第六話 糸庭愛の惚気
第六話 糸庭愛の惚気
「いいか! 私はブラコンではないっ!!」
「愛~。それは猫が『吾輩は猫ではない』って言うのと同じだよ~?」
「イオンの言うとおりだ、愛。自分の過ちを認めよう、な?」
「なんなのよ、二人そろって!!」
「え? 何の話? 私が購買へ行っている間に何が起きたの?」
「愛はブラコンだよね~っていう話~」
「ブラコンって言うな!」
「イオン、なに当たり前のことを言ってるのよ。そんなのずーーーーっと前から明らかなことじゃない」
「緒世まで!?」
「ていうか~、愛って弟にお弁当作って貰ってるの~? 駄目姉じゃん」
「違うわよっ。私が弟に愛姉弁当を作ってあげる代わりに、愛弟弁当を作って貰うっていう約束をしてるのよ」
「弁当の前に『愛姉』とか『愛弟』とかつけてる時点で手遅れだよね~」
「こんな姉を持って、更に毎朝お弁当を作らされる弟君、なんて可哀想なのだろう」
「私たちは両思いだからいいの!!」
「しかも、勝手に両思いとか言われてるよ~」
「う~~~~~!」
「そんなに唸るなよ」
「ていうか、弟君はお弁当作って貰って給食はどうするの?」
「私の弟は給食のでない小学校に通ってるから……」
「そっか~」
「だったら、弟と自分の両方愛が作ればいいのに」
「私の弟は私のお弁当を作ってくれるようになってから家庭科の成績がクラスで一番になりました」
「へぇ~」
「でも、愛は家庭科の成績悪くない? 美味しいの? その愛姉弁当とやらは」
「愛があればどんな料理でも美味しくなるの! そもそも、家庭科は今お裁縫だから悪いのっ。調理のところだったら満点取れるよ!!」
「愛だから、『愛があれば』って、プッ、フフフ」
「理沙、笑いの沸点低いよね」
「そういえばこの前、緒世と相馬君とマケル君のやりとり見てて大爆笑してたもんね~」
「だって、面白かったんだもん」
「私は真面目にやってるんだから、笑わないでよ!」
「でも、緒世はマケル君達と騒いでるとき、楽しそうじゃん~~」
「そ、そんなことないわよっ!!」
「そんなこと言っちゃって」
「言っちゃって~」
「私の話を聞けーーーーーーーー!!!!」
フィクションではしばしば見かけますが、現実世界においては非常に仲むつまじい姉弟ってあまり見かけませんね。兄妹ならばそこそこの数は仲良かったりしますが。やはり弟は姉の奴隷である、という誰かが言った格言通り、姉と弟の間には他のきょうだい間とは異なる関係性がありそうです。