第四話 宇佐イオンの特技
第四話 宇佐イオンの特技
「あははっ、ほんとうに緒世はからかいがいがあるな～」
「出来ればやめてくれ……。とばっちりを受けるのは俺らなんだから」
「マケルに同じだ。宇佐、塚井の苛立ちを煽るのはよしてくれないか」
「ええ～？ 人をイライラさせるのがイオンの特技なのに～」
「そんな特技捨てちまえ」
「そんなこと言わないでよ～。緒世に『マケル君に虐められた～』って潤む瞳で言っちゃうぞ～？」
「やめてっ！ 緒世から虐めどころではない罰を受けてしまうっ」
「どぉしよっかなぁ～？」
「それにしても、人をイライラさせるのが特技って凄いのか凄くないのかよく分からんな」
「凄いよ～。そんなに言うならこれから二人をもの凄くウザい言動でイライラさせちゃうぞっ☆」
「（イラッ）――はっ！ 最初から右ストレートを出して来やがった」
「不覚にもイラッとしてしまった」
「こんなの～、序の口だってばよ～♪」
「ッく！ ウ、ウザい……ッ」
「そう言えば、イマイチ君は背が高いよね～。アレでしょ？ よく頭をぶつけるでしょ？ねぇ？ そうでしょ？ だよねぇ？ ね？ ね？ ね？ ね？ ねぇってば～？」
「うぉぉぉぉ。ウゼェェェ」
「その点でいうと、マケル君は平均ぐらいでちょうど良いよね～。大きいからってチヤホヤされるでもなく、小さいからってヨシヨシされるでもなく。ただただ、普通だもんね～」
「ぐぁあああああ。っていうかすでにただの毒舌じゃねっ!?」
「今頃気付いたの～？ 思考が遅いね～。さすが『やっぱり、マケル君』だね。常人の比じゃない負け具合だ～」
「ぬふぅー」
「っていうか～。さっきから二人とも『うおー』とか『ぬおー』とかうるさいしキモイんですけど～」
「言いたい放題だなっ」
「いい加減にしてくれっ」
「え～？ なんて～？」
「だから、いい加減にしてく」
「え、なんて？」
「あー、もう。いい加減に」
「え、なんて？（笑）」
「……もう、いいです」
「分かってくれて何よりだよ～」
「……なんか会話してただけなのにめちゃくちゃ疲れたぜ」
「え、何」
「「もう良いから!!」」
自覚のある人を苛つかせる人と、自覚が無くて人を苛つかせる人。
自覚がない分厄介とも思えるし、わざと人を苛つかせている分厄介とも思える。
どっちにしろ、うっとうしいことに変わりはありませんが。
