って町の外へ戻って行きました。
私はすぐさまお城のベルナール王に事の次第を報告に行きました。
私は王の命に背き、勝手にコンラートを町の中に入れたわけですから、お咎めを覚悟していました。
しかし、縮こまり沙汰を待つ私に王はこう言いました。
「そなたの話はよくわかった。
そして、よくぞ正直に話してくれた。
コンラートを憐れむ思いは、実のところ私たちにもある。
しかし、高ぶった感情によってすでに腕は振り下ろされてしまった。
一度振るった剣を鞘に納めることは、非常に難しいものなのだ。
あちらかこちらかが折れなければならん。
それでもコンラートが自ら、私たちに友達になりたいと言ってきたのならば話は別だ。向こうから和を求めてくるならば、武器を納め、睦の手を取り合うことができよう。
……コンラートを町に入れることを許す。
ゆえに、そなたがコンラートを町に引き入れたことも不問とする。
ただし、コンラートのみだ。エヴェリーナは相成らん。
あの体は私たちの町で暮らすにはそもそも大きすぎる。
私たちに本当に危害を加えないかどうかも、まだわからん。
だから、しばし待て。
コンラートにも、そう伝えよ」
未だに句読点のつけ方がよくわからない。
誰か変なところがあったら教えてください。
また、感想お待ちしております。